密室ゾンビパニック『新感染 ファイナル・エクスプレス』は父親の成長を描いた感動作!

夢見る三十路

柳本マリエ

無類のゾンビ好きとして(ごく一部の間では)知られる私。ゾンビといえばショッピングモールや病院あたりで発生するのが相場となっているにも関わらず、この韓国発の『新感染 ファイナル・エクスプレス』は時速300kmで走る完全密室の特急列車内で感染が広がってしまうという、最もゾンビに会いたくないシチュエーションで物語が始まります。

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舞台はソウル発プサン行きの特急列車KTX101号。発車直前に感染者が乗り込んだことにより、疾走する車内で爆発的に感染が広がってしまう。そこに居合わせたのが、別居中の妻のもとへ向かう父親ソグ(コン・ユ)と娘のスアン(キム・スー・アン)。ほかにも妊娠中の妻を気づかう夫や老姉妹、高校生のカップルなど、ごくごく普通の乗客たちばかりだった。

と、ここまではいわゆるゾンビ映画! なのですが、この映画の最大の見どころはダメ父親ソグの人間としての成長過程。前半と後半でソグの印象は180度変わり、父として成長していく姿に涙なしでは観ることができませんでした。ここまで感情移入をしてしまったのは、おそらくソグが誰でも起こりうるであろう人間のダメな部分を多く持ち合わせていたからかもしれません。

before

いかにも「ザ・正義感」のようなキャラクターではなく人間味溢れる描写が自分自身と重なるからこそリアリティがあり、また、応援したくなってしまうのです。危機的状況下で、自分や身内がゾンビになってしまうのではないかという恐怖心の中、他人を思いやることができるほどキャパシティの大きい人なんてそうそういないのが現実。

しかしながらソグはサンファ(マ・ドンソク)やその妻ソンギョン(チョン・ユミ)はじめ、他人と協力することで状況を打破できることを体験し、そこから大変貌を遂げることになるのです。 腕っぷしの強いサンファを筆頭に、感染者だらけの車両に乗り込む理由はただひとつ。娘を守るため! そのがむしゃらに奮闘する姿にただただ涙が溢れました。

after

そして、ソグの成長とともに浮き彫りになるのが最後まで自分のことしか考えることができなかった大多数の人々。その対比や彼らの結末も必見です。

この映画は本格アクションのゾンビ映画と上質なヒューマンドラマの2本を一気に見たような、そんな感覚になるほどの見ごたえたっぷりの映画。 終始緊迫した状況の中、クスッと笑ってしまうような休憩ポイントのバランスも非常によいので普段ゾンビ映画をあまり見ない人にもオススメできます。見終わったあとはきっと、大切な人を思い浮かべてしまいますよ。

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※2022年6月29日時点のVOD配信情報です。

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  • さかな
    -
    新幹線だけで映画が展開できるの!?と思ったけどしっかり面白かった マ・ドンソク話題になってるのは聞いてたけど存在感ある俳優さんだったな コン・ユはイカゲームでしか観たことなかったから、表情豊かなのが観れて良かった こういう映画観た時に「何を選択するのが最善か?」て気になるポイントだけど その度に『ミスト』思い出すからあの作品は名作だったんだなと思う ゾンビって映画によって色々設定が違って面白いな〜と思ったので起源など色々調べてみようかな
  • y
    4
    記録
  • 北村匠海
    3.3
    なんかイライラした
  • michiko
    3.5
    まさかゾンビ映画で泣いてしまうとは。 父と娘の愛、妻と夫の愛、それらの非常に熱い想いに感動してしまった。 始まりから終わりまで途切れることのないこの緊張感。新感線という閉鎖空間の中での話でよくコレほどまでバラエティ豊かなシチュエーションを作れたものだ。その展開とスピード感に驚かされる。 そして絶えず味わえるこのハラハラ感。それはただゾンビが怖いとかアクションが凄い等他のゾンビ映画でも説明できるものでは無い。主人公とそれを囲む各キャラクター性が見事であり、庶民的では無い腐った主人公が彼らと共にする事で人として普遍的な成長をしていく。そこに我々は自分を重ね、彼らに助かって欲しい、1人でも多く無事な状態でエンドロールを迎えて欲しい、そう願わざるを得ない、感情移入せざるを得ない状況に追い込まれる。 韓国産のゾンビ映画をヒットさせるというこのパワー、熱意、愛情、様々なチカラを我々に見せつけ、そして与えてくれる作品。
  • 帰宅部ずんだもち
    5
    このスピード感こそ!ゾンビですね!
新感染 ファイナル・エクスプレス
のレビュー(124240件)