【レンタル開始】『マイ・インターン』が叶えたジェンダーの対称性は「萌え」?

Why So Serious ?

侍功夫

2月10日より、日本でも大ヒットを記録したマイ・インターンのレンタルが開始になります。

マイ・インターン

さて、ジェンダー問題を語る際に「ジェンダーの対称性」という言葉が登場することがあります。

例えば痴漢被害に会う女性は多いですが、女性の痴漢(痴女?)の被害に会う男性の話はあまり聞きません。週刊誌のカラーページに「水着姿の女性アイドル」は日常的に目にしますが「水着姿の男性アイドル」はほとんど見かけません。男性を意味する「雄」を重ねて「雄々しい」はポジティブな表現ですが、対して「女々しい」はネガティブな意味で使われます。

このように女性を取り巻く物事が、そのまま男性には当てはまらない場合が往々にしてあります。「ジェンダーの対称性」は、その均衡が保たれていないという前提で登場することの多い言葉だと言えるでしょう。

そんな中で『マイ・インターン』は、とある奇妙な事柄において「ジェンダーの対称性」を叶えた作品になっています。

『マイ・インターン』ってどんな話?

マイ・インターン

ファッションのネット通信販売事業で急成長した会社が、地域貢献の一環としてリタイアした高齢者を向かえ入れる「シニア・インターン制度」を開始します。既に仕事をリタイヤし、妻に先立たれ、日々やることの無い70歳のベンは新しい生きがいを求めて応募し、採用されます。配属されたのは、女性ながら会社を育てあげた社長ジュールズのアシスタントとしてです。

ジュールズはベンにどう手伝ってもらえば良いのか解らず持て余してしまいますが、実直な仕事ぶりや豊富な経験に裏打ちされたアドバイスで、次第にジュールズを始め会社にとっても無くてはならない存在になっていきます。

映画では懸命ながら空回りしてしまうこともしばしばなジュールズを、ベンがそっと導いてゆく様子が、清々しくコミカルに描かれています。

ジュールズにとってのベン

ここでロバート・デ・ニーロ演じるベンの“スペック”を詳らかにしてみましょう。

アメリカン・トラディショナルなスーツを日常的に着こなし、常に清潔なハンカチを携えています。当然の様に女性によくモテますが、恋愛対象は同年代の話の合う相手です。なので、若いジュールズが寝巻でしなだれかかっても、ネコがヒザの上で寝てしまった時と同じ様な対応をします。

実直かつ真面目で、他人の不正は波風がたたないよう穏やかに解決しますが、ボスの為なら不法侵入くらいはやってのけます。不平不満は漏らさず、困難や問題には正面から付き合い解決していきます。さらに、どんな無理難題や理不尽な要求にもニコヤカに対応し、年長者らしい豊かな経験を活かして良い結果を出しさえするのです。

そんなスーパー老人なれど、ジュールズにとっては、あくまで「インターン」なので最低賃金以下で雇用して“あげている”という立場です。

“萌えファンタジー”としてのベン

ジュールズにとってベンは「恋愛」と「セックス」以外全てを満たす、ほぼ完璧な存在だと言えます。成熟した男性で、清潔で、良いセンスを持ち、仕事も出来るが、お金はさほど必要で無く、あくまで自分を立ててくれます。そんなベンはジュールズのみならず全ての働く女性にとって都合の良い存在:ファンタジーだと言えるでしょう。

今まで女性向けのファンタジーが無かったワケではありません。ハーレクィン・ロマンスの恋愛小説から、冒険的なセックスを描いたフィフティ・シェイズ・オブ・グレイ、その元ネタになったトワイライトシリーズなどがあります。しかし、それらは濃厚にセックスの匂いを放つ「セックス・ファンタジー」の側面もありました。

一方で『マイ・インターン』では劇中にセックスを匂わす演出こそありますが、「働く女性のファンタジー」からはセックスを切り離しています。つまり、俗に言う「萌え」を、あのロバート・デ・ニーロに投影させているのです。

叶えられたジェンダーの対称性

マイ・インターン

商品化されたステレオタイプな「萌え」コンテンツの多くは、未就学少女の奔放で活発な様子だったり、女子中高生やアイドルたちの“イナタイ”様子が「萌え」を催させます。女性もそういった様子に「萌え」たりしますが、メインターゲットはあくまで男性です。

直接的には描かれていなくとも「健康的な女性らしさ」といったエクスキューズの奥にセックスの影を意図的にチラつかせている作品は少なくありません。コンテンツ自体に女性が「可愛らしい萌え」を感じていても「男性用のコンテンツ」である部分に気が引けたり、ギョッとする瞬間もあったと思います。

対して『マイ・インターン』は女性をメインターゲットに据えた「萌えコンテンツ」になっています。いわゆるアニメ絵の持つ「子供向け」「男性向け」といったイメージに起因する後ろめたさや、性的な趣向を見透かされるような描写もありません。

演じているのは過去に非情な犯罪者や恐ろしいギャングの親分を演じたこともある、あのロバート・デ・ニーロです。そのデニーロが傅いて全く見返りを求めずに仕事から私生活にいたるまでを手伝ってくれる、という極上のファンタジーがあるのです。

『マイ・インターン』は日本における「男性向け萌えコンテンツ」に対して「ジェンダーの対称性」を叶えた「女性向け萌えコンテンツ」になっています。これが大ヒットに繋がったのです。

(C)2015 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED

 

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  • hiroro
    4.5
    めちゃくちゃ良かった!!! こんな人生の先輩であり、仕事の良き相談・助言者な人が居てくれたらどんなに良いだろうか。
  • みるち
    4.1
    ベンが素敵な大人すぎた。 心温まる映画。
  • もちごめ
    4.4
    切実に、ベンみたいな大人になりたいと心から思った。紳士で粋な言葉とかも言えちゃって、でもただのいい人という言葉で片付けられない、ちょっといたずらっ子な少年ぽい心もあって本当に魅力的だった。人を幸せにする力を持っている。 アンハサウェイ演じる女社長も観る前は自己中で性格悪いのかと思ってたらかなり素敵な方。ベンの人柄に触れて成長してゆく姿もじんとくる。 みてよかった!!心温まる映画。
  • たくろ
    3.9
    紳士すぎるベンの生き方が素晴らしい アン・ハサウェイはできる女性の役がとても似合う
  • サラスパ子
    3
    ロバートデニーロ。顔と雰囲気がとても良い。 ネット通販で急成長した会社に、高齢インターンとしてやってきたロバートデニーロ。若者がひしめくオフィスで最初は異質な存在に映るが、穏やかで一貫した彼の性格にみんなすぐ魅了される。 プラダを着た悪魔の続編か?と思いきやそうではなかった。 アンハサウェイの家はブルックリンのブラウンストーンのとても素敵な家。ロバートデニーロの家も、室内がとても心地よく整頓されていて、見ていて楽しかった。 ロバートデニーロの、子どもともすぐ仲良くなる感じ…ちょっとロビンウィリアムスのような存在だった。 アナライズミーのロバートデニーロとは全然違う。 最後は最高ではないが、一応一段落という感じで終わる。優しい話。
マイ・インターン
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