『ゴーン・ガール』もカップルで見たらヤバイ映画として有名ですが、個人的には今回紹介する『フレンチアルプスで起きたこと』の方がヤバイと思いますよ。
『ゴーン・ガール』は現実離れしてましたが、『フレンチアルプスで起きたこと』は淡々とした日常に潜む危機を描いていてゾッとするんですよ。
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家族旅行でスキーに来たら雪崩が起きてしまいます。その時なんとパパが家族を置いて1人で逃げちゃいます…。しかもスマホはしっかり持って…。ママは子供2人をしっかりと抱いて守ったというのに…。
結局みんな家族無事でしたが、ママは1人で逃げたパパに不信感を抱くようになります。期待される〝男らしさ〟を実現できなかったことで起きる家族の崩壊を描いた笑えて怖いコメディ映画なのです。
では、期待される〝男らしさ〟を発揮できなかったパパの痛々しい4つの自己防衛をご確認いただきましょう。
①記憶を塗り替えちゃう
パパは「自分は逃げてない」と主張します。これは嘘をついてるんじゃなくて本当にそう思い込んでいるんです。人間の記憶は曖昧なもので、自分に都合の悪い記憶は無意識で塗り替えてしまうことがあるそうです。「じゃあ、あの時どういう行動をとったの?」と聞かれても、「いや、とにかく逃げてはないんだ。僕は逃げるような人間じゃないから。」と全然理屈の通らないことを言ってその場しのぎしてしまいます…。
②大人ぶってみる
ママは責めたいんじゃなくて正直に認めて欲しいだけなんですが、「そんなに騒いでないで落ち着けよ」と言わんばかりに大人ぶった態度を取ります。これがまたイラつかせるんですけどね…。
③理屈攻め
はい、来ました、理屈攻め。男性の得意技でしょうかね。しかも男友達とダッグを組んで…。
④子供のように泣きわめく
こういう議員さんいらっしゃいましたね。あれは2014年の出来事でした(もう3年も前のことなんですね)。追い詰められてどうしようもなくなって「泣きわめく」。退行の一種。泣きわめくことはなくても、キレたり暴力を振るったりするのもある種の〝退行〟と言えるでしょう。
期待される/期待してしまう〝男性性〟
父親には「家族を守る強いリーダー性」が期待されています。しかし実際は、危機的状況に陥った時に女性よりも男性の方が自分の身を守ることを優先する傾向にある、という調査があるらしいです(監督によると)。危機を無事に乗り越えたとしても、それが原因で離婚するケースも少なくない、とのこと。
男性と女性をハッキリと区別して論じるのは好きではありませんが、社会に期待される男性像や女性像になる努力をしなきゃいけなかったり、そうなれずに苦しんだりすることはよくあることかと思います。
今作でもパパだけでなくママ自身も苦しみます。自分の中に「伝統的な父性と家族像」があるから苦しんでいるんだと気づくのです。だからママは敢えて、家族旅行中にサッと1人でスキーに行ったりします。時には家族から離れられるような伝統的な価値観に縛られない女性になりたい、と思って試みたこと。
ちなみに僕はラストがすごく好きです。今まで散々「男いじめ」をしておいて、ラストは女性に対してもチクリと一撃食らわせます。「君の正義感とか使命感ってさぁ…。ちょっと暴走する時あるよね…。」と。
この『フレンチアルプスで起きたこと』、男女カップルでは観ない方がいいでしょうね。逆に、自分たちの関係がいかに強固であるか自由であるかを試すために観るとか、別れさせたいカップルに「オススメだから観て〜♪」っつってDVDをプレゼントするのもいいかも知れません(ダメ、ゼッタイ)。
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※2021年11月28日時点のVOD配信情報です。