【ネタバレあり】『PK』と『ソーセージ・パーティー』が描いた「宗教の意味」

Why So Serious ?

侍功夫

論理哲学的には神の不在は証明されているそうである。

それ以前に、たとえばキリスト教は奴隷に最低限の規律を守らせるために様々な神話を編さんして作られた、いわば“廉価版”の様なものであることが解っているそうだし、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教が指す「神さま」は同一の存在なのに、その言葉を伝える「預言者」が違うだけでだいぶメッセージが変わる。というあたりの話は宗教ネタの定番であろう。

つまり、神さまというのは実際にいないのだが、いるということにしてもらわないと困る人(権力者)がいて、それぞれの思惑により、勝手に「神の言葉」を編さんしているのだ。

宗教って何だろう?『PK』

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(C) RAJKUMAR HIRANI FILMS PRIVATE LIMITED

インド映画で日本でも大ヒットを記録したきっと、うまくいく監督と主演のペアが作った新作PKは宗教的な事柄について代弁者であるハズの自称「預言者」の身勝手さをあぶり出していく『きっと、うまくいく』スタッフが宗教戦争の原因を暴く『PK』参照)。

人間は放っておくとすぐに殺し合いを始めたり、自暴自棄な快楽に溺れて死んでしまう。困難にブチ当たって乗り越える意味が見出せずに自殺を試みてしまう。

「隣人の妻と不倫するな」とか「人の物を盗むな」といった教えを説いた“十戒”は実は、そうすることで不要なトラブルを回避する機能がある。コーランで禁止する飲酒も、酔っぱらってのトラブルからの回避や健康面の配慮であろう。「全ての人間は神さまの意思によって作られ、それぞれ全てに意味がある。」と説くのは、生きることに不安がある人へ「今は困難があるけど、神さまに与えられた使命を全うしなきゃなぁ……」と生き続ける意味を与えるためのものだ。宗教はスピリチュアルな概念に思えるが、非常に機能的な側面を持っている。

ウソという概念の無い宇宙人である“PK”は盗まれたペンダントを探すため、あらゆる宗教に入信し、言われた通りに戒律を守り、布施をし、苦行を続けていく。しかし、神さまはいっこうに答えない(これはマーティン・スコセッシの新作沈黙 サイレンスで描かれるであろう「神の沈黙」のことだ)。

当然ペンダントは見つからず、ただひたすらに辛いだけの日々が続く。ラスト近く、PKが「答えてはくれなかったが、いつか必ず神さまがペンダントを見つけてくれる。という希望が持てた。」と、告白する場面は本作が発するメッセージそのものであろう。

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宗教の先にあるもの『ソーセージ・パーティー』

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(C) 2016 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

現在公開中のソーセージ・パーティーソーセージを男性の、ホットドッグのバンズを女性の、それぞれシンボルに擬人化つうか、見た目まんま……したオゲレツなコメディ映画ではあるが、『PK』が描いたのと同じ「宗教の意味」をテーマとした作品とも言える。

スーパーマーケットで売られる全ての商品に意思がある世界。陳列された商品たちは開店から閉店までの間、カートを押してウロウロしている「神さま」に選ばれ、ドアの外に広がる「天国」へ行くことを熱望している。商品たちは朝の開店と同時に天国と神さまを讃える歌を歌うのが日課となっている。

そこへ、一度は「天国」へ行ったものの、返品されたハニーマスタードが「ドアの向こうは天国なんかじゃない!」と暴露したことで起こる騒動が描かれる。

商品たちの「客信仰」は正に宗教である。しかも中盤で、この“宗教”はお酒や缶詰などの長期保存商品が、日々死を前に嘆く生鮮食品たちのために考えた“希望”だと明かす。「ステキな歌を作ってやったのに、あいつら勝手に歌詞変えやがった!」と憤るあたりは、そのまま現実の世界でも聖典解釈をねじ曲げる人々への怒りであろう。

真実を知ったソーセージは商品たちを率いて、“神殺し”を決行し。めでたく神さまや悪魔(消費期限切れの商品を回収する係)を殺す。その後で行われるのは、性別や人種を超えた大乱交パーティーつまり、自らの手で神さまを殺した彼らは宗教対立や人種対立が無くなり、さらに宗教的なタブーや禁忌も同時に無くすのである。

ラヴァシュ(イスラム圏のひらひらしたパン)とベーグル(ヨーロッパのユダヤ文化から生まれたパン)が、レズビアンのタコス(メキシコはキリスト教者が多い)、ソーセージ、バンズを交えて“愛し合う”のだ。見た目はかなりオゲレツを極めた壮絶なものになるのだが、しかし感動的でもある。ユダヤ人とイスラム教徒とキリスト教徒が男女関係無く愛を交わしているのだから。

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宗教の意味

生きるための規律や希望を与えている宗教だが、その一方で「宗教の違い」から激しい対立を生んでいるのも事実である。

『PK』では「神さまは信じよう。でも神さまに合わせると言う人がいたら一目散に逃げよう。」と世に蔓延るエセ予言者たちへの警鐘を鳴らす。

『ソーセージ・パーティー』では「規律があって、希望もあるけど、そもそもウソ前提じゃん! だったら真実を知って好き放題やった方がよっぽど幸せじゃね?」と問いかける。

それぞれ、まったく違った印象を与える作品だが、その奥底に抱えた“思い”は共通している。

「宗教が原因で人が死ぬなんでバカげている!」

 

※2022年3月27日時点のVOD配信情報です。

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  • 谷本陽菜
    2.7
    何でひとりで見たんだろう^ ^ いや1人で見るのが正解? 英語で見てうっすら何言ってるのかわかるくらいがちょうどいい🔞❕
  • ヴェローナ行きたい
    2.5
    約90分、ずーっと下品。笑 こんな振り切って、大盛りのひたすら下ネタアニメ見たことないし・・・脚本家さん4人集まって、どんな経緯で「食べ物に息を吹き込んで、下ネタで遊ぼう!」ってなったのか気になるし、監督さん2人は、トーマスとかシュレックの人。みんな友達なのかな? 料理される野菜達の悲鳴((;゚Д゚)))笑 このシーン、怖いけど面白かった! ただ、ハマらず気付いたら寝落ちてた。
  • -
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  • ぼうず
    3.5
    ばかばかばかしい
  • suzu
    2.9
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ソーセージ・パーティー
のレビュー(50089件)