大ヒット間違いなし!『散歩する侵略者』黒沢清監督のあの“ダークファンタジー”を復習しようよ!

映画観て、絵描いて、ハイッ!

フクイヒロシ

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黒沢清監督の新作映画『散歩する侵略者が9月9日(土)より公開されています。オールスターキャストによる侵略SFということで大ヒットが期待される話題作です。

黒沢清のヒット作と言えば2016年公開のクリーピー 偽りの隣人』。実在の一家殺人事件をイメージさせる小説原作を黒沢清らしい自由さで映画化したものです。今回はこの映画を紹介します。

監督もインタビューで答えていますが、この映画はダークファンタジーです。実際の事件をリアルに描写したものではなく、緻密で長大な原作を大胆にカットして登場人物の紹介も最低限に抑えられています。ただただ変な人たちがもっと変な人に引き込まれて廃人になっていくという映画です。それでも「隣が何をやっているのか知らない」現代の住宅事情において、自分が巻き込まれかねない事件であるという恐怖に満ちているのです。

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香川照之以外もみんなオカシイ……

香川照之クリーピー 偽りの隣人では本物のサイコパスを演じていますが、他の人たちも実はみんなオカシイんです。

西島秀俊(大学教授/元刑事)
西島秀俊は香川照之と対立する役柄ですが、この人もだいぶサイコパスだと思います。犯罪心理学の教授であり、人の心理状態をすぐに分類したがるくせに自分の妻の心の闇を見抜けずにいます。自分を正義だと信じて川口春奈演じる事件被害者を追い詰めるシーンはまさしく狂人。それでいて妻(竹内結子)に「君を全力で守る!」なんて白々しいセリフを腹式発声で言い放つんだから結構気持ち悪い。

東出昌大(刑事)
原作では女癖が悪いなどの背景が描かれたキャラクターだったのにバッサリ切られて、事件に取り憑かれた刑事を目をギョロギョロさせて演じています。謎の借金があったようだし描かれていない部分が多いだけに不気味。

竹内結子(西島秀俊の妻)
料理上手の美人妻だけど、「ご近所づきあい」への執着の強さが怖い。笑顔で有能な妻を演じながら実は今の生活に不満だらけというスタンスが恐怖。こういう人いるでしょ、いっぱい。

川口春奈(事件被害者)
事件のことを思い出して語る時、すんごい動き回る。全然椅子に座っててくれないから、西島秀俊も興奮して追い詰めちゃって結構乱暴なシーンに。西島秀俊の狂気を引き出す役目だけに、この子自身もちょっと変。

マックス(犬)
西島秀俊と竹内結子が飼っている大型犬。どういうわけだか香川照之に懐いていて、香川照之は残忍な行為をした後でも尻尾降って喜んで近寄っちゃう。犬なんだからもうちょっと野生の勘みたいなもので香川照之の殺気を感じてくれないと……。

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ダークファンタジーらしい描写

実在の事件を想起させるものだったり「隣人」という現実性の高いモチーフの映画ですが、黒沢清特有の“違和感”は各所にあります。この映画にサイコミステリーの枠に収まり切らない魅力を感じるのはこの演出のおかげでしょう。

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今回の記事では香川照之には触れませんでしたが、ニューヨークタイムズで「第89回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされるべき5人」の中にトム・ハンクスらと共に名を連ねたほどの世界レベルの怪演ですので、ぜひ観てくださいね。

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※2022年6月27日時点のVOD配信情報です。

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  • ぽん
    2.5
    で、何?って感じの話。サイコ役に香川照之は敵役だし人を洗脳していく演技とか知らないうちに引き込まれてっちゃうような人を演じるのはすごく上手だった。でも結局何が言いたいの?って思うような終わり方だった。
  • テツ
    3
    誘拐監禁して薬物を注射し洗脳する凶悪犯に香川照之は適任でした。 それにしても恐ろしいストーリーです。 隣にサイコパスが住んでたら怖いね。 引越の挨拶に手作りチョコレートを持っていく感覚が分からない(笑)。
  • YokoOishi
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    記録用
  • みゅうき
    -
    きらい
  • lien
    3
    サブタイトルでネタバレ踏むの良くないと思うんだけど・・・ もう2度と観たくない。 犬好きさん、注意です。 気になる人がいると思うのですが、犬はぎりぎりセーフです。 他人の生活に寄生し、その家族の全てを奪い、自分では罪を被らず、その乗っとった家族内で殺人をさせるところが北九州で起きた事件を彷彿とさせた。後で調べたらやっぱり、北九州連続監禁事件を元に再編されたよう。 同じような作品だったら、誉田哲也さんの「ケモノの城」という小説も本事件が元になった作品があるかな。 隣人がもしもサイコパスだったなら・・・ と考えたけど、私は洗脳されるんじゃないか、という結論に至った。 まず、人を疑う目を常に持ち続けるには神経がいるし、あそこまで家族の時間を侵食されてしまったなら、もう後戻りはできないのではないだろうか。 ずっと救いがない。 隣人ガチャ失敗の究極。 西島秀俊さん、竹内結子さんはずっと笑っていてほしい。 娘役をさせられ、後始末をしなければいけなかった子が本当に可哀想だった。 従順にならなければ、次殺されるのは自分の番かもしれないという極限の緊張感の中で生活するのは絶望しかなかったと思う。 スキャンダルによって、香川照之さんが実生活でも、同じようにパワハラをしていたことが明るみに出ているから、さらに人間の怖さ、人は見た目やその場限りであればなんとでも言える人怖感が助長されていた。 1番恐怖だったシーンは、 袋に死人を詰めて、臭い消しと腐敗を防ぐためにアルコールを掛け、真空パックにして埋めた場面。
クリーピー 偽りの隣人
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