実在の兄弟デュオ「ドニー&ジョー・エマーソン」の心揺さぶる実話を映画化した『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』(22)が、1月31日(金)より全国の劇場にて公開される。
1970年代のアメリカ・フルーツランドの片隅で、奇跡のアルバム「Dreamin’Wild」はひっそりと誕生した。時は流れ、2010年代。スポケーンの骨董品店で売られていたそのアルバムをコレクターが発掘したことをきっかけに、30年の時を経て“埋もれた傑作”として人気を博す。不思議な浮遊感と懐かしい夢をみているかのようなサウンドは、2025年の今もどこか新しく、郷愁の音がする。

監督・脚本を務めるのは、『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(14)以来約8年ぶりの長編作となるビル・ポーラッド氏。
主人公・ドニーを演じるのは、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(16)でアカデミー賞(R)主演男優賞を受賞したケイシー・アフレック。ドニーの妻役には『(500)日のサマー』(09)のズーイー・デシャネル、青年期のドニー役を『ハニーボーイ』(19)、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(21)のノア・ジュプが演じる。
FILMAGAでは、『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』がどのようにして生まれたのか、ビル・ポーラッド監督にインタビューを決行。製作に至った経緯や撮影でのエピソードを伺った。

ビル・ポーラッド監督
ドニー&ジョー・エマーソン兄弟を題材にした映画を製作するにあたり、監督はこのバンドのどのようなところに惹かれて本作を企画したのですか?きっかけや経緯などを教えてください。

ビル・ポーラッド監督:友人でプロデューサーのジム・バークが、私に監督をやるべきだと本企画とストーリーを持ってきてくれました。実は、当初『シュガーマン 奇跡に愛された男』(12)に題材が近いと感じて、少し躊躇していたんです。しかし、既に本作のモデルのドニー・エマーソンに会っていたジムは「音楽を聴いてくれ。そしてドニーとジョーに会ってほしい」と声をかけてくれて。実際に彼らの楽曲を聴いてその音楽に惚れ込んだのはもちろん、エマーソン一家が凄く素敵な家族で、より一層関心が生まれました。物語もさることながら、とにかくエマーソン一家の人物像が魅力的に感じて、映画化を決意しました。
今作はドニーの過去や音楽に対する複雑な感情を中心に描きつつも、ひとつの家族の再生の物語でもあるかと思います。実在する家族の歴史を描く上で、意識した点はありますか?

ビル・ポーラッド監督:ドニーとジョーの兄弟をはじめ、エマーソン一家をリアルな形で描くことに責任を感じていました。自分の個人的な経験からインスピレーションを受けて作っていた部分もあったと思いますが、何よりも彼らのリアルさをとらえるということを第一に考えていました。脚本執筆中や撮影の間にドニーをはじめ本人たちと親しくなっていたので、彼らの物語を本人から直接聞くことができました。それによって、よりリアルな描写の表現へと繋げていけたと思います。
『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』以来約8年ぶりとなる監督・脚本作かと思いますが、いかがでしたか?本作の撮影でのエピソードや、企画段階での印象深い出来事があれば教えてください。

ビル・ポーラッド監督:まず『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』は久しぶりに監督をしたということもあり、監督としての自分のクリエイティブさを解き放し、大胆に挑戦してみようと思っていた作品でした。今回の場合は、とにかくエマーソン一家を魅力に感じて、彼らの“ありのまま”を描くことを大事にしていた作品だったので、前作のようにクリエイティブさやワイルドさ、ストーリーが飛躍するようなことはなるべくしないようにしていましたね。それはエマーソン一家を大事に描くことが、本質だと思っていたから。
また撮影現場では、ケイシー・アフレックとドニー・エマーソンは良い関係性を築いていました。ケイシーはドニーをリスペクトしていたし、ドニーの個性や資質を演じる上で重要な部分は一緒にいるときに吸収しようとしているような印象を受けました。ただ当初、ケイシーはドニーをシリアスに演じ過ぎていました。葛藤だけでなく、楽しい気持ちや愉快な部分も取り入れていくことも重要だったので、現場でケイシーにドニー本人の笑い声を聞かせる場面もありました。役者たちに少しずつ方向性についてコメントして形を作っていったんです。
今作はケイシー・アフレックを筆頭に、実力派の名優からフレッシュな面々まで豪華な俳優陣が出演していますが、キャスティングの際にこだわったポイントなどはありますか?

ビル・ポーラッド監督:エマーソン一家の嘘偽りのない“ありのまま”の部分に惹かれていたので、映画の中でもそれを描きたいと思っていました。そして個性豊かなエマーソン一家のリアルな素質をそのままとらえたいと考えた時に、ありきたりな映画のように撮ってしまうと面白くないと思ったんです。ケイシー・アフレックという役者は、自然に内なる葛藤というものをセリフにせずとも目に見える形で表現できるので、彼にお願いしたいと思いました。
ドニーが「Dreamin’Wild」の持つ夢(魔法)のような浮遊感の正体を語った時に、このアルバムに惹かれる理由が分かりとても感動しました。計算された完璧な物だけが人を惹きつけるわけではないという点では、映画もまた同じかと思います。監督は映画を製作する上で、人の感情を動かすものの正体はなんだと思いますか?

ビル・ポーラッド監督:子供の頃から毎週土曜日に映画館に行くぐらい、映画を観て育ってきて、幅広い作品に出会ってきました。そこまで良くないと感じるものから素晴らしい作品もあるけれど、どんな映画からも“学び”があります。イマイチかなと思っても、必ず得るものがあって、それが映画の大好きなところかもしれません。どの作品も私たちがどう在れば良いのかということを教えてくれると思うから。人生の体験というのは人によってそれぞれ違うからこそ、“学び”があり、感情を動かすような感動に繋がるのかもしれないと思っています。
『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』作品情報
公開日:2025年1月31日(金)
監督:ビル・ポーラッド
脚本:ビル・ポーラッド
出演:ケイシー・アフレック、ズーイー・デシャネル、ノア・ジュプ、ウォルトン・ゴギンズ、ボー・ブリッジス
配給:SUNDAE
公式サイト:https://sundae-films.com/dreamin-wild/
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*2025年1月17日時点の情報です。

