東京喰種 トーキョーグール【S】』が、いよいよヴェールを脱ぐ。本作から華麗に登場する山本舞香は、主人公・金木研の喰種仲間、霧嶋董香(トーカ)として暗躍する。「山本舞香なのか、トーカなのか、よくわからない」ほどのめり込んだという山本は、事実、主人公・金木研役の窪田正孝、狂気のヴィラン・月山習を演じた松田翔太に負けないほど、強い個性を放った。
不慮の事故により、半分人間、半分喰種となってしまったカネキ(窪田)。人を食べないと生きられない喰種という性に葛藤しながらも、同じ喰種種族が集う喫茶店「あんていく」で、穏やかな日々を過ごしていた。ある日、店に月山(松田)がやってきて、金木を言葉巧みに誘い出す。行きついた先は、「喰種レストラン」で、カネキは自分が狙われていると知ることになる。
人気シリーズへの参戦について、山本は演じたトーカ役に「誰にも渡したくない」といった強い思い入れを見せながらも、「何て言われるかわからない。全然叩かれる覚悟でいます」と包み隠すことなく、ありのままの気持ちを吐露した。『東京喰種 トーキョーグール【S】』という大きな山に挑んだ、実感を聞いた。
――山本さんが大活躍の本編、演じた霧嶋董香をどういう人物と捉えていましたか?
山本 お話をいただいてから、原作の漫画を読んだり、あとはアニメのほうをしっかり観させていただいたんです。もちろん、前作『東京喰種 トーキョーグール』も観ました。第一印象は、「……トーカって…難しいな……」というところでしたね。窪田さん、(松田)翔太さん、監督、プロデューサーさんの前で「全然プランがないです。どうしていいか、わからないです」と言いました。正直、最初、自信はなかったです。
――かなり悩んだ役柄だったんですね。
山本 はい。トーカは(親友の)依子の前とカネキの前で見せる顔も違うし、どんどんカネキには心を許していっているけど、恥ずかしくて出せないところもあったり、胸に抱えていることもある人物で。ただ、そこまで複雑に考えすぎると逆に伝わらない部分もあるかもしれない、と思ったんです。人間は人間で、喰種は喰種、人間界にいる喰種なんだけど、人間を食べていることと赫子(かぐね)があることだけが特殊なだけで、人間と見た目は変わらないので、そこまで「喰種である」ことを考えたお芝居をしませんでした。原作やアニメとかけ離れすぎず、私なりに格好よく、人間味あるトーカをやれたらいいなと思って演じていました。
――プランの全体像は、いつ頃見えた感じでしたか?
山本 現場に入って、監督と話し合っていたんですけど、段々その時間が増えていったんです。そのとき、「あ……私、トーカのことを結構考えているんだ。トーカのことを理解してきているんだ」と、すごく感じるようになって。そうやって段々わかっていくことは今までにないことだったので、すごく不思議な経験でした。
――具体的に、監督との話し合いの中で意見が異なったようなシーンは、どこだったんでしょう?
山本 後半の重要なシーンです。そこでは、初めて現場から飛び出しました(苦笑)。私は今回からの参加なので生意気なことは言えないですけど……、それくらい(トーカについて)考えたというか、力が入っていたシーンだったんです。そこまで感情的になっちゃったのは初めてでした。自分の意見が正解かどうかはわからないけど、監督とぶつかれたのは、すごくよかった時間だったのかなと思っています。
――山本さん自身とトーカの距離感が近くなっていた、というのもありますか?
山本 いや……うーん……。トーカになると、私は本当に笑わなくなるというか、感情がわからなくなるんです。いつもだったら、普通に窪田さんや翔太さんの前で笑うのに、心から笑えていなかったりして。集中する時間が多ければ多いほど、山本舞香なのか、トーカなのか、よくわからないことは結構ありました。
――感情面のみならず、アクション面でもかなりハードそうでした。大変なことが多かったのでは?
山本 そうですね。アクションでも、トーカのキャラクターだからこそ、どういう表情で、どういうアクションをするのか、というところを一番悩みました。あとは「痛い」表現がとにかく難しい! 刺された経験なんてないけど、トーカは刺されたりもしますし、想像で痛みを表現するのが、すごく難しかったです。痛い芝居については、完成作を観て「窪田さんってすごいな……」って、ものすごく思いました。「実は1回殺されたこと、あるんじゃないの?」と勘違いしてしまうくらいの表現力の高さです! 翔太さんも、地面に打ちつけられるシーンがあるんですけど、息が「ヒィッ」となっていて……。観ていて、勉強になることがすごく多かったです。
――元々、山本さんは武術をたしなんでいらっしゃいますよね。そこは役立ちましたか?
山本 体幹は鍛えられているので、そこは生かされているかもしれないですね! アクションをやらせていただける機会があると、「空手をやっていて、よかった」と思いますし、レベルが高いアクションを求めていただけること自体が、すごくうれしいんです。どうこなしていくか、ちゃんとできるようにしたい、と燃えます。……私、ずっと「野猿」と言われていたんですよ。今回も、野猿のごとく、ア クション部の方がやってくれたものを、見よう見まねで全部やっちゃっていました。1回見れば、「できる」と思ってしまうというか。
――できてしまうんですね、すさまじい運動能力ですね!
山本 そう……ですね(笑)。カネキを特訓するシーンは、アクション部の方がやっているのを見て、窪田さんと私でその場で全部やりました。ただ、ワイヤーアクションに関してだけは、全然コントロールができないので、基礎から教えていただいてやったんです。ワイヤーは、アトラクションみたいで、すごく楽しかったです。「もう1回やる?」というくらい(笑)。予告編で映っている赫子の上を走るところは、実は吊られたまま、ただ空中を走っているだけなので、何もない状態なんです。映像を観て、自分でも「ああやってできるんだ!」と感動しました。
――お話を聞いていて、思い入れの強さを非常に感じます。「トーカ役は誰にも渡したくない」という類の気持ちはありますか?
山本 私が決めることではないですけど、自分としては絶対に嫌です。今回、100%満足はしていなくて、悔しい気持ちを経験したのが、すごく大きかったんです。こんなに大人気の原作の実写映画化に携われることはなかなかないので、今だから言えますけど、プレッシャーもすごくありました。……こうして、試写で観てくださった上で「よかったですよ」と褒めてくださると「よかった、成立していたんだ」と思う気持ちもある一方で、(一般の)皆さんにはこれからなので、何と言われるかはわからない。全然叩かれる覚悟でいますし、それで学ぶこともあると思うんです。21歳の私にとって、すごく大きな作品であることに違いはないです。
――窪田さんとご一緒して、発見したことや感じたことはありますか?
山本 何から何まで、本当に勉強になりました。窪田さんの主演としての現場の居方は、私が監督と話し合っているときに、入ってくるのではなくて、後ろから見守ってくださるんです。いつか……もし私がこうした作品で主演をやるようになったら、窪田さんのように、支えられるような主演の人になりたいな、と思いました。それに、カネキ役としては堂々とした格好よさがあって、アクションも完璧ですし、息づかいや痛がっているところもリアルすぎて……すごかったです。
――月山役の松田さんも、相当話題になっています。
山本 本当に! クランクインのときは、「翔太さんが月山……想像できない」と思っていたんですけど、現場をご一緒して、完成作を観て「翔太さんにしかできない役だった!!」とすごく思いました。「他人になっている」という、「俳優」という仕事を完璧にされていて、尊敬しました。
――お二方から、役者として影響を受けたところが多かったんですね。
山本 窪田さんは前作から主演でやられていて、すごく勉強もされているので本当に何でもできる方だなと思います。翔太さんに関しては、私と同じ本作からの参加で、スタートは同じなのに完璧すぎて。完成作を観ると、怖さの中に美しさもある月山だから、あの表現は翔太さんならではですよね。……完璧すぎて、すごく悔しくて……。経験値も全然違いますし、先輩ですけど、悔しいのが正直な気持ちです。
――現場では、いかがでしたか?
山本 現場だと(笑)、窪田さんも、翔太さんも、場の雰囲気をなごませようと、してくださってました(笑)。ただ、おふたりとも、スイッチの切り替えがすごいです。
――すぐに打ち解けられたんですか?
山本 私は、すぐに信用して人といろいろ話すことができないタイプなので、最初のほうは「無愛想だな」と思われていたと思います(笑)。けど、おふたりがご自身のことをすごく話してくださるので、ちょっとずつ話せるようになって。今では、ごはんに行くことも多いです! 作品が終わってからも「緊急集合!」みたいな感じで、私が招集をかけて3人でごはんに行きます(笑)。お仕事のことは全然話さなくて、プライベートなお話ばかりなんですけど。
――いい関係ですね。先日、窪田さんとはドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』でも共演されていましたよね。
山本 そうなんです! 窪田さんのことは「アニキ」と呼んでいて……、撮影のとき、ほかのキャストさんがいるのに「アニキ、バイバーイ!」と大きな声で言っちゃって(笑)。窪田さんも「じゃあなー!!」って(笑)。本当に、いい「アニキ」です!(取材・文=赤山恭子、撮影=映美)
映画『東京喰種 トーキョーグール【S】』は、2019年7月19日(金)より全国ロードショー。
出演:窪田正孝、山本舞香、松田翔太 ほか
監督:平牧和彦、川崎拓也
脚本:御笠ノ忠次
原作:石田スイ
公式サイト:tokyoghoul.jp
(C)石田スイ/集英社 (C)「東京喰種」製作委員会
※2021年12月23日時点のVOD配信情報です。