映画『マリグナント 狂暴な悪夢』あらすじ&見どころは?ネタバレありで徹底レビュー!

映画館が非日常じゃなくなってきた

シライシタイチ

映画『マリグナント 狂暴な悪夢』あらすじ!本作が話題になっている理由は?ネタバレありで見どころを徹底レビュー。

21世紀のホラーをけん引してきた最重要監督の一人ジェームズ・ワンが、ジャンル映画の最前線にカムバック!

5年ぶりのホラー映画にして、キャリア最高傑作、そしてホラー映画の歴史を変えるとまで言われる高評価を受けている『マリグナント 狂暴な悪夢』の見どころをネタバレありで徹底解説します!

マリグナント 狂暴な悪夢』(2021)あらすじ

生い立ちに特殊な事情を持つ女性・マディソンは、夫・デレクと平穏に暮らしていたが、それまでに複数回子供を流産していた。再び妊娠するも、デレクと口論になり壁に頭を打ち付けてしまうマディソン。そして、その日の夜、デレクは何者かに殺害される。その現場を目撃し再度流産してしまったマディソンは、悲しみに暮れる間もなく、夢の中でリアルで幻覚かのように殺人現場を疑似体験するようになる。

義理の妹のシドニーと共に、自分の過去を探るマディソンは自分と血を分けた双子“ガブリエル”の存在に行き着くも、警察から一連の事件の犯人として疑われ、どんどん追い詰められていく。一体彼女の身に何が起きているのか、夢に出てくるガブリエルは今どこにいるのか、謎が明らかになるとき、さらなる恐怖の幕が上がる……。

先が読めそうで読めない不思議なホラー

マリグナント 狂暴な悪夢』は絶賛の嵐とは裏腹に、ホラー映画をよく見る人にとっては既視感のある場面が連続する映画です。

映画が始まってすぐに映し出される研究所。

邪悪な特殊能力を持つ“何か”が暴れだして、研究所の職員や博士が大パニックになるというのはホラーだけでなくSFやアメコミヒーロー映画でもお約束すぎる場面。

そしてジャクリーン・マッケンジー演じるウィーバー博士が、その邪悪な“何か”を「切除」するといい、その後に「Malignant」のタイトル画面に映し出されると、手術で“誰か”の体から“何か”を取り出すシーンをバックにしたオープニングクレジットが流れ始めます。

本作を観終わった観客は、この序盤ですでに結構重要なネタバレがされていたことに気づくのですが、不思議と初見で観ているときはわからないのです。筆者は、このオープニングクレジットがあまりにも『セブン』っぽく撮られていたことで「ジェームズ・ワンでもいまさらこんな安易なオマージュするんだな」と少し半笑いになっていて、そこに映し出されているものがただの「イメージ映像」だと決めつけてしまっていました。

また、その後始まる現在のマディソンの生活では手際よく最小限に、結婚相手のデレクが夫として完全にアウトな人物であることや、すべての惨劇の引き金になる彼のある行動がちゃんと描かれているのですが、それも初見では気づきにくいのが巧みなところ。

マディソンとデレクの住んでいる一軒家が無駄に不気味なうえに、夫が殺された後に彼女が怯えて家中のカーテンや窓および扉を閉めて回るシークエンスをワンシーンでとらえたとんでもないカット(セットの上にカメラを設置したアナログな手法とのこと)もあるので、「この家自体に何か良くないものがあるのかな?」と映画をよく見ている人ほど先入観が構築されます。

さらに誰なのかわからないとある中年女性がある部屋に監禁される場面や、前述の「研究所」にまつわる人物たちが殺されるシーンなどもあえてスラッシャーホラーでよくある撮り方をしているせいで、とにかくみんなの共通の敵である「殺人鬼」がいるという認識が観客にも刷り込まれてしまうのです。

その一方で、マディソンとシドニーが育ての親に過去の話を聞くと、マディソンが「ガブリエル」という謎の存在と会話をしていたこと、過去には施設にいたことが明らかになります。

不気味な家、明確に存在する殺人鬼、そして幼少期のイマジナリーフレンド、出生の秘密、超常現象を信じてもらえず疑われる主人公、などなどいろんなホラーでありがちな要素がてんこ盛りなのですが、だんだんと「あれ?でもこの話どうやって収集するの?」と困惑してしまうのも本作の不思議なところ。いまいちピースががっちりハマっていないように思えてくるのです。

しかし、本作は観客をけむに巻くようなことはせず、ある最高のタイミングで決定的なネタばらしをして度肝を抜いてきます。

※以下、『マリグナント 狂暴な悪夢』のネタバレを含みます。

 

“ガブリエル”のホラーアイコンとしての革新性

さて、ここから単刀直入にネタバレしてしまいますが、劇中で人を殺しまくっていた“ガブリエル”はマディソンの双子の兄であり、完全な体を持たずにマディソンと背中部分で結合されていた恐ろしい姿の奇形腫でした。

ガブリエルは凶暴な性格に加え電子機器を操る能力も持っており、成長につれてマディソンの体に大きな負担をかけるようになってきたため、研究者たちによって手術で彼女の後頭部に物理的に封印されましたが、20数年後、マディソンが夫に壁へ叩きつけられたせいで目を覚ましたのです。

ちなみにタイトルの「Malignant」はそのまま「悪腫」という意味で、英語に詳しい人や本国の人々はタイトルでネタがわかってしまうのではないかと思いますが、SNSの感想を見る限りでも「悪腫」というのは何かの比喩だと考えていた方が多いようで、ドストレートに本当に悪腫が悪事を働く映画だとは予想できなかった様子。

本作は何が原因で殺人事件が起きているのかが終盤まではっきりわからないミステリー要素もありつつ、謎が解けると同時にガブリエルというわかりやすくキャッチーなホラーアイコンが登場するという点が革新的です。

これまでのアメリカ映画のホラーアイコンはレザーフェイスやジェイソン、マイケル・マイヤーズ、など顔も何を考えているのかも目的もわからない殺人鬼が多かったのに対し、ガブリエルは見た目も殺人の目的もはっきり具体的です。

ビジュアルの気味の悪さはもちろん、登場すると同時にマディソンの手足が逆方向を向いてすさまじい身体能力と超能力でアグレッシブに暴れだすインパクトは絶大。

マディソンが収監された拘置所でガブリエルへと変貌し、ほかの女性囚たちを殺しまくる場面はホラー映画史に残る名場面でしょう。

さらに、殺人動機は自分を封印した学者たちへの復讐と、マディソンが大事にしている人々を排除することとハッキリしており、この復讐心およびマディソンへの執着心が強烈でゾワゾワします。

ちなみにガブリエルは自分の思っていることも目的もけっこうベラベラしゃべる「おしゃべり体質」なのも特徴で、こういう点はフレディ・クルーガーやチャッキーに似ています。

とにかくマディソンが自分以外の人間とつながりを持つのが嫌(マディソンの過去の流産もガブリエルのせいでした)というある意味「寂しがり屋」なのも相まって、存在自体が倫理的にギリギリアウトなキャラなのにどこか可愛く思えてしまうのも見どころです。

怖さはもちろん、いざ暴れだすとカッコよく、後々思い返すと可愛くも見えてくる名キャラクター、ガブリエルを生み出した時点で本作は「勝った」と言えるのではないでしょうか。

アクションとコメディ、感動も混ざって見やすいホラーに

マリグナント 狂暴な悪夢』は、R-18指定であり、公開前から「とんでもないホラーが来る」と噂になっていたこともあって「怖すぎるんじゃないか」「見たらトラウマになるんじゃないか」と心配されている人もいるかもしれません。

しかし、本作は前述のとおり、最後はこの上なくキャッチーな”ガブリエル君”が登場して大暴れしてくれるわかりやすい作品であり、マディソンとガブリエルの双子兄妹の長年の因縁にも決着がつくので後味は決して悪くないです。

被害者にもそこまで同情するような人もいないし、ゴア描写も派手ではありますが痛さや生理的嫌悪感をもたらすようなものではないので、ある程度耐性があるなら問題ないでしょう。

逆に言うと、ガブリエルの正体が完全に明かされてからはホラーとしての怖さは目減りしてしまうのですが、そこから先はさすが『狼の死刑宣告』に『ワイルドスピードSKY MISSION』や『アクアマン』などのアクション作品も成功させてきたジェームズ・ワンというべきか、リミッターの外れたスーパー殺人鬼vs警察官たちの大立ち回りが始まるので、今度はアクション映画としても楽しめます。

それに本作はブラックコメディでもあります。

具体的に書いてしまうと面白さは損ねてしまうので伏せますが、「え?そのタイミングでそこから落ちてくるの?」、「そこは普通に逃げまくるのかい!」、「こいつらわかりやすく死亡フラグ立ててくれるな~」、「綺麗なフォームで○○を投げるな~」など、ホラー展開と残虐描写の合間になんだか笑えてしまう奇妙な描写が挟まれているのがたまりません。

劇場でも思わず笑ってしまうでしょうし、レンタルが始まったらみんなでツッコミを入れながら見たら最高に楽しいはずです。

そして最後にはずっと孤独でだれかとのつながりを求めていたマディソンが、「血ではなく心でつながった大事な人を見つける」感動の物語にもなっていて、彼女の最後の成長には胸が熱くなります。

という風に、『マリグナント 狂暴な悪夢』は、一粒で何度も味が変わるサービス精神に溢れたエンタメ作品になっています。前述のとおり、初見ではストーリー展開が読めずどこに連れていかれるかわからなくなってきますが、その先に待っているのは圧倒的カタルシス。あとからじわじわ怖くなってきたり、日常生活に引きずるようなタイプのホラーではないので安心して見に行きましょう。

マリグナント 狂暴な悪夢』の続編はありうる?

ここまで『マリグナント 狂暴な悪夢』を絶賛してきましたが、本作はアメリカでHBO Maxで劇場公開と同時にストリーミング配信だったこともあり、過去のジェームズ・ワン作品と比べるとかなり寂しい興行収入になってしまいました。

現実的に考えると、「インシディアス」や「死霊館」のようにシリーズ化していくのは厳しいでしょうし、そもそもガブリエルの存在の種明かしがキモの作品でもあったので、ホラーとしてフランチャイズ化するのは難しいはずです。

ただ、ここから先はただの筆者の希望ですが、ガブリエル君は超極悪ではあるもののマディソンのことが大好きで、おしゃべりで分かりやすい性格でもあり、能力もある意味ヒーローっぽいので、何か別の敵を用意して『ターミネーター2』や『ヴェノム』みたいに今度は味方になって戦う……なんて続編は作れないでしょうか。

またガブリエルとマディソンは15歳の少女がレイプされて生まれた双子であり、劇中で父親が誰かは明言されていません。

母親に特殊能力があるようには思えない描かれ方をしていたので、もしかしたらその最低のレイプ魔の父親のほうに何か謎が……と探っていくような続編も期待してます。

オールジャンルに対応できるジェームズ・ワンなら、やってくれるかも……そんな淡い期待を抱いて続報を待つこととしましょう。

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※2021年11月26日時点の情報です。

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