神出鬼没の謎のアーティストを追いかけろ!『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』

映画と本とコーヒーと。

藤ノゾミ

みなさん、Banksyを知っていますか?

彼は正体不明のストリートアーティスト。世界各地の街角に現れ、壁や路上にゲリラでグラフィティアートを描きます。セレブの間にもファンが多く、作品は驚くほどの高値です。

そんなバンクシーがある日突然、ニューヨークを舞台に始めた“路上展覧会”を追ったのが、現在公開中のドキュメンタリー『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』

バンクシーは毎日1点ずつ、街のどこかに作品を残し、場所を明かさず公式サイトに写真を投稿しました。はたしてバンクシーの目的とは何なのか? 彼の作品を探し求めてニューヨーカーが街中を駆け回った大騒動、ぜひご覧ください!

バンクシー・ダズ・ニューヨーク

覆面アーティストBanksyとは

映画の見どころを語る前に、バンクシーについてもう少し触れておきましょう。

彼は生年月日も本名も未公表の謎の芸術家。ロンドンを中心に活動し、街頭に描く見事なグラフィティアートで近年その存在が知られるようになりました。

中でも彼の名を一躍広めたのが、2005年の“美術館ジャック”。バンクシーはMoMA美術館やメトロポリタン美術館、大英博物館など、世界有数の美術館のひと気のない部屋に自作を無断で展示したのです。他の作品と同様に解説まで付けた周到さで、しばらくの間、彼の作品は誰にも気づかれずギャラリーに並んでいました。

パレスチナ自治区

photographed by Markus Ortner

バンクシーの作品は社会を風刺し、反権力を掲げたものが多く、イスラエルの治安部隊に威嚇発砲されながらパレスチナ自治区の分離壁に子供が穴を開ける絵を描いたことも。

今年1月にはロンドンのフランス大使館の向かい側に、ミュージカル「レ・ミゼラブル」のポスターで有名な少女が白い煙に包まれて涙を流す姿を描き、フランス当局が難民キャンプで催涙ガスを使ったことを批判しているとして大きな話題を呼びました。

NYに仕掛けた宝探し競争『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』

2013年10月1日、マンハッタンの片隅に突如としてスプレー缶を持った少年のグラフィックが現れます。記された電話番号にかけてみると、聞こえてくるのはこの路上展示のオーディオ解説。これがバンクシーによる「Better Out Than In」の幕開けでした。

タイトルの意味するところは、“屋内より外がいい”。「都市や屋外や公共の場所こそ、アートが存在するべき場所なんだ。アートは市民とともにあるべきだ」と語るバンクシーにとって、ストリートこそ最上の美術館

彼は1ヵ月にわたって創作活動を続け、『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』(クリス・モーカーベル監督)は日々更新されていく、この前代未聞の路上アート展を記録しています。

SNSで拡散!みんなでアートに参加する

最初の少年のグラフィックが発見されて4時間後に塗りつぶされてしまったように、バンクシーの作品はすぐ建物のオーナーに消されたり、彼をよく思わない他のアーティストによって上書きされてしまいます。

そのため、作品を探す人たちは早朝から街を駆け回り、TwitterやInstagramでリアルタイムに情報をアップ。その様子はまるで現代の宝探しゲームで、「バンクシーハント」をYouTubeで実況する人もいれば、汚された作品を修復する「救う隊」まで現れます

運よく作品にたどり着いたら、もちろんみんなスマホで記念撮影。ハート型の風船が壁に描かれた現場では、観客が風船を持つ格好をしてみたり、離れて風船を見つめたり、思い思いに自分を入れ込んだ写真を撮り、次々と“新たな作品”がネットで広がっていきました

25万ドルの作品を60ドルで販売

ネットを使って誰もが参加しながら楽しむバンクシーの展示プロジェクト。一方で彼の作品は、オークションで1億円もの高値がついたこともある超高価なアートでもあります。

しかし、バンクシーはそれを逆手に取り、ある日の展示では観光客風の土産物屋を装い、セントラルパークで作品を路上販売した様子を動画で公開します。

作品につけた値段は60ドル(約6700円)ですが、全く売れず、店番のおじいさんは大あくび。結局たった3人しか客は来ず、値切られた末に売り上げは計420ドルでした。

それが後に1点25万ドル(約2800万円)に跳ね上がるのですから……「アートの価値って何?」と皮肉たっぷりのバンクシーの笑い声が聞こえてきそうです。

狂乱の1カ月は警察に“逮捕”されて終幕

街のあちこちで騒ぎを起こすバンクシーに、当局も黙ってはいません。市長は「他人の所有物や公共物に落書きをするのは、アートではない」と非難し、警察も捜査に乗り出します。そしてある日、公式サイトには「取締のせいで今日は展示なし」との文字が……。まさか、もうおしまい?

ところが、その翌日からバンクシーは平然と展示を再開します。最終日には「楽しかった!」とのメッセージをサイトに載せ、「BANKSY」のアルファベットをかたどった風船をビルの壁に吊るします。

これを盗もうとする集団が現れれば、見ていたファンは飛びかかって阻止。ヒートアップしてきたところでタイミングよく警察が到着し、犯人を逮捕。証拠品として押収された「BANKSY」はパトカーに乗せられます。

はたしてどこまでがアートなのか……。バンクシーは1カ月に及ぶ展示プロジェクトを「BANKSY」の‟逮捕劇”というお祭り騒ぎで締めくくったのでした。

いつか日本にも?映画は順次全国公開!

ニューヨークというストリートアートの本場で人々を熱狂させたバンクシー。

映画を見ていると、作品探しに熱狂する人々を含めて街まるごとがバンクシーの「Better Out Than In」というアート作品だったという気がします。

次にどの街角に現れるかは、本人のみぞ知る。いつか東京にも……と期待しつつ、今のところは映画や公式サイトに掲載されている写真でバンクシー・アートを楽しみましょう。

『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』は今後、全国のミニシアターで順次公開予定です!

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • TWOG
    -
    バンクシーバルーンが警察の車に詰め込まれてるシーンに始まり、終始笑えたなあ。 所々それは確かに、と思えるところもありつつ、例えば、最後のところグラフィティって上塗りしてしまえばその価値はなくなるから取り壊しに反対してた団体も何も言えなくなるとか。 石のスフィンクス、持っていった地元民はきっとこれまでは爆音スピーカー車とか作りつつ家族で慎ましく暮らしてたんだろうなあとか思うんだけど、あれを画廊に渡して、そのあとのレセプションに来てたときの小綺麗〜な格好とか、そこで画商がしてた話とか、芸術を見てるのは面白いんだけど、商売道具としての芸術ってなんなんだろうなあとか思ったり。 Dirty underwear the musical も笑ったし とは言いつつ、NYの中でグラフィティを描くことに始まり、死神カーのセットにしろ、買った絵に上書きして画廊に戻すところにしろ、やっぱり誰にも姿を見せないところはやっぱりマネジメント能力というのか、計画性の高さというか、とんでもなく賢いなあと思う。
  • ykymmt
    3
    これもバンクシー展の予習で観た。 作品を路上で60ドルで売っていたのが痛快だった。
  • honeyle
    -
    1ヶ月間毎日NYに設置されるバンクシーの作品に翻弄される人々のドキュメンタリーって感じだった NYでのバンクシーといえばぬいぐるみ載せたトラックは書籍バンクシーインニューヨークの表紙にもなってたから印象的 バンクシーを肯定する人、批判する人、保護する人、壊す人、利益を受ける人や被害を受ける人 皮肉にもどう捉えられようとこの人の作品には負荷価値がついちゃうんだな〜 法に触れるギリギリとか言ってたけど普通にアウトだろとか思う一方で、姿を見られる事なく一晩であんな作品作り上げるところにはカリスマ性みたいなもの感じてしまう笑 言ってしまえば落書きっていう犯罪(他にも色々犯してそう笑)なのでそこに嫌悪感示す人は当然出てくるけど、バンクシーの作品ってただの絵とか像じゃなく結構誰が見ても面白いと思えそうなものが多い気がした 私は日本で開催される作品展行きたい 5ポインツって場所のこと知らなかったけど塗りつぶされたのはちょっと悲しい
  • mana
    3
    反消費主義を謳っているのに消費され続ける皮肉も全部ひっくるめてアートなのかな、難しい、、
  • ay
    3.4
    バンクシー展行くから予習 だいぶ駄作な気持ちで見たけど思ったより深かったバンクシーの意向が
バンクシー・ダズ・ニューヨーク
のレビュー(2511件)