【大ヒットの理由】ファンと観客に育てられた『君の名は。』新海誠監督インタビュー

2017.01.21
インタビュー

Filmarks編集部

フィルマーくま

新海誠監督取材3

2016年、映画界の最大の話題はなんと言っても『君の名は。』のメガヒットでしょう。ほとんど誰も予想できなかったようなヒットになりましたが、公開されるやいなや、興行成績はうなぎのぼりで、SNSなどでも好意的な反響が数多く寄せられました。

国内最大級の映画レビューサービス「Filmarks(フィルマークス)」においても、サービス史上最速となる公開後8日間でレビュー数1万件突破を記録し、★スコア平均もいまだに4.0以上をキープし続け、多くの方に愛されている作品です。

そんな歴史を塗り替えるヒットになった『君の名は。』が、日本で最も実績と権威のある映画賞「毎日映画コンクール」の一般投票部門である「TSUTAYA × Filmarks映画ファン賞」を受賞。今回は受賞特別記念として、新海誠監督に、若いファンそして昔から支え続けてくれたファンへの想いを伺ってきました。

参照:【発表】日本で最も権威のある映画賞、一般投票第1位に輝いた映画は!?

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何かを語らずにはいられなくなる『君の名は。』

--『君の名は。』の大ヒットおめでとうございます。

新海誠監督(以下、新海):ありがとうございます。

--『君の名は。』が毎日映画コンクールの一般投票部門の「TSUTAYA ×Filmarks映画ファン賞」を受賞されました。そのお気持ちをお聞かせいただけますか。

新海:ありがとうございます。すごく嬉しいです。お客様に選んでいただけたのが何より嬉しいです。

--今作は、多くの方からたくさんの意見をもらったと思います。Filmarksでも、公開から史上最速の8日間でレビュー数が1万件を突破するなど、観た人が前のめりになって語りたがる作品だったと思います。ご自身で、それは何が要因になったとお考えでしょうか。

新海:作っている時に考えていたのは、過剰な映画にしたいということでした。

比較的短い時間の中に、こぼれ落ちるギリギリまで情報を詰め込んだ映画にしたいと。それは起きる出来事やキャラクターたちの感情もそうだし、RADWIMPSの音楽もそうだし、あるいは画面がとても綺麗だったり。余裕を持ってゆっくり咀嚼できるような映画ではなくて、何かすごいことを体験してしまったと感じられる作品にしたいと思ったんです。

ただ映画の構成としては、時間軸や、男女が入れ替わったりなど、少し複雑な面はあるのですが、それらが100%理解できなくても、何かすごいものを浴びた気がする、かつ楽しかったと思ってもらえるものにしたいと思ったんです。1回見ただけでは抱えきれないようなものを、持って帰ってもらおうという気持ちで作りました。

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ポジティブな感想でもネガティブな感想でも、そうした過剰な部分がそれぞれの方にいろんなアクセスをしたんだとしたらすごく嬉しいですね。


--公開前から新海監督はプロモーションのため、全国の公開試写の舞台挨拶に行かれていましたが、公開前の反応を見てこれほどの大ヒットを予測していましたか。

新海:いえ、社会現象と言えるようなヒットは、当たり前ですが僕も含めて誰も予測してなかったと思いますね。 

でも、ヒットしてほしいとは思っていたし、僕たちとしては良い映画ができて自信作だという気持ちはありました。製作スタッフだけではなくて、宣伝、配給のスタッフもその気持ちは共有してくれていたと思います。

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だから関係者はみんな、ヒットさせるんだという気持ちで試写回りもしていたと思います。試写での反応もとてもポジティブなものだったので、ある程度ヒットするといいよねと(笑)。そんな気持ちでしたね。

SNSの力を実感

--公開前から本当にポジティブな意見がすごく多かったというのは、僕もTwitterなどの反応から実感していました。SNSの力による後押しというのは、監督ご自身何か実感されたことはありましたか。

新海:そうですね。分析しているわけではないんですが、今回の映画が、観客が観客を呼んでくれるようになったのは、やっぱりTwitterに代表されるようなSNSの力は相当大きかったんじゃないかと思います。

SNSは、特に若い層中心だと思いますが、公開前からしばらく1ヶ月くらいの間は、本当に若い人たちに観られている映画だったと思うんですよね。実は試写会場に来ていたのも、高校生や大学生が多かったんです。

試写の感想をTwitterとかで検索して、よく見ていたんですが、若い人たちが自分たちの映画だと思ってくれている、そういう感覚は試写以前からありました。

はじめに2015年の12月に、特報を流した段階ですごく湧いたような実感はあったんですよね。それが、4月くらいに今度はRADWIMPSの主題歌を含めた予告編を出した時に、すごく爆発的に広がったような感じがあって。

その第一弾の予告で男女の入れ替わりものだっていうのを初めて見せて、キャラクターの顔も見せて、コメディ要素もあるんだというのが伝わったし、RADWIMPSの疾走感ある「前前前世」も含めて、映画全体の手ざわりが伝わって、若い人たちが自分たちの映画だって思ってくれたような、そういう実感が僕はありました。

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--それはもうまさに制作の段階から狙いだったんでしょうか?

新海:もちろんそれはある程度狙って作っているわけですけども、たとえばストーリーも音楽も過剰なものにしたのは、特に若い人たちに向けた過剰さにしようと思ったんですよね。

時々話すんですが、若ければ若いほど、自分が「何が好きか」というのが、まだ理解できていないと思うんです。

でも、年をとっていくにしたがって、自分の趣味嗜好っていうのは固まっていくので、好きな映画のタイプっていうのは出来てきますよね。

新海誠監督取材2

まだそれが定まりきっていないような人たちに向けたい、好きな映画がまだないような人たちに向けた映画になればいいなと思って作っていました。

--公開後は、今度はどんどん観客の世代が広がっていきましたね。

新海:そうですね。そこが今回意外なことでもありましたし、映画ってこういう力があるんだなって思いました。それも観客が観客を呼んできてくれたというか。

例えば、クラスで流行っているから両親にお願いして観に行くとか、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に観に行くとか、そういう広がりというのは、僕は今まで経験したことはなかったので驚きました。

今までのファンも親心を持って喜んでくれた

--新海監督には、以前から熱心なファンがたくさんいらっしゃいました。先ほど言われていたような若い人は、監督の作品を初めて見て自分たちの映画だって思ってくれたというお話がありましたが、今までのファンの方の反応はいかがでしたか。

新海:今までのファンの人たちも、「売れてよかったね」みたいに、親心のような感じで一緒に喜んでくださる方が多いなというのをすごく感じました。集大成だって言ってくださる方も多かったです。

--今までの作品の時も新作の度に全国を回られてましたよね。そういう積み重ねによって、たくさんの熱心なファンを作って来られたからだと思うんです。

新海:最初から大作をやってきたわけでは全くないので、そういうやり方しかできなかったというのもあるんですが。

個人制作から始めて、少しずつ広げてきた感じなので、それはもうやっぱり劇場側と一緒になって観客に直接会って「お願いします」、「観てくださってありがとうございました」と伝えて広げていくしかできなかったですし、それが楽しかったというのもあります。

でも、本当にたくさんの人に会って「次回作が出来たら見てくださいね」みたいな話をずっとしてきて。それは海外も含めてずっとやってきました。

だから、今回の興行の初速、最初の広がりを支えてくれたのは、母数としては過去作を見ていない人の方が多かったかもしれませんが、ベースには10年以上前から今までにお会いしてきたお客さんたちもあったかもしれないですね。

--今までの積み重ねも大きかったんですね。

新海:海外に行くと、本当にそれを感じます。積み重ねというのは、観客とでもあるし、映画館ともです。「この映画館には5年前も10年前にも来た」というくらい上映のたびに何度も行かせていただいたりとか、あるいは各国のディストリビューターとか、通訳の人とか、関係性ができている国がいくつもあるので、彼らが僕の作品を応援しようと、広げようと思ってやってくれているのも、今までの積み重ねなのかもしれないですね。

--お客さんに育てられたような感覚もあるのでしょうか。

新海:それは本当にそう思います。また見てくれた人が、Filmarksなどで何か言おうとしてくれたのが何より幸せですし、嬉しいです。

映画を見た上で、たとえそれが文句であったとしても、楽しかったというポジティブな感想でも、何か言いたくなる映画を作れたことが一番嬉しいですね。

それは観客とコミュニケーションできたってことですから。観た人とコミュニケーションできるような映画を作りたいと思っています。

--私も『ほしのこえ』の時から新海誠監督の作品を見てきましたが、今回の大ヒットは本当に嬉しかったです。そういう昔からのファンの気持ちを「親心」として、監督ご自身も受け止められていたのがとても印象的でした。

情報がソーシャルメディアで拡散していく時代は、こうしてファンと一緒に共感を生んでいくという姿勢は何より重要かもしれません。『君の名は。』が多くの人々の共感を生んだのは、作品内容の素晴らしさもさることながら、新海誠監督のファンを大切にする姿勢からも生まれているのでしょう​。

映画『君の名は。』は、全国東宝系公開中。

君の名

(C)2016「君の名は。」製作委員会

(取材・文:杉本穂高、撮影:柏木雄介)

※記事内のFilmarksの★スコア(5点満点)は2017年1月20日現在のものです。

■参照:毎日映画コンクール 公式サイト:http://mainichi.jp/mfa/

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  • YuyaAyase
    3.9
    青春の「正」と災害の「負」が映像美と要所要所の言葉の美しさ、ストーリー構築の巧さでバランスよく融合された映画。「君の名」が思い出せなくなることに、色々な作者のメッセージが込められている気もする。
  • さきち
    4.1
    記録
  • riho
    4.5
    一度で何度も泣いた映画は初めて。 あまり期待しないで観にいっていたが、予想を遥かに超えた感動と興奮。
  • たね
    4.0
    新海作品のいちファンです。 映画としての完成度は高いしとても面白かった。 ただ新海さんの作品としてはちょっとだけ自分的にものたりなかったので☆4を。 作品自体はいろんな人に見てほしい作品だとおもいます(´∇`)
  • Ssk
    3.1
    三ツ矢サイダーみたいな感じ
  • tomori
    3.0
    否定的な感想も書いているので、苦手な方はスルーしてください。 この監督の作品をいくつか見ましたが、せつなさ漂う心情ポエムと、運命の出会いというものが好きなんだろうなと思いました。 あと、東京をとても美しい都市として描くのも好きですね。 今回はその運命の出会いを今までと違ってわかりやすくハッピーエンドにした感じ。 背景と光の表現の美しさはとても好きです。 歌は、曲自体は好きなのですが、場面によってはアニメ内の話し声や音と重なって、注意がバラけるというか、くどく感じる所もありました。 自分はかなり涙もろいのですが、なぜか全く感動出来ませんでした。 悪くはないのに、ぐっと来るものがなく… 伏線も都合よく忘れたり思い出したりで無理やり繋げているように感じて所々気になってしまいました。 監督のフェチを感じるパンチラや口噛み酒、妹が口噛み酒を売ると儲ける的な事を言ったり(監督の思考を少女に言わせた感…)、知らない女の子にもらった紐を後生大事に手首に巻くかな?とか、先を知っている主人公はわかるが、話を聞いただけの友人があんな爆発に協力するか?とか、他にも細かい部分が気になりました。 後半のペンで書くシーン、名前書けよと思ってしまった。 ここ、すごく大事な所だと思うんですけど、今まで忘れないように必死だったのに、ここで名前を書かずにアレを書いたことで、ただ監督が中二な雰囲気アニメを作りたかっただけなんだろうなぁという気持ちになってしまいました。 大事なこと書かなかったのに、消えた後手のひら見ながらショック受けている事に違和感… 映像は綺麗だけど、内容はアニメだなぁという感じでつまらなくもなく、特別面白くもなく 素敵な作品なので、はまる人がいるのは納得できますが、ちょこちょこ気になる部分が降り積もって自分にはイマイチでした。
  • HirokiYano
    3.6
    雰囲気楽しもう
  • 4pm
    3.5
    公開終了前に観れてよかった。なにより映像がきれいだなぁ。ストーリーと演出は、まぁいろんなもののいいとこをうまく使ってるなぁという印象。意図してかわからないが、2人の出会い以外はいろんな意味でシンメトリーな対立構造を作ってる。男と女、都会と田舎、家族の役割、友人構成など。時間軸もシンメトリーなんだけど、二人が出会うことだけが、元に戻らない1回こっきりの出来事なんだよね。バタフライエフェクトが観たくなった。
  • yamashin
    3.0
    展開に引き込まれた。終わりにかけて少し物足りなさを感じたのが正直な感想。期待しすぎたかな。アニメとは思えない映像美は圧巻。
  • HOKUTO
    3.0
    ファンタジー
  • Tukasa
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    RADWIMPSの曲と映像は世界観が凄く合ってたけど、ストーリーは少しありきたりな感があった
  • chi
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    記録
  • こはね
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    ずっとラブコメかと思って観に行ったら30分くらい突然シリアスになって???ってなったけど面白かった。 もやもやしたまま終わるかなーと思いきや綺麗に終わってくれて良かった。
  • nzm514
    -
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  • える
    4.0
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  • 06290007
    4.0
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  • WeNeedskyfall
    2.3
    記録 レビュー詳細は放送で紹介
  • Maicooo
    2.0
    画や音楽は本当にステキです! 声優も、どのキャラクターもピッタリ。特に長澤まさみさんの声は本当に素晴らしいと思いました。 ただ、個人的にはどこかで観たことのあるストーリー。 時をかける少女などを観てきた私には、そんなに感動する?っと物語に入り込めなかったのですが、それを知らない若い世代は感動するかな、と。 すみません。 でも、音楽はずーっと頭でリピート! そんな作品です。
  • AsukaIshiyama
    3.9
    みんなそんな騒いじゃって面白くないでしょって思って観たら、面白かった。ファンタジーだけど良いね。
  • 佐分花園大学音楽同好会5年目
    -
    ありがと新海監督。 あなたは秒速5センチメートルの切なさを昇華させてくれた。 もちろん私は秒速の突き放される結末にも多くの考えさせられると思ってるんですよ。 秒速の切なさが悪いものだったなんて欠片も思いません。 秒速の結末は新海誠監督の真骨頂だと思います。 だからこそ、今回の「君の名は」の結末を見て、「これは新海誠の作品としてはいけない」だとか「新海監督は過去の自分の作品を全否定した」と思われる方もいたのでしょう。 でもそれってもったいなくないですか。 それじゃ物語が楽しめないではないですか。 私なんかは、どんな物語や製作者に対してもある程度好意的に考える質です。 だから「君の名は」の結末を見て、とても嬉しくなりました。 「秒速」のあの胸を踏み潰されるかのような苦いラスト(ですが、主人公は前に進むことができて、いいラストだったと思います)。 そして、「秒速」のラストをなぞらえていくような「君の名は」の終盤。 緊張がおさまりませんでした。 そして迎えた、秒速と対比されたかのような君の名はの結末。 正直最高でした。 秒速のあのカタルシスに「こんな形もあるんだよ」と新しい意味を示してくれた新海監督。 尊敬しました。 「安易なハッピーエンド」であるとか、「苦しい結末こそが新海監督」という意見もあるでしょう。 それもまたごもっとも。 でも私は声を大にして言いたい。 ハッピーエンドの何が悪いと! 望む結末にたどり着く為に必死に走り続けた2人がいたからこそあの結末を迎えたのだろうと。 それはいいことじゃないか、と。 もちろん監督の思想だとか、伝えたかったこともたくさんあるはずです。 でも私たち視聴者はもっと自由に、自分勝手に作品を楽しんでもいいんですよ。 感動したならそれでいいし、つまんなかったならそれでいいってことです。 長たらしくかつ理屈ぽく言ってきましたが、つまり私が何を言いたかったのかというと。 「君の名は」楽しかった!! ありがとう!!
  • りさ
    -
    記録
  • koji
    3.1
    PVみたい
  • かほ
    4.0
    予想をはるかに超える面白さだった! 今どこなのか誰なのかが途中少しわからなくなった 描かれる景色が綺麗で繊細
  • 中庭
    1.3
    『秒速5センチメートル』の二人がついに再会出来た!と感じた観客はどれぐらいいたんだろう。
  • ざくざくす
    4.3
    とてもよかった(^^)
  • みんみん
    4.2
    2017/04/23
  • 恣暮
    4.0
    あとで編集
  • ウエ
    3.5
    2016.08.27 TOHOシネマズ日本橋 うーん、期待しすぎてて普通だった SFぽい話だと「ここ辻褄があってないよな?」とか余計なことが気になってしまって、あんまり私には向いてないのかもしれない きっと理解できてないのもあるんだろうけど 相変わらずアーティストの壮大なPVだったので、RADWIMPSは最高によ宣伝になったと思う
  • ぐっすり
    3.6
    説明過多/過少で見ていてもどかしい部分が多々あるが、それを差し引いても高いエンターテインメント性と映像美に魅了される作品だった。 映画館で見といてよかった作品。
  • 綺羅百合
    -
    映像が最高に素晴らしいと思いました 現代の都会や田舎の風景をリアル再現していて、見る人を飽きさせないような作画だったと思います ただ、ストーリーの展開が少し難しく何回か見た後にストーリーがわかってきます
「君の名は。」
のレビュー(97857件)