十代から映画を中心に出演を重ね、俳優としてのキャリアを積んできた高良健吾。繊細で影のある役、爽やかで柔らかい表情が印象的な役柄など、作品によって様々な顔を見せてくれる俳優である。そんな彼が出演するおすすめ映画をまとめてご紹介。
高良健吾 プロフィール
高良健吾は1987年11月12日生まれ、熊本県出身。身長176cm。
2005年、TVドラマ『ごくせん』の第2シリーズに出演し俳優デビュー。翌年公開の『ハリヨの夏』にて映画初出演を飾り、2008年公開の『蛇にピアス』アマ役では観る者に強烈なインパクトを残す演技で注目を集める。
その後も映画を中心に活動し、2012年『軽蔑』にて日本アカデミー賞新人俳優賞、2014年『横道世之介』にてブルーリボン賞主演男優賞など、現在までに多数の映画賞を受賞。CMも多数出演、2011年には初舞台を踏んだ。連続ドラマへの出演も増えており、まさに今、旬の俳優のひとりと言える。
『蛇にピアス』(2008)
すばる文学賞と芥川賞を受賞した金原ひとみの同名小説が原作。ブレイク前の吉高由里子と共にメインキャストに抜擢され、作品の過激さも相まって話題を呼んだ。監督・脚本は世界的舞台演出家である故・蜷川幸雄。
吉高由里子演じる19歳のルイは、蛇のように割れた舌〝スプリット・タン″を持ち全身にピアスや刺青をしたアマ(高良健吾)と、アマの紹介で知り合った彫り師シバ(ARATA)の二人と関係を持つようになる。自らの舌にピアスを開け背中に刺青を彫ったルイは、次第に身体改造の痛みと快楽によって生きている「実感」を得るようになる。大胆な濡れ場や過激な暴力シーンが物議を醸した問題作。
高良健吾は主人公・ルイ(吉高由里子)の運命を変えることになる、全身ピアスに刺青の男・アマを演じた。ルイと知り合ってすぐに同棲するようになったアマは、ルイには従順だが、街で絡んできたチンピラには激昂し徹底的に暴力を振るうなど、頭に血が上ると手が付けられない。若き日の高良健吾の、体当たりの熱演を見ることができる。
『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(2009)
花村萬月原作の『ゲルマニウムの夜』でデビューした大森立嗣による監督第二作。メインキャストに松田翔太、高良健吾、安藤サクラと注目の若手実力派俳優を迎え、貧しく閉塞感を抱えた若者たちの新たな一歩を描く青春ロードムービー。
孤児院で兄弟のように育ったケンタ(松田翔太)とジュン(高良健吾)は、茨城の工事現場でひたすら壁を壊す解体工事の仕事をして生活していた。低賃金で過酷な労働環境、そして陰湿ないじめ。自らの手ではどうにもならない現実に苛立つ二人、ジュンの同棲相手・カヨちゃんを連れて、ケンタの兄・カズのいる網走へ旅立つが……。
高良健吾が演じたのは、両親が分からずケンタ(松田翔太)と同じ施設で育ち、ケンタを強く信じ兄のように慕うジュン。自分の欲求に抗えず行動してしまうジュンは、仕事や進学などに関心を持てずナンパばかりの日々を過ごす。天真爛漫で危うげなジュンを繊細に演じた。
『南極料理人』(2009)
かつて海上保安官として南極観測隊の調理を担当した西村淳のエッセイシリーズを原作とし、本作で商業映画デビューした当時弱冠31歳の新鋭・沖田修一がメガホンを取った。
主演は堺雅人。南極昭和基地からも遠く離れた陸の孤島と呼ばれる南極ドームふじ基地で、ストレスを抱えた隊員たちの胃袋をあの手この手で満たす料理人の奮闘をコミカルに描いた。
日本から14,000キロ離れた南極ドームふじ基地へ、調理担当として単身赴任することになった西村(堺雅人)。日本に妻(西田尚美)、8歳になる娘、生まれたばかりの息子を残し、約1年半、8名の男性越冬隊員たちと悪戦苦闘しながら絆を深めていく。
高良健吾は越冬隊員のひとりである大学院生の雪氷サポート隊員、通称・兄やんを演じた。隊員の中で最も若く、思わず「渋谷とか行きて〜」と本音を漏らすシーンも。見どころは何といっても兄やんの究極の遠距離恋愛。日本に暮らす女性とのままならない恋の行方に注目だ。
『おにいちゃんのハナビ』(2010)
新潟県小千谷市片貝町を舞台に、白血病の妹・華と引きこもりの兄・太郎の絆を描く、実話をもとにした切なく優しい物語。2005年秋に放映されたドキュメンタリー番組をきっかけに映画化となった。監督はテレビドラマを中心に演出を手掛ける国本雅弘。
病弱な華(谷村美月)の療養のために、400年の伝統を誇る花火大会が有名な片貝町に引っ越してきた太郎(高良健吾)たち家族。難病だが明るく前向きに生きる妹・華は、引っ越してきたことで孤独な高校生活を送り引きこもりになってしまった兄・太郎のため新聞配達のアルバイトに付き添ったり地元の成人会を訪れたりと精一杯励ますが、あるとき白血病が再発してしまい…。
病気に悲観的にならずに立ち向かう華に支えられ、次第に心を開き華のために花火を上げようと決意する太郎を高良健吾が爽やかに演じた。年に一度打ちあがる花火、そして深い絆と信頼に裏打ちされた、互いへの温かな気持ちが感動を呼ぶ。
『白夜行』(2010)
これまでに舞台化、テレビドラマ化もされたベストセラー作家・東野圭吾の同名小説を原作とし、『60歳のラブレター』や『半分の月がのぼる空』の深川栄洋がメガホンを取った。とある殺人事件に関係する人々の複雑な人間関係を中心に据え、19年に渡る男女の愛を描いたミステリー。
映画版では堀北真希と高良健吾、テレビドラマ版では山田孝之と綾瀬はるかが主演を務めた。先に映像化されたTVドラマ版では主に主人公・亮司と雪穂の心情面を掘り下げオリジナルの要素を加えた構成・演出であるのに対し、映画版は原作に沿った内容・展開となっている。
高良健吾は、幼児期に起こった事件により心に闇を抱え、その後もひとりの女性を守るために罪を重ねてしまう桐原亮司を演じた。亮司のうちに秘めた狂気、哀しみ、深い愛を繊細な表情で見事に体現した。
『ソラニン』(2010)
浅野いにおの同名人気コミックを原作とし宮崎あおいを主演に迎え、本作が長編映画デビューとなる三木孝浩が実写映画化した。
OL2年目にして会社を辞めてしまった芽衣子(宮崎あおい)は、音楽の夢を諦めきれないフリーターの種田(高良健吾)と暮らしている。芽衣子は現状を打破しようとせず煮え切らない種田に発破をかけ、すれ違いながらも絆を深めていく二人だったが、あるとき種田は交通事故に遭ってしまう……。
恋人の遺したギターを演奏し、恋人の遺した「ソラニン」という歌をうたう芽衣子の姿が胸を打つ、切ない青春ラブストーリー。
高良健吾の演じた種田は、夢を追いバンド活動を細々と続けている。この先の将来のことに確信が持てず現実から目を逸らして日々を過ごしているが、実のところ音楽に対しては並々ならぬ情熱を持っているという役どころだ。
『軽蔑』(2011)
芥川賞作家である中上健次の遺作となった同名小説を原作とし、『ヴァイブレータ』や『雷桜』の廣木隆一監督が映画化した。高良健吾は本作で日本アカデミー賞新人俳優賞、高崎映画祭最優秀主演男優賞を受賞した。
賭博に明け暮れる新宿歌舞伎町のチンピラ、カズ(高良健吾)は、ポールダンサーとして身を立てる真知子(鈴木杏)と激しく惹かれ合い、カズの故郷へ駆け落ちする。しかし名家の跡取り息子であったカズの周囲は2人を認めなかった。カズには賭博で作った多大な借金もあり……。激しくも哀しい純愛を貫く男女の逃避行を描いた。
高良健吾の演じたカズは、実は名家の跡取り息子でありながら東京で賭博漬けの生活を送るチンピラ。映画レビューサイト・Filmarksでは「カズのクズっぷりがすごい」との声も多く、何事も感情に任せて行動してしまうことで自らを破滅に導いてしまうキャラクターを、高良健吾が醸す絶妙な危うさで表現した。
『苦役列車』(2012)
芥川賞を受賞した西村賢太の同名私小説が原作。青春ドラマを描くことに定評のある『天然コケッコー』や『マイ・バック・ページ』の山下敦弘が監督を務めた。
1980年代後半の時代を背景に、酒と風俗に溺れながら日雇い労働でその日暮らしをする19歳の主人公・貫多(森山未來)の、職場で意気投合した友人(高良健吾)やひとめ惚れした古本屋の女性(前田敦子)との青春模様を描いた。
高良健吾は、森山未來演じる主人公・貫多が港湾労働で知り合い初めて友情のようなものが芽生えることになる専門学校生・日下部正二を演じた。日下部は、貫多と彼が想いを寄せる桜井康子(前田敦子)との仲を取り持ち、貫多に変化をもたらしていくという重要な役どころだ。
『横道世之介』(2013)
『パレード』や『悪人』などで知られる吉田修一による同名小説を原作に、高良健吾とは4度目のタッグとなる『南極料理人』、『キツツキと雨』の沖田修一が映画化。
1980年代を舞台に、長崎から大学進学のために上京してきたお人好しの青年・横道世之介(高良健吾)と、彼を取り巻くお嬢様の恋人や個性豊かな友人たちの人生をユーモアたっぷりに描いた心温まる青春ストーリー。本作はブルーリボン賞作品賞や主演男優賞をはじめ、数々の映画賞を受賞した。
大学でサンバサークルに入った主人公・横道世之介(高良健吾)は、心優しく真っすぐな性格で周囲の人間を惹きつける不思議なキャラクター。これまで陰のある役を演じることが多かった高良健吾だが、劇中サンバサークルで太陽の被り物をしていることに象徴されるように、本作ではまた別の魅力を存分に発揮している。
『武士の献立』(2013)
江戸時代の加賀藩を舞台に、実在した「包丁侍」の家に嫁いだ女性が夫や家族とぶつかり合いながら絆を深め、互いに成長していく姿を描いたヒューマンドラマ。監督は「釣りバカ日誌」シリーズの朝原雄三。
料理の腕は立つものの、気が強すぎるあまりにたったの一年で離縁されてしまった主人公・春(上戸彩)は、君主とその家族の食事を賄う「包丁侍」の舟木伝内(西田敏行)に見初められ嫁入りすることになる。夫になった安信(高良健吾)は、「包丁侍」として伝内の跡継ぎであるにも関わらず料理が大の苦手で…。
高良健吾が演じた安信は、元々料理よりも剣術を好んでいたが、兄の急死により不本意ながら「包丁侍」跡取りとなった若き武士。はじめは春からの助言に反発する安信だったが、次第に心を開き春の教えに従い料理の腕を上げていく。高良健吾にとって初の時代劇、そしてその包丁さばきにも注目だ。
『きみはいい子』(2014)
坪田譲治文学賞を受賞した中脇初枝の同名小説が原作。原作は児童虐待を題材にした連作短編集であり、その中から「サンタさんの来ない家」「べっぴんさん」「こんにちは、さようなら」の3編を群像劇として映画化。前作『そこのみにて光り輝く』でモントリオール世界映画祭最優秀監督賞を受賞した呉美保監督の手腕が光る。
真面目だが優柔不断でクラスの問題に向き合えない小学校教師、幼少期に受けた暴力のトラウマから自らも娘に手を上げるようになってしまう母親、話し相手は名前も知らない小学生だけ、という認知症の兆しにおびえ始めた独居老人。とあるひとつの町で暮らす3人がそれぞれ抱える問題に光を当て、誰もが誰かに支えられていることや人が人を愛することなど、普遍的なテーマを丁寧に描き出す。
高良健吾は学級崩壊してしまうクラスを受け持つ新米教師・岡野を演じた。真面目だが問題から目を背ける性格ゆえ、児童たちからも信頼されていない。だが様子がおかしいクラスの「神田さん」を気に掛けるようになったことから、岡野は小さな一歩を踏み出すことに。迷いながらも子供たちにひたむきに向き合うようになった岡野の変化が胸を打つ。
『悼む人』(2015)
『永遠の仔』などで有名なベストセラー作家・天童荒太の直木賞受賞作を原作に、『トリック 劇場版』などの堤幸彦がはじめに舞台化、その後映画化の際もメガホンを取った。
事件や事故で亡くなった人々を追悼するため全国を旅する青年・坂築静人(高良健吾)が、旅の途中で夫殺しの罪の意識のため亡くなった夫の亡霊に悩まされる女性(石田ゆり子)や静人の真意を暴こうと調査する週刊誌記者(椎名桔平)に出会い、「生」と「死」について深く向き合っていく姿を描いた。
高良健吾は主人公の「悼む人」・静人を演じた。自分とは縁もゆかりもない人々を悼むために各地を放浪するという役どころで、高良自身も静人は難役だと感じていたようだ。静人は何故、何のために祈るのか。生きることや愛することに正面から向き合った高良の真摯な演技が見どころだ。
『多十郎殉愛記』(2019)
『狂った野獣』や『極道の妻たち』などで知られる巨匠・中島貞夫監督が20年ぶりに長編劇映画のメガホンを取り、中島監督の教え子、『私の男』でモスクワ国際映画祭最優秀作品賞を受賞した熊切和嘉が監督補佐として参加した。
幕末の京都を舞台に、親が残した借金から逃れるため長州脱藩浪人となった清川多十郎(高良健吾)は小料理屋の用心棒をしながら怠惰に日々を過ごす。店のおかみ・おとよ(多部未華子)は多十郎に想いを寄せるが多十郎がその気持ちに応える気配はない。そんななか多十郎は新選組に押されている京都見廻組の襲撃に遭い…。
本作の主人公・清川多十郎役で、初の本格的なチャンバラに挑んだ高良健吾。3週間、徹底的に殺陣を鍛えて中島監督の期待に応えた。時に監督本人から殺陣を教わることもあったという。刀を手に斬り斬られる高良健吾の姿は、若い世代の新たな時代劇を期待させる見応えとなっている。
『アンダー・ユア・ベッド』(2019)
「リミッターを外せ!」を合言葉に、あえてタブーとされる題材をテーマにクリエイター達の感性と才能を思うままに爆発させた作品を開発・発信していくプロジェクト「ハイテンション・ムービー・プロジェクト」の第二弾。同プロジェクト第一弾『殺人鬼を飼う女』と同じく、原作は大石圭の同名小説。監督は『リアル鬼ごっこ』や『バイロケーション』の安里麻里。
親からも学校のクラスメイトからも存在を無視され続けてきた男が人生で唯一幸せだった瞬間に固執し、再び追い求めるところから物語は始まる。孤独な男の切ない愛は、次第に狂気の果てへ暴走していく。
高良健吾が演じた主人公・三井直人は、一度だけ名前を呼んでくれた佐々木千尋のことが忘れられない。探し出して近所に引っ越し、さらに彼女の好きな熱帯魚の店まで始めてしまう。三井の盲目的な行動はそれだけに留まらず、合鍵を作り部屋に潜入、盗聴・盗撮に加えてやがて彼女の自宅のベッドの下で過ごすようになるという異常ぶり。高良健吾が挑んだ一途で痛々しい歪んだ愛は、間違いなく彼の新境地だろう。
『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019)
言わずと知れた天才作家・太宰治のスキャンダラスな恋と人生を、写真家であり映画監督でもある『さくらん』『ヘルタースケルター』などの蜷川実花が構想に7年を費やし映画化。太宰役に小栗旬、彼を取り巻く3人の女に宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみを迎えた。
身重の妻・美知子(宮沢りえ)と二人の子供がいながら恋の噂が絶えず、自殺未遂を繰り返す破滅的な日々を送る作家・太宰治(小栗旬)。文壇のスターである彼は作家志望の静子(沢尻エリカ)や未亡人の富栄(二階堂ふみ)とも関係を持ちながら、数々の名作を産み出していく。
高良健吾が演じたのは太宰を痛烈に批判する若手作家・三島由紀夫。この頃の三島はまだ21歳の学生で無名だった。「太宰の文学がきらい」だと公言した三島と太宰の一度きりの対峙がどう描かれたのか、「小栗旬との共演は緊張感があった」という高良の演技に注目だ。
【文/こっこ】
(C)2019 映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会、(C)2008「蛇にピアス」フィルムパートナーズ、(C)2009「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」製作委員会、(C)2010「おにいちゃんのハナビ」、(C)2011 映画「白夜行」製作委員会、(C)浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会/写真:太田好治、(C)2012「苦役列車」製作委員会、(C)2013「横道世之介」製作委員会、(C)2013「武士の献立」製作委員会、(C)2015 アークエンタテインメント、(C)2015「悼む人」製作委員会/天童荒太、(C)「多十郎殉愛記」製作委員会、(C)2019「人間失格」製作委員会
※2020年9月28日時点のVOD配信情報です。