タロン・エガートン。最新出演作『ロケットマン』では、グラミー賞を5度受賞した稀代のシンガーソングライター、エルトン・ジョンを演じ、歌唱シーンも吹替なしでやり遂げ、先に公開された全米ではすでに大絶賛を浴びている。
イギリス郊外の町で、音楽の才能を持って生まれた少年はミュージシャンを目指すことを決意し、「エルトン・ジョン」という名前で音楽活動を始める。作詞家バーニー・トーピンとの出会いをきっかけに、成功への道をまっしぐらに進んでいくのだが、報われない愛や孤独に耐えきれなくなった彼は、酒やドラッグに溺れていってしまう。
ステージの上で派手な衣装に身を包み光り輝く一方で、どうしようもないほどの闇を抱えていたエルトンの困難と苦悩を、タロンが体当たり、かつ繊細に表現。エルトン本人も製作総指揮で参加しており、すでにふたりは友情以上ともいえる近い関係性を築いたという。来日したタロンに、製作秘話のほか、本作のメッセージである「なりたい自分になれているか」とぶつけてみた。
――『ロケットマン』を観て以来サウンドトラックを聴くことはもちろん、エルトンとご一緒したライブ動画を観て、日々高まっていました。
タロン:本当に!? ありがとう! エルトンとはライブで3回共演しているんだよ。「Tiny Dancer」(アカデミー賞のパーティー)、「Rocketman」(カンヌのプレミア)、「Your Song」(エルトンのツアー「Farewell Yellow Brick Road tour」)で一緒に歌うことができて、素晴らしい経験だったよ。
――本作の撮影前には、エルトンの自宅でお互いの話をオープンにしたそうですね。忘れられない言葉や、やり取りはありますか?
タロン:ひとつだけをピックアップするのはすごく難しいんだけど、エルトンはずっと僕をすごく支えてくれて、協力的だった。本当に親切にしてくれて、彼が初めて買ったダイヤのピアスもプレゼントしてくれたんだ。映画のリハビリのシーンで、実際それをずっとつけているんだよ。彼は自分の家に招いてくれるどころか、彼の家族と一緒にしばらく泊まらせてくれたりしてくれて。そこまで親しくなって、間近で接したことが今回演じた上で、一番かけがえのないことだったかな。
――仲良くなった中で、タロンだけが知っているエルトンの魅力があれば、教えてください。
タロン:とにかく愛情をたくさん持っていて、周りの人に優しさを振りまく人なんだ。僕のことをいつも心配して連絡をくれたりするしね。……と同時に、すごく面白くて、いたずらをしたり、ちょっと意地悪をしてみたり、愛情を見せたりするような人でもある。わざとからかってくるような、チャーミングな面もある人なんだよ(笑)。
――劇中では数々の歌を披露しています。中でも遊園地でパフォーマンスする「Saturday Night’s Alright」がミュージカルナンバーとしてみどころのひとつですが、撮影はいかがでしたか?
タロン:僕もすごく気に入っているシーンなんだ! 実はあのシーンのリハーサルを撮影のかなり前の段階からやっていて、僕のパートはそれほど組み込まれていなかったんだけど、ほかのダンサーたちに自分がどう絡んでいくかがひとつのテーマだった。あと、そのシーンは単なる派手なお祭り的シーンというわけではなく、あの中で何を伝えようとしているかを、まず考えなきゃいけなかった。エルトンが5年くらいの間にいろいろな音楽的な文化からの影響を吸収しているシーンだ、と象徴したかったので、インド系の人たちのバンドセクションがあったり、カリブ系の人たちのスカセクションがあったりするんだ。エルトンは彼らと絡んでいって影響を受けて、彼独自の音楽ができあがっていくんだよね。それを伝えるシーンだと解釈したよ。
――歌唱力が高いことも評価されていますが、ご自身の歌でツアーなども考えませんか? 本作の役作りで曲作りをされたりもしましたか?
タロン:いや、曲作りはしていないんだ、聴けたものじゃないと思うよ(笑)! ツアーができるかどうかは置いておいて、ちょっとしたコンサートみたいなものはやりたいなと思っているよ。数曲歌って、合間にお話を盛り込んで、みたいな感じ……ひょっとしたら実現するかもしれないね。
――タロン自身の人生を変えた曲や思い出に残る曲はありますか?
タロン:8歳くらいのとき、両親とデヴィッド・ボウイの「ハンキー・ドリー」(アルバム)を聴いていて、どの曲も素晴らしくてそれぞれの良さがあるんだけど、中でも「流砂(Quicksand)」という曲がすごく好きだったな。あと「クークス(Kooks)」という曲があるんだけど、それはデヴィッド・ボウイたちに息子が生まれたとき、まだ若いふたりに子供がいきなりできたけど、「いい親になろう、変わり者のふたりだけど、生まれてきてくれてありがとう!」という感じの曲なんだ。特に僕にとっては母がくれた曲というのもあって、親子の関係をすごく象徴している歌だなと思ったから、子供ながらにすごく自分に大きな影響を与えた思い出の曲かな。
――本作には、「なりたい自分になる」というメッセージが込められていますが、タロンさんは今なりたい自分になれていますか?
タロン:やりたいことはできていると思う。今はしっかり仕事をして、ローンを払って(笑)、いい人生を送って、映画を作ったり、歌うことをやっているから。ただ、もちろんこれから先、もっともっといろいろやりたいこともたくさんあるし、家族を作るとか大事なこともあると思う。人間はどんどん変化していくものだと思うから、1年前と今の自分では全然違うし、人生ってそういうもの? ?よね? でも決して今の自分は嫌いじゃない。(取材・文=赤山恭子、撮影=iwa)
映画『ロケットマン』は、2019年8月23日(金)より全国ロードショー。
出演:タロン・エガートン、ジェイミー・ベル、ブライス・ダラス・ハワード ほか
監督:デクスター・フレッチャー
公式サイト:https://rocketman.jp/
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※2021年8月30日時点のVOD配信情報です。