映画『風の谷のナウシカ』で伝えたいこととは?時代を経て愛される理由とは?徹底考察【ネタバレあり】

アニメの風通しがもっと良くなりますように

ネジムラ89

映画『風の谷のナウシカ』が2020年も愛され続ける理由とは?ジブリの不朽の名作をもっと深く読み解く。

宮崎駿監督やスタジオジブリ作品のことを語る上で、どうも特別な扱いをされることの多い『風の谷のナウシカ』。

それもそのはず、『風の谷のナウシカ』はかなり特殊な境遇の作品だったりします。そこで今回は、『風の谷のナウシカ』という作品が映画だけでなく、映画の外で取り巻くメディア達にどう波及していったのかを紹介します。

スタジオジブリの作品達と比べると『風の谷のナウシカ』の多岐に渡るメディア展開がどれだけ異質なのかがわかるのではないでしょうか。

風の谷のナウシカ』(1984)あらすじ

「火の7日間」と呼ばれる戦争から1000年。人類は有毒な「瘴気」を吐き出す木々が生い茂る「腐海」と、そこに棲む「蟲」たちにおびえながら暮らしていた。そんな「腐海」のほとりにある「風の谷」は、平和な小国。しかしある日、軍事大国・トルメキアの巨大船が谷に墜落する……。

以下、『風の谷のナウシカ』のネタバレを含みます。

風の谷のナウシカ』を作ったのはスタジオジブリではない!?

 

今でこそスタジオジブリの作品達と名を連ねている『風の谷のナウシカ』ですが、厳密にはスタジオジブリ作品ではありません。

というのも、スタジオジブリが設立されたのは1985年。『風の谷のナウシカ』が公開されたのは1984年で、生まれは『風の谷のナウシカ』の方が先だったのです。

では、『風の谷のナウシカ』を作ったのはどこのアニメーション製作会社なのかというと、トップクラフトという会社です。原徹氏が社長を務めていたこの会社は、スタジオジブリの前身となる存在で、『天空の城ラピュタ』を製作するタイミングで解散となり、原徹氏はスタジオジブリの取締役を務めることになります。

風の谷のナウシカ』は漫画が原作だった!?

そして、もう一つ知らない人には衝撃的なことが『風の谷のナウシカ』が、実は同名の漫画が原作の作品だということです。宮崎駿監督が漫画を原作にした作品を製作するなんて珍しいと思いますが、それもそのはず、その漫画の作者こそ宮崎駿その人。1982年よりアニメ雑誌「アニメージュ」で連載をしていました。

漫画版「風の谷のナウシカ」は全7巻。映画化を果たしたのは原作がまだ2巻の頃だったので、まだまだ物語の結構な序盤で、映像化を果たしたわけです。

とはいえ、宮崎駿はもともとアニメ化するつもりで漫画を製作したことが明らかになっています。今でこそアニメオリジナルの長編作品も存在しますが、当時は前例があまりなかったこともあり、漫画の連載をはじめました。

ゲーム版「風の谷のナウシカ」が存在する!?


そんな宮崎駿監督作品でも特殊な境遇を持つ『風の谷のナウシカ』ですが、なんとゲーム化も果たしていました。発売されたのは公開当時の1984年。今でこそゲーム専用機が定番となっていますが、コンピュターゲームとして発売されました。

驚くべきはなんと3本も発売された点。PC-8801向けに発売された「風の谷のナウシカ」は、アドベンチャーゲーム。ナウシカを操作して、アイテムを見つけてメーヴェを完成させるといったものです。PC-6001mk向けに発売されたゲームは「ナウシカ危機一髪」というシューティングゲーム。プレイヤーはガンシップを操作します。そして、MSX向けに発売されたのが「忘れじのナウシカ・ゲーム」というゲームで、こちらもシューティングゲーム。「ナウシカ危機一髪」と同様にガンシップを操作するというものでした。

ちなみに都市伝説的に王蟲を虐殺するゲームが存在するという話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、それは嘘。これらのゲームはいずれもそのような内容ではありませんでした。とはいえ、スタジオジブリ以降の作品はゲーム化を果たしていないのでなかなか貴重です。

ちなみにコンピューターゲームではありませんが、ツクダホビーからは「風の谷のナウシカ」のボードゲームが発売されたこともありました。

時代を超えて映画化を果たす巨神兵たち

風の谷のナウシカ』は、別の作品にも波及していきます。中でも「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズや、『シン・ゴジラ』でおなじみの庵野秀明監督によるミニチュア短編作品が『巨神兵東京に現る』です。

この作品では『風の谷のナウシカ』に登場する巨神兵が、東京に現れ、街を破壊していく様子を描いた作品です。展示会「館長庵野秀明特撮博物館ミニチュアで見る昭和平成の技」や映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の併映作品として公開されました。映画『風の谷のナウシカ』冒頭で巨神兵が並んで立つ場面と、同様の構図のシーンが用意されているのも見所です。

ちなみに庵野秀明は、『風の谷のナウシカ』の原画として製作に参加しており、『風の谷のナウシカ』の外伝作品の製作を希望していたこともあり、この企画が実現したそうです。

歌舞伎化も果たす『風の谷のナウシカ

そして、四半世紀以上を経た2019年には、なんと歌舞伎化も果たします。201912月より松竹の製作、配給により新作歌舞伎・風の谷のナウシカが上演されました。この歌舞伎では、漫画版「風の谷のナウシカ」の物語をベースに前後編に分けて、演じられました。
一方で、映画版に使われていた久石譲による音楽も、和楽器アレンジで演奏されているなど、映画に馴染みがある人にも、作品を思い出すエッセンスが用意されたものとなっています。また脚本には、『海が聞こえる』や『思い出のマーニー』など数多くのジブリ作品に携わってきた丹羽圭子が務めました。

時代を経て愛される『風の谷のナウシカ

このように『風の谷のナウシカ』は時代の中で、様々な分野へとその世界を広げていった作品となりました。スタジオジブリ以前という時代がそうさせた部分もあれば、その後のジブリというブランドの確立によって、『風の谷のナウシカ』を何度もテレビ放送をすることができたといえます。そんな影響もあり、公開当時の世代でない人々にもポピュラーな作品になりました。

面白いのは、いつの時代に見ても本作が伝えるメッセージが色褪せないところ。映画が公開されてから30年以上経った現在でも、日常のニュースや社会問題に『風の谷のナウシカ』を思い出すことがあるのではないでしょうか。自然との関わり方や文化の発展、人類の存亡といった普遍的な内容がテーマとなっていることも、長きに渡り愛される理由でしょう。

その特殊な境遇はまさに唯一無二。今後もスタジオジブリの作品たちとは違った色を持ちながら愛されていくのでしょう。特撮、歌舞伎ときた今、それはまた新しい形で生まれ変わった姿かもしれません。『風の谷のナウシカ』はもっとも過去の作品でありながら、まだまだ今後の展開に期待できる未来の作品といえるでしょう。

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202377日時点の情報です。

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