映画を彩る狂わせガールたち!魔性の女の魅力にハマる

映画も音楽も本も好き。

丸山瑞生

tamioboy

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本日9月16日公開、大根仁監督の最新作『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』。
奥田民生を崇拝する雑誌編集者の主人公と、ファッションプレスの美女との出会いを描いたラブコメディです。原作は渋谷直角の同名漫画。「力まないかっこいい大人」奥田民生に憧れる雑誌編集者・コーロキを演じるのは、妻夫木聡。コーロキが惚れる、天海あかりを演じるのは、水原希子

妻夫木聡のサブカル男っぽい雰囲気、水原希子のオンナらしさをしっかりと武器にしている潔さ。どちらもぴったりのハマり役です。また、映画での音楽の使い方に定評のある大根監督らしい、物語の随所に奥田民生の楽曲を盛り込んでいるのもみどころのひとつ。

古今東西、あらゆる映画に魔性の女は現れます。
本作の天海あかりもそのひとりになることでしょう。
今回は『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』になぞらえて、魔性の女の映画をご紹介です。

二階堂ふみの魅力を描き出した『私の男』

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監督は、熊切和嘉。代表作は『海炭市叙景』や『夏の終り』など。熊切監督の作品は、暗い。内容も暗いですが、映像的にも暗いです。『私の男』の冒頭も夜中の津波から始まり、本作の主人公・花が幼いころに家族を失うところが描かれます。また、本作はその場の空気が匂い立つような映像も非常に印象的です。物語の終盤でのとある人物らのもみ合いのシーンはみどころのひとつでしょう。

天災で家族を失い、遠縁の男・腐野淳悟に引き取られた少女・花。物語はそれから10年後を舞台に描かれます。腐野淳悟を演じるのは、浅野忠信。花を演じるのは、二階堂ふみ。いわゆる「禁断の愛」の物語なので、ふたりの関係性はわかるのですが、それらしいところををはっきりと見せずとも、その関係を匂わせているのがすごいなと思います。

たとえば、会話や仕草。そこからただの家族とは言えない異質な空気感が映像から伝わります。そして、それは二階堂ふみの功績が大きい。長いスパンの物語のなかで、花の成長を巧みに演じ分け、それが二階堂ふみという女優の個性を存分に引き立てているのでしょう。バイオレンスな映画でも、エロティックな役どころでも、いろいろな意味での刺激的な役を演じることが多く、それが現在の二階堂ふみらしさかなと思います。

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愛する娘は、バケモノでした。小松菜奈の名を世に知らしめた『渇き。』

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監督は、中島哲也独特の色彩感覚、心身にグサグサと刺さる遠慮のない演出。非常に危うい物語を絶妙なところでエンタメに仕上げるセンス。それが中島監督の特徴かと思います。『嫌われ松子の一生』の物語をミュージカル風に描くのは、この監督以外には不可能でしょう。また、前作『告白』からはバイオレンスな印象が増しました。それは精神面と、肉体的な面の両方で。それらをエンタメのギリギリのラインで描いたのが『渇き。』なのだと思います。

容姿端麗で、学校ではマドンナ的存在の加奈子が失踪。加奈子の父親・元刑事の藤島は別れた元妻から頼まれ、娘の行方を追う。藤島は娘の交友関係を辿るうちに加奈子の本質を目の当たりにすることになる。藤島を演じるのは、役所広司。激情に駆られ、暴走する男を好演。

バケモノと称される美少女を演じるのは、小松菜奈。いくつもの作品に引っ張りだこの彼女のスタートは本作からです。若いながらも妖艶な雰囲気を湛え、前項の二階堂ふみにもその雰囲気は感じられますが、彼女とは異なるタイプの妖しさを持つ女優のひとりでしょう。

女子高生には、特有の「わからなさ」があると思うのですよね。同年代だからこその共通項。彼女たちにしかわからない感覚。それは、本作の加奈子に限らず、多くの男性が女性に感じるところではないでしょうか。裏では何をしているかわからない。本音を話しているのかわからない。そして、加奈子の父親・藤島も彼女がどんな人間なのかわからない。

もちろん、どんな人間にも本性の知れないところはあるのですが、その「わからなさ」を効果的に描けるのは思春期の女の子だろうなと思います。ミステリアスな佇まいの小松菜奈はそんな役どころにぴったりです。ケラケラと笑うシーンが印象的で、さわやかな清々しさと怖さが混在しているように見え、映画に初出演ながらに見事な怪演です。

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ふたりの悪女が男を生き地獄へと叩き落とす『ノック・ノック』

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監督は、イーライ・ロス新世代のホラー映画監督と言われています。イーライ・ロスの名を広めた『ホステル』や、食人族の住む森に迷い込んだ若者たちの末路を描いた『グリーン・インフェルノ』など、ショッキングなゴア描写(過度な流血や血しぶきなどの残虐な表現)が持ち味です。正直、これらの作品はホラー映画が苦手なひとには耐えられないでしょう。

ふたりの女性を助けたことから、一晩の過ちを犯す主人公のエヴァン。悲運な生き地獄を味わうことになる彼を演じるのは、前年に公開の『ジョン・ウィック』で見事な復活を果たした、キアヌ・リーブス。最強の殺し屋から一転、本作ではふたりの女性に精神的に追い詰められる役どころ。

悪女を演じるのは、ロレンツァ・イッツォアナ・デ・アルマスのふたり。ロレンツァは、イーライ・ロスの奥さん。前述の『グリーン・インフェルノ』にも出演。アナはキャリアは浅いですが、公開が待たれる『ブレードランナー 2049』にも出演。今後が楽しみな女優のひとりです。

ゴア描写に定評のある、イーライ・ロス。しかし、本作はこれまでの作品とは趣きが異なります。肉体的に痛々しい描写は抑えめで、かわりに精神的に追い詰められる姿が描かれます。たとえば、家中の家具を壊されたり、ヘッドホンで爆音のノイズを聴かされたり。親切心で助けた女性たちが原因で、愛する家族を裏切る結果に陥れられたり。結末に男性諸君は震え上がるでしょう。

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ズーイー・デシャネルこそ、真の狂わせガール?『(500)日のサマー』

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監督は、マーク・ウェブ。多くのミュージシャンのMVを手がける映画監督で、『(500)日のサマー』は長編作品のデビュー作。MVを多く手がける監督だからか、本作は劇中の音楽のセンスも素敵なので、そこにも注目を。ちなみに、ヒロインのサマーを演じる、ズーイー・デシャネルは「She & Him」というデュオでも活動中。音楽と密接に絡んでいるのも、本作のみどころのひとつでしょう。

本作は、運命を信じない女に振り回される、運命を信じる男の物語。主人公のトムを演じるのは、ジョセフ・ゴードン=レヴィット。地味で冴えない、ナードな青年がぴったりです。ヒロインは、ズーイー・デシャネル。この作品がきっかけで一気に知名度を上げました。

まさに『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』の海外版だなと思える作品なのですが、大根監督の『モテキ』のダンスシーンは、すでに本作からの影響を窺えます。また、劇中で使われる音楽の多さや、物語への音楽の組み込み方など、共通点も目立ち、似通った立ち位置の作り手なのかもしれませんね。

『(500)日のサマー』を観ていると、男性が女性に狂わされるのは、男性の勘違いが発端だなと思わされます。
サマーはいわゆる小悪魔的な女性。トムと食事にも出かけるし、デートもセックスもOKです。しかし、彼女は言います。「真剣に付き合う気はない、あくまでも気軽な関係がいい」と。トムもそれを認めますが、内心では「関係が深まれば、いつかは恋人同士の関係になれるはず」と都合のいいことを思っています。なぜなら、彼女が運命の女性のはずだから。

本作では、男性がロマンチストに描かれてますが、性別を問わずにすべての運命を信じる男女にお薦めの一本です。

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さいごに

狂わされるのは恐ろしいと思いつつも、それでも惹きつけるのが魔性の女。
その魅力をこの機会にぜひ!

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※2021年2月17日時点のVOD配信情報です。

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  • くろ
    -
    この映画まじで んだ
  • とゆん
    3
    2018年 鑑賞記録 妻夫木くんは、爽やか好感度高いっていうイメージなのにいろんな役ができてすごい! すごく好きな役者さん。
  • ai
    2.8
    作りがモテキと同じです。(笑) 水原さんの奔放キャラと妻夫木君のダメキャラを受け入れられれば、楽しく見れます。 リリー・フランキーをもっと見たかったです。
  • BABY
    -
    ザ・大根仁、アホすぎて好き
奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール
のレビュー(39476件)