ヒロアカ劇場版第1弾『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE~2人の英雄~』が描く“2人”とは誰のこと?原作ファンも唸らせる本作を徹底解説【ネタバレ】

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ネジムラ89

大人気アニメ「ヒロアカ」劇場版第1弾『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~』の魅力をネタバレありで徹底解説。

週刊少年ジャンプ発の少年漫画『僕のヒーローアカデミア』がTVアニメ化を果たした2016年から2年。2018年にシリーズ初の劇場版『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~』が公開されました。

デクをはじめとした1年A組の面々に加え、オールマイトや今作のオリジナルキャラクターであるメリッサに至るまで見せ場が用意されており、一本の映画の中で、原作同様多くのキャラクターの活躍を垣間見ることができる作品となっていました。そんな作品の体裁は、映画が描いている物語にも大きく重なる部分があるといえます。

改めて、そんな僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~』の描くドラマの巧妙さについてネタバレありで解説していきます。

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僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~』(2018)あらすじ

総人口の約8割がなんらかの特異体質“個性”を持って生まれる超人社会で、個性を悪用する犯罪者・ヴィランから、人々と社会を守る職業ヒーローが脚光を浴びていた。

無個性として生まれてしまった緑谷出久(デク)は、トップヒーローのオールマイトから、“ワン・フォー・オール”を引き継ぎ、夢であるヒーローになるべく雄英高校のヒーロー科の学生として勉強に勤しんでいた。

そんなデクとオールマイトは、かつてのオールマイトの相棒デヴィットの娘・メリットの招待で、巨大人口移動都市I・アイランドへやってきていた。個性やヒーローアイテムの研究成果を展示する「I・エキスポ」が開催される中、鉄壁のセキュリティを誇るアイランドの警備システムがヴィランにハッキングされてしまう。

デクは偶然、島へやってきていた雄英高校ヒーロー科1年A組の面々と協力し、人質となった人々の救出に乗り出す……

※以下、漫画「僕のヒーローアカデミア」、映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~』のネタバレを含みます。

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原作でも描かれなかった“空白の夏”とは

シリーズ初の劇場版となった僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~の見所はなんと言っても、原作漫画を手がけている堀越耕平が、キャラクター原案や総監修に到るまで携わっていることにあります。

TVアニメ発の映画化作品は、本編のストーリーとは外れたスピンオフ的な立ち位置になることが多いですが、原作者がこれだけ大きく携わっていることもあり、本作で描かれる内容は本編の物語と地続きの内容となっています。

物語の時系列は、雄英高校の教師に対して、生徒同士がタッグを組んで挑むという期末試験を終え、これから林間合宿を迎えようとしているTVアニメ第2期と第3期の間の物語となっています。この期間は原作でも描かれなかった“空白の夏”とされており、この期間に今作で描かれるような戦いが起こっていたというのは、原作ファンにとっても公開まで知ることのなかった内容となっていました。

明かされるオールマイトの過去

原作ファンも知らなかった事実といえば、この映画で明かされる大ネタがオールマイトの過去です。原作の物語が始まった時点で、オールマイトはトップヒーローとして君臨する存在と描かれており、それまでにオールマイトがどうやって現在の地位にたどり着いたのかは詳しくは描かれてきませんでした。

そんな中、大胆にもこの映画ではそんなオールマイトがまだヒーローとして駆け出しの頃の姿から始まります。本来オールマイトはマッスルフォームの姿になるときは、顔の彫りの深さから顔に影が描かれ、目元などが見えないような状態となっていました。しかし、そんなオールマイトも若い頃には、現在のような影はなく、その瞳も常時はっきりと描かれていました。

今にして思うと若かりし頃に経た苦労や経験が、オールマイトの影の深みに変わっていったのだと知ることができますが、加えて、現在のオールマイトがアメコミ風の顔になっているのは、実際に海外に渡って活躍していった上で変化していったという事実は面白いポイントです。もし、デクも海外での活動が活発化していくと、現在のオールマイトのマッスルフォームのように、影が強く描かれた“画風”に変わってしまうのかもしれませんね。

“2人の英雄”とは誰だったのか?

そんなかつてのオールマイトを支えた存在がいたことが、今作では明らかになります。オールマイトの旧友であり、ヒーローのサポートアイテムの研究者としてバディを組んでいた、デヴィッドの存在です。映画の副題となっている“2人の英雄”が秀逸で、まさにこのオールマイトとデヴィッドの姿を表している言葉でもあります。

しかし、もちろんそこには複数の意味が込められているのが、映画を追っていくことがわかります。

オールマイトの力を継承したデク、そして、デヴィッドの娘であり無個性でありながらもヒーロサポートアイテムの研究者としてデクを支えたメリッサ。“2人の英雄”は次世代の二人の姿を表す言葉でもあります。メリッサが無個性という点でも、デクにとっては自身がかつては個性を持っていなかったことから思うところは多いでしょう。無個性だったとしても人々を助ける人間であろうとする姿には、ワン・フォー・オールを受け継ぐ以前のデクの姿にも重なります。

もちろんこの“2人の英雄”とは、今作のオリジナルキャラクターとの関係性だけでなく、物語の1話から続くデクとオールマイトの二人の関係性を表す言葉でもあります。本作のクライマックスではデクとオールマイトが共闘するという大きな見せ場が用意されていますが、意外なことに本格的にデクとオールマイトの二人が共に闘うシーンはそれまで描かれてきていませんでした。能力だけでなく、ヒーローとしての精神面でもシンクロするものがある二人の勇姿が描かれるのは感動的です。

そしてオールマイトはこの物語以降、オール・フォー・ワンとの戦いを以ってヒーローを引退します。ある意味、デクとは最初で最後の共闘となってしまったわけですが、だからこそ本作のタイトルの“2人の英雄”の文字にはより大きな意味を感じるところです。

忘れてはいけないもう一人の英雄

ちなみに、この映画にはわずかながら思わぬヒーローがゲスト出演していることは忘れてはいけないポイントです。それがI・アイランドを訪れたデクが出会うヒーロー“ゴジロ”です。日本出身のヒーローでありながら、アメリカを拠点に活動しているという設定からも、ハリウッド版が展開されているゴジラをベースに描かれていることが分かるでしょう。

僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~の配給を東宝が行なっているからこそのコラボともいえますが、その鳴き声も実際の映画シリーズで使われたゴジラのものが使われているというこだわりぶりを見せています。2016年の『シン・ゴジラ』のヒット以降、ゴジラの日本での活動も活発になってきたことを思うと、ゴジロももしかすると日本での活動も増えているかもしれませんね。

加えてこのゴジロの出演シーンには、お笑い芸人の千鳥のお二人も本人役でゲスト出演もしています。現在の各所で冠番組を持つ大人気ぶりを思うと、贅沢な起用のされ方に驚きを感じます。

映画で大きなメインテーマとなっているのは“2人の英雄”の物語ですが、そこに至るまでには多くのヒーロー候補生の活躍があってのもの。デクたちだけでなく、多方面でメディアで活躍するキャラクターや人物たちが彩る姿からも、唯一のヒーローでなく、複数人のヒーローが支えている作品の在り様を象徴しているようでもあり、感慨深いです。

この映画を観て、多くの人がこの映画によって熱い気持ちが込み上げてくるのを感じたのではないでしょうか。本作が描いているヒーローの姿を観た一人一人もまたヒーローになり得る存在。作中で描かれた“デク達(ヒーロー)”に対して実はもう一人の英雄は、私たち観客と受け取ってもいいのかもしれません。

挫けそうになったり、諦めそうになった時。そして道を間違えそうになった時。この映画を思い出して、自分の中のヒーローを奮い立たせましょう。現実には、作中の人物たちのような派手な特殊能力はないかもしれませんが、気持ちや行動で何かを変えることはできることを、この映画は示してくれています。

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(C)2018「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (C)堀越耕平/集英社

※2021年8月6日時点の情報です。

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