世界中で愛されるムーミン誕生の舞台裏を描く映画『TOVE /トーベ』あらすじ&キャスト《知るとより映画が楽しくなる、4つのこと》を紹介。

映画『TOVE /トーベ』あらすじ&キャスト、知るとより映画が楽しくなる、4つの情報を紹介。

世界中で愛されるムーミンの物語。それはアーティスト、トーベ・ヤンソン自身の人生を投影して生み出されたものでした。トーベはいかにして、“アーティスト”としての自身を確立していったのか。本作は、ムーミンの物語誕生から世界中で愛されるキャラクターになるまでの約10年間を綴った物語です。

本国フィンランドでのヒットはすさまじく、公開から約二カ月にわたり週間観客動員数ランキングで連続1位を記録し、第93回アカデミー賞国際長編映画賞フィンランド代表へ選出されるなど、数々の映画賞を席巻しました。本稿では、ムーミンの物語誕生の舞台裏を綴った映画『TOVE/トーベ』のあらすじ・キャスト、知るとより映画が楽しくなるTipsを紹介いたします。

映画『TOVE /トーベ』(2021)あらすじ

第二次世界大戦下のフィンランド・ヘルシンキ。激しい戦火の中、画家トーベ・ヤンソンは自分を慰めるように、不思議な「ムーミントロール」の物語を描き始める。やがて彼女は爆撃でほとんど廃墟と化したアトリエを借り、本業である絵画制作に打ち込んでいくのだが、著名な彫刻家でもある厳格な父との軋轢、保守的な美術界との葛藤の中で満たされない日々を送っていた。それでも、若き芸術家たちとの目まぐるしいパーティーや恋愛、様々な経験を経て、自由を渇望するトーベの強い思いはムーミンの物語とともに大きく膨らんでゆく。そんな中、彼女は舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーと出会い激しい恋に落ちる。それはムーミンの物語、そしてトーベ自身の運命の歯車が大きく動き始めた瞬間だった。

映画『TOVE /トーベ』キャスト紹介

※()内 役名

アルマ・ポウスティ(トーベ・ヤンソン)

世界中で愛されるムーミンの作者。画家・小説家・漫画家・イラストレーター・詩人など多方面で才能を発揮する。

クリスタ・コソネン(ヴィヴィカ・バンドラー)

トーベと出会い、激しい恋に落ちる舞台演出家の女性。ムーミンの物語が広く世に出ていくきっかけとなる人物。

シャンティ・ローニー(アトス・ヴィルタネン)

トーベの恋人であり、良き理解者。政治家、哲学者、作家、ジャーナリスト、詩人など多様な顔を持つ。

ロベルト・エンケル(ヴィクトル・ヤンソン)

トーベの父であり、彫刻家。トーベとは政治や社会情勢、芸術家の在り方などで度々衝突する。

カイサ・エルンスト(シグネ・ハンマルステン=ヤンソン)

トーベの母であり、挿絵画家。トーベを優しく見守り続ける、かけがえのない人。

ヨアンナ・ハールッティ(トゥーリッキ・ピエティラ)

トーベとは1955年に出会い、後に生涯のパートナーとなる画家。男性優位の美術界において、フィンランド美術史に名を残す数少ない女性として活動初期から注目されていた。

知るとより映画が楽しくなる、4つのこと

ムーミンの物語が誕生したのは、戦時下のフィンランド・ヘルシンキ。本作は防空壕に身を潜めるトーベが、自身を慰めるためにムーミンの物語を描く所から始まります。1944年の9月に戦争は終わり、街は遊びや恋に仕事を求めて彷徨う人々で活気づき、トーベもまたそんな芸術家の一人でした。そんな激動の時代に出会った人々を通して“アーティスト”としての自身を確立していき、トーベの心と共にムーミンの物語は大きく成長していきます。愛と孤独、自由を最も愛したトーベが、ムーミンの物語を生み出した背景にはどんなドラマがあったのでしょうか?

ひょんなことから生まれたキャラクター、ムーミン

実はムーミントロールが生まれたのは、本作で描かれるずっと前のこと。10代の頃、美術の学校に通うために寄宿していた親戚の家で夜中につまみ食いをしているところを叔父さんに見つかり、「レンジ台のうしろには、ムーミントロールといういきものがいるぞ。こいつらは首筋に息を吹きかけるんだ。」と言われたことが強く印象に残り、その事を絵日記に描いた時のおばけのようなものこそが、一番最初のムーミントロールでした。

なぜムーミンの物語はスウェーデン語で書かれているのか

トーベの家系は「フィンランド・スウェディッシュ」と呼ばれるスウェーデン語を母語とする家族であったため、彼女はフィンランドで生まれながらも、スウェーデン語に長けていました。1323年から1809年までフィンランドはスウェーデンによって統治されていたため、スウェーデン語はフィンランドでも公用語として使われています。しかし、現在のスウェーデン語系人口は約5パーセントほど。そういった背景で、ムーミンの物語の原作はスウェーデン語で書かれいるのです。

キャラクターのモデルとなった、トーベに影響を与えた人たち

ムーミンの物語にでてくるキャラクターのモデルとなった人物が、本作には複数登場します。そのうちの一人は、あのスナフキンのモデルとなったトーベの男性の恋人 アトス・ヴィルタネン。出会った当時の彼は既婚者で、妻との関係はオープンリレーションシップでした。彼は非常に論理的で愛情豊かな男性で、トーベの一番の理解者だったのです。

スナフキンの哲学的で孤独を愛するキャラクターは、そこから来ているのでしょう。そんな彼がよく被っていたハットを、スナフキンが受け継いでいます。そして、いつも優しくムーミンを見守るムーミンママのモデルは、トーベの母シグマだと言われており、トーベを支え沢山の愛を注ぐ母親の姿は、ムーミンとムーミンママの関係を見れば大きく頷けます。

また、劇中にでてくる「トフスラン(Tofslan)」と「ビフスラン(Vifslan)」は、トーベの初めての同性の恋人、ヴィヴィカと自身を投影したキャラクターでした。それぞれの頭文字「To」と「Vi」を織り込んで名付けられています。彼らは「たのしいムーミン一家」に登場し、ムーミン谷へやってきます。二人の間だけで通じるあべこべな言葉を話し、うっとりするほど美しい赤いルビーの王様を運んでいるのです。トーベとヴィヴィカが交わした手紙には、この二人が使うあべこべ言葉と同じ言葉が用いられており、秘密裏に愛の言葉を交わしたのでした。

同性愛とジェンダーロール

本作で描かれるヴィヴィカとの激しい恋は、当時のフィンランドでは犯罪でした。同性愛は精神疾患とみなされ、1971年までは違法だったのです。

当時のトーベが先進的な芸術家として、またはLGBTQとして、既存のジェンダーロールやセクシャリティに対する反抗は、自身の創作物やムーミンの物語の中にも散見します。冒険好きなパパ、優しいママなどは登場するものの、周りのキャラクターたちを見渡してみると、ドレスを着ているヘレムンやホムサのように、ジェンダーが定義されていないキャラクターが複数登場します。他にも、ミイの母親のミムラ夫人は36人もの子供たちを育てあげていますが、父親がわかっているのは、ヨクサルというスナフキンの父親の一人だけ。既存の役割に囚われたくない、自由を愛する彼女の思いがそこにはあったのです。

男性にも女性にも惹かれ、沢山の恋をしてきたトーベは、本作の終盤で出会う女性トゥーリッキと生涯を共にすることとなります。そんな彼女もまた、トーベの創作へ強い影響を与えた人物となりました。時代の先駆者であり、偉大なアーティストであるトーベは今日でも、世界中の性的マイノリティのビック・アイコンとして愛され続けています。

愛と自由を求め続けたトーベの半生を通して、きっとあなたも勇気づけられるはず。この秋、是非劇場でご覧ください。

TOVE/トーベ』information

上映時間:103分
公開日:2021年10月1日(金)公開
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx-v.com/tove/
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