映画『名探偵コナン14番目の標的(ターゲット)』が示す14番目とは誰のこと!?見どころをネタバレありで徹底解説!

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ネジムラ89

映画『名探偵コナン14番目の標的(ターゲット)』の魅力をネタバレありで徹底解説!

制作当初は最初で最後の大花火といった具合で臨まれた劇場版名探偵コナン第1弾『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』から1年。無事、見事な大ヒットにより翌年1998年にシリーズ第2弾『名探偵コナン 14番目の標的(ターゲット)』が公開となりました。

監督は前作に引き続きこだま兼嗣、脚本を古内一成のコンビが務めることになりました。第1弾に負けず劣らず、多くの挑戦や意外な演出が詰まった本作に関して、見所やトリビアをネタバレありで解説していきます。

名探偵コナン 14番目の標的(ターゲット)』(1998)のあらすじ

母である妃英理が何者かによって撃たれてしまった。そんな夢を見てしまった蘭は、慌てて英理に安全かどうかの連絡をするのだったが、本人は心配しすぎだと笑うのだった。しかし、それを聞いた英理は毛利小五郎とのある出来事を思い出していた。

そんなやり取りから、しばらく経ったある日、ジョギング中の目暮警部が何者かによってボウガンで撃たれるという事件が発生する。そこには紙で作られた短剣が残されていた。それがなんなのかは不明なまま、続けて今度は、英理のチョコレートに毒物が仕込まれるという事件が発生する。そこには紙の花が残されており、目暮警部を襲った事件と同一犯の可能性が浮上する。

そんな事件の真相を考えながら、阿笠博士を訪ねたコナンだったが、そんな矢先に新たな事件が発生してしまう……。

※以下、『名探偵コナン14番目の標的(ターゲット)のネタバレを含みます。

トランプになぞらえたカウントダウン形式の殺人事件

この映画をなんといっても印象的にしているのが、トランプになぞらえた連続殺人事件でしょう。今回の犯人は、トランプのカードを13から1までカウントダウンしていくように、次々に登場人物に襲いかかります。

特に序盤は、コナンとも親しい間柄のキャラクターばかりが狙われることになり、事件を解決していくTVアニメなどの通常回とは違った緊張感が走ります。

改めて、今回の標的となった人物と番号をおさらいしてみましょう。

13 目黒十三
12 妃英理
11 阿笠博士
10 辻弘樹
9 旭活義
8 沢木公平
7 小山内奈々
6 宍戸永明
5 毛利小五郎
4 ピーター・フォード
3 白鳥任三郎
2 仁科稔
1 工藤新一

それぞれ名前の中に、トランプの札を想起させる文字が入っているという仕掛けがありました

12の妃英理は、数字ではなくトランプのクイーンを表す“妃”から選ばれていたり、一見数字が入っていなさそうな阿笠も、“士”の文字を分解することで11になるというひねった仕掛けで標的となってしまいました。ちなみに阿笠博士は本名であり、“ハカセ”と読まずこれで“ひろし”と読みます。

こうして見ると、コナンの登場人物には、数字に関係した登場人物が多いように思えますが、実は逆。目暮警部の名前はそれまで明らかになっていなかったものの、この映画を制作するにあたって決定しました。

同じく、当時はまだ劇場版限定のキャラクターであった白鳥任三郎の名前も本作を契機に決定。ただ、数字を添えるのではなく、人気推理ドラマ『古畑任三郎』を文字った名前にしているところにもセンスを感じます。

一方で残念ながら名前に数字が付いていながらも、登場していないキャラクターが服部平次。本作に登場させる構想もあったようですが、当時はまだTVアニメシリーズに登場して間もなかったこともあり、本作に続く劇場版第3弾『名探偵コナン 世紀末の魔術師』までオアズケとなります。

ただの連続殺人事件にしないおもしろさもありますが、実は、犯人の沢木公平自身が中盤の数字に含まれており、被害者としてカモフラージュに使っているところも面白いところです。

刑事時代の小五郎や英理の知られざる過去とは

この映画のもう一つの筋として展開されるのが、毛利小五郎の刑事時代の事件です。かつて刑事だった小五郎が10年前に、村上丈によって妻の英理が人質にとられてしまったという事件があったことが明らかになります。その際に、逃亡しようとする犯人に向けて、拳銃を発砲し英理の脚に当たったことで、足止めに成功します。その結果、人質が居ながらも発砲してしまった責任を問われ、依願退職するに至ります。

そもそもなぜそんな危険を犯してまで発砲したのか? という謎が、この映画もう一つの軸となっており、クライマックスにコナンと行動によってその理由が、明らかになります。

この映画によって、小五郎が実は警視庁内でも一、二を争うほどの銃の腕前を持っていたことや、小五郎と英理が別居した理由の一つとなった喧嘩の内容が明らかになるなど、原作でも描かれていなかった秘密が明かされることになったのは、原作とアニメシリーズが密接な関係にある「名探偵コナン」ならでは

今になって思うと、当時からのこういったファンサービスが多くの観客が足を運ぶ作品としてのブランド力を高めたと言ってもいいでしょう。

コナンと蘭の口づけシーン

この映画の見所として忘れてはいけないのが、アクアクリスタルの爆破シーン。

レストランに大量の水が流れ込み、運悪く展示されていた車に、蘭が挟まれてしまい脱出できなくなってしまいます。とっさにペットボトルに空気を詰めて、蘭に届けたコナンでしたが、コナンも不覚にも車の隙間に足を挟んでしまいます。

そこで助けに入るのがまさかの蘭。コナンに口から空気を送り込み、気を失ったコナンの目を覚ませさせます。この蘭のファインプレーにより、コナンのサスペンダーにより、車を動かすことで蘭の救出に成功します。咄嗟の出来事とはいえ、蘭と口づけすることになったコナンが後に顔を赤らめているのが可愛くもあり、後の修学旅行編でキスをする名シーンに先駆けて二人がキスを交わしていたことには驚きを感じる人も多いのではないでしょうか。

この演出で思い出すのが、同じ“コナン”繋がりの宮崎駿が監督を務めたTVアニメシリーズ『未来少年コナン』本作の8話「逃亡」では、主人公のコナンとヒロインのラナが、この映画と似たように海中で溺れそうになる展開があります。この展開でも、ラナの機転による口づけによって、空気を受け取ったコナンが救出に至ります。おそらくこのシーンのオマージュなのでしょう。

もちろん「名探偵コナン」の主人公の名前をコナンにした理由は、『未来少年コナン』が元ではなくもちろんシャーロック・ホームズの著者であるコナン・ドイルから来ています。ですが、連載を始める前の構想時点で、「未来少年コナン」とタイトルが被ってしまうという点で意識されていたことは、原作者の青山剛昌自身が語っています。

コナンではなくドイルにする案もあったということですが、響きの良さからコナンを選んだそうです(参考:CUT 2019年5月号)。この映画では、思わぬ形で日本の二大コナンが重なる瞬間が用意されることになりました。

タイトルにある14番目は誰のこと?

そして最後に気になるのが、この映画のタイトルにもなっている14番目とは、誰なのかという話。

今回の事件は13から1までの計13人が標的となっていますが、実はもう一人、容疑者と思われていた“ジョーカー”の異名を持つ村上丈という被害者が、一連の事件の最初に存在していたことが明らかになります。それを考えると丁度14人になるので、タイトル通り14番目を示すのは、1に相当する数字を担っていた工藤新一ということになります。

その一方で、忘れてはいけないのがこの映画のクライマックス。犯人の沢木によって人質にされてしまった蘭を救うべく、コナンは銃を構えます。その標的となるのが、犯人ではなく人質の蘭。運命的なことにかつて小五郎と同じく、人質を手負いにさせることで、犯人に不都合にさせるという狙いがあったことがこのコナンの行動によって蘭の気づくところにまで至ります。

この映画の連続殺人事件と並行して語られる、小五郎がなぜ人質の妃を撃ったのか?というテーマを思うと、このクライマックスでコナンが蘭を標的にすることは、大きな意味のある展開でした。つまり、実は、この「14番目の標的」というのは、最後にコナンが標的とした蘭のことを示しているとも言えます。

いろんな角度から発見や狙いが見え隠れする名探偵コナン 14番目の標的(ターゲット)は今、観返してみても、改めて発見や驚き、そして深みのある映画であったことが分かります。後にいくつもの作品が作られていく「名探偵コナン」シリーズですが、今回挙げたような観客を楽しませるような試みの数々の果てに今のコナンがあるのだと、改めて感じますね。

※2021年3月31日時点の情報です。

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