『白鯨との闘い』鯨に襲われた捕鯨船の悲劇を描く海洋アドベンチャーが遂に公開!

感受性複雑骨折

寂々兵

10闘い

(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED.

昨日より、捕鯨船エセックス号の悲劇を描くロン・ハワード監督の海洋アドベンチャー・ドラマ『白鯨との闘い』(『白鯨のいた海』から改題)が公開されます。CMやSNSなどで積極的に宣伝が行われているので目にした方も多いのではないでしょうか。

今回は映画のモデルとなった「エセックス号事件」、そしてそれを元に作られた文学の名作「白鯨」と映画を簡単に紹介していきます。

エセックス号の悲劇とは?

クジラから採取される鯨油は石鹸やろうそくの原料に、鯨蝋は薬品などに使用されていたため、1970年代頃までクジラは日常生活に必要不可欠な存在でした。

1819年、いつもと同じようにクジラを捕獲するためにマサチューセッツ州ナンタケット島を出航した捕鯨船エセックス号は、太平洋を航海中にマッコウクジラの群れを発見します。

歓喜しながらクジラを追い立て仕留めていたのも束の間、一頭の巨大なクジラが突然エセックス号に襲い掛かり、船はあっという間に沈んでしまいます。

大海に投げ出された乗組員はそれぞれ救命ボートに乗り込みクジラの巣から脱出、1000マイル以上離れた島を目指して終わりの見えない漂流を続ける……という話です。

ペリーらが日本にやって来た理由の一つとして、当時アメリカでは上述の理由で捕鯨を重ねた結果近海の海からクジラがいなくなってしまい、日本近海のクジラを狩るために中継地を立てるべく開国を迫ったという逸話も残されています。

小説『白鯨』と何か関係があるの?

『高慢と偏見』『嵐が丘』『戦争と平和』などに並び、世界十大小説の一つに数えられるハーマン・メルヴィル著『白鯨』の名を聞いたことがある方も多いと思います。

『白鯨』は先述のエセックス号事件に材を取り、メルヴィルが大幅に脚色を加えて小説化した海洋アクションロマンです。今回公開の『白鯨との闘い』では、作家メルヴィルがエセックス号事件の生き残りに取材を決行する、というシナリオで始まります。

活字に触れ慣れた人でも辟易する難解さ、捕鯨に関する専門用語や薀蓄の膨大さ、凄まじく衒学的な描写、ころころ入れ替わる視点、聖書や手記からの脈絡のない引用のオンパレードには色んな意味で圧倒されます。本作の後ではカフカやドストエフスキーが楽しくすらすら読めてしまうほどです。

これまでの『白鯨』の主な映画化

海の野獣(1928)

初めて製作された『白鯨』のサイレント映画です。ドリュー・バリモアの祖父である名優ジョン・バリモアが主演を務めました。

当時ハリウッドでは暗い映画は受けなかったため、船長エイハブの人間性にスポットを当て、彼の人生をヒロイックに描写したり原作にいない恋人を登場させたり、挙句の果てにはオチさえもハッピーエンドに変えてしまうという荒業のもと製作されました。

『白鯨』をテーマにしたまったく別の映画と言って良いかもしれません。

白鯨(1956)

10白鯨1

こちらは『マルタの鷹』などのジョン・ヒューストン監督によって製作された比較的原作に忠実な映画化です。

やはり独特の暗い雰囲気は当時アメリカの観客たちにまったく受けず、興行的には大失敗。名優たちを多く起用したものの、グレゴリー・ペックが狂った船長を、オーソン・ウェルズがほんの数分で退場する神父を演じるというミスマッチすぎるキャスティングに、今では仄かにカルト臭を感じるほどです。

しかしながら1975年、スピルバーグ監督の『ジョーズ』が公開されたことで「海洋パニックものの元祖」として再び脚光を浴びました。何があるか分からないものです。

白鯨 MOBY DICK(2010)

10白鯨2

こちらは2010年公開のTV映画です。総製作費20億円を掛け、VFXを駆使したSFアドベンチャー超大作となりました。

大まかな流れは1956年の映画をほぼ踏襲しつつ、原作の難解な部分をすべて削ぎ落としているので非常に観やすくなっています。しかしながら前後編合わせて3時間と少し長め、特に後半90分は終始船長と副船長の軋轢、白鯨との追いかけっこがちまちまと描かれるのでいささかの眠りを誘います。

とは言いつつ、本国アメリカでは視聴率的に大成功をおさめたようですし、ジャケットから想起されるほどのB級作品ではないので『白鯨』のお話を知るという目的で一度は鑑賞してみるのも悪くないかもしれません。

なお他にも、1930年公開の『海の巨人』、2010年公開の『バトルフィールド・アビス』など、『白鯨』は何度も映像化されています。

おわりに

簡単にまとめると、1820年に起こったエセックス号事件を直接モデルに映画化したのか本作『白鯨との闘い』、エセックス号事件をモデルに書かれた小説『白鯨』を映画化したのが先述の作品群です。

VFX技術も進歩していますし、大迫力屈指の作品なので映画館のスクリーンで鑑賞したい作品ですね!

(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED.

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • shamcafe
    3.4
    まあまあ良かった
  • えな
    4.2
    気にはなってたけど邦題から冒険ものかなと思って保留してた。面白いと聞いて早速鑑賞。船乗りめちゃくちゃかっこいい! キリアンマーフィー、ベンウィショー、トムホランドも。ちょっと前の映画だからキャストが豪華、航海の迫力すげー!!これで一攫千金じゃー!!と思ったら……。小説の白鯨は図書館で借りたけど5ページくらいしか読まなかったのでよくしらなかった。トムホランドかわいい、おじいちゃんになってもかわいい。
  • いがらぴ
    2
    鯨の中に入るシーンで吐き気を催したが、そのあと彼氏が北海道物産展に行きたいと言い出し正気かと思った
  • 黒宮類
    4.5
    Netflix 字幕 2020.10/18
  • けんざ
    3.4
    決して、白鯨との"闘い"という勇ましい話ではない。その実態は、海の怪物に慄き、畏怖し、絶望する話だ。シーシェパードが可愛く思えるレベルの捕鯨妨害。サメ映画に登場するサメとは違って、到底勝てる相手ではないということを思い知らされる。鯨にとっては人間などちっぽけな存在に過ぎないのだ。 というわけで、肝心の白鯨はほとんど出てこない。メインは船乗りたちの熾烈なサバイバルだ。食糧も水も尽きて行く中、船乗りたちは生きる希望を失って行く。しかし生き残るためには禁忌に手を出さなければならない。そう、例のアレだ。 クリヘムとトム・ホランドのMCU俳優共演ということで話題にのぼった本作だが、それを除いても一見の価値がある。というのも、捕鯨問題について改めて考える契機になると思うからだ。絶滅危惧種だから殺してはダメ、高度な知的生命体だから殺してはダメ。だからといって伝統ある食文化を壊していいのか、そもそも人間が食物連鎖をコントロールしようとすることがチェイスの言う「傲慢」なのではないか。明確な答えがないからこそ、慎重に考えなければならない。
白鯨との闘い
のレビュー(13403件)