今年の夏の映画の本命はゴジラで決まり! と思いきや、パニック映画の本場アメリカからダークホースなサメ映画が届きました。美女サーファーとホオジロザメが対決する、現在公開中の『ロスト・バケーション』です。
ビーチまで200メートルの浅瀬というワンシチュエーションで登場人物はほぼ一人。86分とコンパクトながら見応えたっぷりで、じわじわ話題を呼んでいます。
怪獣の大きさも破壊する範囲も超ド級な『シン・ゴジラ』がマキシマムなパニック映画とすれば、こちらはミニマムなパニック映画。スピルバーグの『JAWS/ジョーズ』から連綿と続くサメ映画に新たな傑作誕生!……かもしれません。
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では『ロスト・バケーション』はどんなストーリーなのか。普段ならしっかり紹介するところですが、ザ・シンプルなこの映画、長々とした説明はいりません。
穴場のビーチにやってきた医学生のナンシー。サーフィンを楽しんでいたところ、巨大なホオジロザメが出現! なんとか岩場に逃れるものの、そこも満潮になれば沈んでしまう。さあ、どうする!?
……以上! もうこれだけの予備知識で映画館に行っても大丈夫です!
シンプルすぎるシチュエーション
ですが、せっかくなのでもう少し見どころを紹介しましょう(笑)。
原題の「The Shallows(=浅瀬)」が示すように、86分の上映時間のほとんどが海辺のシーンで、サメに襲われてからの主人公の行動範囲はほぼ岩場の周辺のみ。この舞台設定の潔さには清々しささえ感じます。
しかし、足元が狭く不安定な岩場ゆえに、ナンシーの不安はひとしおです。知る人ぞ知るビーチだから観光客が来ることもなく、助けを呼ぶための携帯電話は砂浜にある。岸まで約200メートルという距離は近いようで実際は遠く、声は届きそうで届かず、人喰いサメのいる海にぽつんとたった一人で取り残される恐怖と絶望が際立ちます。
たくましすぎるヒロインはデッドプールの奥様
ナンシーを演じるのは、テレビドラマ「ゴシップガール」の主演で有名になったブレイク・ライヴリー。夫は『デッドプール』のライアン・レイノルズで、2014年12月には第1子を出産しましたが、一児の母であることを感じさせない引き締まったボディはさすがです。
時には1日最大12時間も水に浸かって撮影することもあったそうで、そのタフさは、サメに噛まれた太腿の傷をピアスとネックレスを使って麻酔なしで縫合するナンシーのたくましさにも負けません。劇中でナンシーが流す鼻血もメイクではなく、撮影中にブイで顔を強打して出たリアルなものだったとか……。
とは言え、ゴツゴツした岩で脚を強打するわ、サンゴで擦りむくわ、クラゲに刺されるわ、終盤に近付くほどナンシーの身体はアザだらけになっていき、「痛い痛い痛い!」と思わず目をつぶってしまうシーンも数知れず。
満身創痍の彼女が丸々と太った巨大なサメとどう戦うのか。そもそも武器ひとつ持たずにサメを倒せるのか? 最後までハラハラさせるその展開は、『ラン・オールナイト』や『フライト・ゲーム』といったアクションスリラーを手がけたジャウマ・コレット=セラ監督の真骨頂と言えるでしょう。
助演賞モノのカモメの演技がすごすぎる
人間の登場人物はほぼナンシーだけですが、この映画には重要な役割を果たすキャラクターが“1羽”います。羽根をケガして同じ岩場に避難してきたカモメです。
真っ暗な夜の海を一人で過ごすことになるナンシーにとって、そばにいてくれるこのカモメが心の支え。話しかけたり、脱臼を治してやったり、2人は奇妙な友情をはぐくみます。
不安そうにナンシーを見る顔つきや、ちょこちょこ動いてナンシーに寄り添う動作など、絶対にCGだろうと思うこのカモメが実は本物! ナンシーとともに、可愛いカモメが助かるかどうかも気になります。
美しすぎる世界遺産のビーチ
設定の上ではメキシコの秘境となっているビーチは、実際にはオーストラリア・シドニーから東600キロに浮かぶロード・ハウ島で撮影されました。
世界遺産に登録されているこの島で本格的な撮影が行われるのは初めてで、白い砂浜や透きとおる浅瀬……手つかずの自然は息をのむ美しさです。
ナンシーがサーフボードに座ってサーファー2人と話をするシーンでは俳優たちが流されてしまわないよう、ボート9隻と70人のスタッフ、ダイバー総出で撮影するなど、文字通り波に翻弄されながらの撮影だったそうですが、苦心の甲斐あってその映像の美くしさは抜群です。
特に、軽快な音楽にあわせ、波しぶきがはじけるサーフィンシーンは必見! もちろん『ジョーズ』以来定番の、泳ぐ人の足元を水中から撮るサメ目線のショットもちらちら出てきて、紙一重のところにある恐怖も感じさせてくれます。
出典 : https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lord_Howe_Island_from_North.jpg?uselang=ja
生意気すぎるナンシーの成長
せっかくビーチまで送ってくれた地元の青年を無視してスマホばかり見ていたり、サーフィンをドタキャンした友達に「予定を狂わされるのは嫌い!」と悪態をついたり、最初はなんだか偉そうでイヤな感じの印象のナンシー。
かたくなな態度の裏には母を病気で亡くした心の傷があり、実はナンシーは母の面影を求めて、大学の医学部を逃げ出し、母が若い頃に旅したビーチにやってきたのです。
自分の殻に閉じこもったナンシーは、サメとのサバイバルを通じてどう変わっていくのでしょうか。彼女が最後まで無事かどうかは伏せますが、ナンシー曰く「妊婦が寝そべっている姿」に見えるビーチ沖の小島は重要なメタファー。サメと戦うハラハラドキドキ感にプラスして、ナンシーの成長と再生にもぜひ注目してみてください!
上野でサメ展やってます
余談ながら、この夏さらにサメの魅力を堪能したい方のためにプチ情報。
現在、上野公園の国立科学博物館では「海のハンター展」を開催中で、全長3.2メートルのオスのホオジロザメの全身標本を展示しています。他にもシャチやイッカクの全身骨格、一千万年前に繁栄した全長10メートルを超える古代サメの復元模型などがズラリ。
ナンシーの味わった恐怖、大海原のハンターたちの迫力を体感するのにおススメです!
※2021年1月30日時点のVOD配信情報です。