後世に残る傑作の誕生!3900万円の支援金を集めた『この世界の片隅に』の魅力とは

映画と現実を行ったり来たり

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2016年11月12日(土)に、こうの史代原作、片渕須直監督作品『この世界の片隅に』が公開されます。

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(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

本作は2015年3月にスタートしたクラウドファンディングにて、3000人を超える支持者から目標額を大きく上回る約3900万円(39,121,920円)の支援を集めたことで本格的に制作が決まりました。

作品完成後に試写会で上映されると、その魅力に瞬く間に心を奪われる人が続出。SNSや各メディアにおいて絶賛の声が多数あがっており、その数は日々増え続けています。

なぜこれほどまで多くの人々が本作の制作・公開を希望したのか、これから鑑賞される多くの人々の心を動かす傑作となる見どころを以下にて紹介します。

戦時下で強く生きた人々の記憶がスクリーンを通して疑似体験できる

終戦から70年以上が経ち、実際に第二次世界大戦を経験した人も少ない今の日本においては、戦時下の体験談を聞くことも難しくなってきました。

実際に戦争体験をしたことのない私たちは、当時の日本を数少ない映像や写真、残された文献、これまで作られた戦争をテーマにしたドラマやアニメ、映画作品からイメージすることが一般的ではないでしょうか。

戦時下の日本を描いた作品と聞くと、多くの人が恐怖や残酷さ、悲しさという、いわゆる負のイメージを抱くと思います。しかし、まず一番にお伝えしたいのは、本作はこれまでの戦争を描いた映画作品とはひと味もふた味も違う魅力が詰まっているということです。

当時の厳しい日本の状況を鮮明に描いたアニメーションでありながら、日々を丁寧に生きる主人公すずと、彼女を取り巻く家族や広島で暮らす人々の姿が、スクリーンの向こう側に生き生きと映し出されます。

そこには、戦時下の日本で貧しいながらも前を向き、支え合う人々の繋がりや営みが手に取るように感じられ、鑑賞者はまるで自分がその時代、主人公やその家族と共に生きているかのような錯覚に陥るでしょう。

戦争は映画の中のどこか非現実的な話ではなく、私たちが生きるこの日本で実際に起こり、私たちの家族や祖先がその時代に実際に暮していたということ、その出来事は今現在と地続きの出来事であるという感覚を体感できるのです。

見どころ1:魅力的なキャラクター達

この作品の主人公であるすずは、絵を書くことが好きな少女です。

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(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

のんびりしていて少し抜けたところがありながらも、なぜだか憎めない性格のすずは、広島市江波で生まれ育ち、18歳で呉市に嫁ぎに行きます。そして彼女を取り巻く家族や街の人々は、みなそれぞれ短所も長所も含めて優しさと人間味で溢れています。

すずの声を担当したのんさんはじめ、声優陣の素晴らしい表現力によってそれぞれのキャラクターがスクリーン上で本当に生きているように感じられ、一人一人の表情や細かい所作から目が離せません。

見どころ2:スクリーンの中で蘇る当時の日本

こうの史代さんは原作を描くにあたり、写真や資料を基に話の舞台となる広島の町や呉の風景、気候、人々の食事、生活様式を漫画の中で忠実に再現しています。

それを受け片渕監督は、原作を映画化する際に改めて当時の資料を集め直し、劇中に描かれる町並みや家の中、着るもの、食べるもの、海に浮かぶ戦艦一隻一隻まで、当時の人々の暮らしをそのままスクリーンに蘇らせることにこだわったそうです。

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(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

細かな部分まで細密に描き込まれた画面は1シーン1シーンに見応えがあり、筆者は作品の鑑賞中、当時の日本で実際に自分が生きているような感覚を何度も味わいました。

見どころ3:アニメーションだからできる表現

全編を通して、水彩タッチで優しいながらもテンポよく紡がれるストーリー。

ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、作中のポイントとなるいくつかのシーンでは音楽とアニメーションの効果が最大限に生かされた幻想的な(そして衝撃的な)描写がいくつか登場します。

戦争という出来事が、毎日を丁寧に生きる人々にどれほど大きな影響を与えるのか。アニメーションならではの表現方法によって表現されており、それらは観賞後も人々の心に強く残るシーンとなるでしょう。

生きるということに心が震え、必ずもう一度観たくなる。

この世界の片隅に イラスト

上記の見どころ以外にも、さまざまなシーンで”当時の人々にとって戦争がどのようなものであったのか”、言葉では語られないさまざまな意味が登場人物や風景描写に込められており、観れば観るほど新しい発見が見つかるはずです。

戦争映画を新しい切り口で描ききった、後世に残る傑作となるであろう本作をぜひ劇場で体感して下さい。

エンドロールの最後の最後まで、作品に関わった全ての人、そして鑑賞者への愛が詰まっています!お見逃しなく!

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※2022年8月29日時点のVOD配信情報です。

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  • ゆい
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    記録
  • ケシアヘンモル
    4.3
    太平洋戦争下に嫁いだ女性を中心とした物語。 戦時下でありながらも強く逞しく生きていく人々の生活が前半では描かれており、後半での戦火の激化や原発投下で、そんな日常さえ失われる様子が描かれている。 キャラクターデザインや能年の声がほんわかしている分、ショッキングなシーンや戦火に巻き込まれる恐ろしさがありありと伝わった。 ある意味、ドキュメンタリーや実写映画でも味わえない戦争の恐ろしさを感じた。 子供から大人まで遍く見てもらいたい。
  • すじこ
    4.2
    映画のシーンやのんびり日常シーン 色んな展開がある。
  • たなか
    4.9
    まず謝罪をしたいです。出勤途中にて見てしまい、半分見たところで動画を止め、帰りの電車で残りを見てしまい申し訳ございません。この映画は一度で見切ることをお勧めします。しかし、そんな区切り区切り見たとしても、涙は出てくるものです。 自分がちっぽけに見えました。強く生きたい。 一度に見ることが出来なかったので−0.1
  • 顎関節症
    5
    苦しみの中の暖かさは尊い。苦しみなど無いほうが良いのだが。 主人公、すずの豊かな芸術的感性によって戦争がより近く、生々しく感じられる。 恋愛、自分の肉親への愛、他人が家族になる過程が全てうまく、気持ちよくまとまっている。語り継ぐべき名作。
この世界の片隅に
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