Filmarksを運営する社員に、映画やドラマ、アニメに関する「偏愛」やオススメを聞いてみる企画。第7回目は、今話題のドラマ『silent』について3名の社員で語ります。
今回のFilmarksの人
Filmarks ディレクター・松浦(左):『silent』を観るときは、必ずイヤホンをして観るというこだわりがある。推しの数の多さは社内一だが、切り替えも早い。
Filmarks PR・山口(右):ドラマは録画派で、自分のタイミングで集中して観たい。ネタバレに気を付けているが、先に観た松浦と堤に若干展開を匂わせられている。
FILMAGA編集部・堤:進行役に徹するつもりが、喋り過ぎてしまったため参加扱いに。
※以下、エピソード0〜5のネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。
“語りたくなるドラマ” 『silent』
堤:今話題のTVドラマ『silent』。毎週放送後にはTwitterのトレンドトップにランクインするなど社会現象化している今作ですが、お二人とも見事にハマっていると聞いてます……!
松浦:今の所、毎話泣いてます(笑)。最初はどんなもんかなと思って見始めたのですが、切ないのに温かい不思議な感覚に心掴まれて、全員を応援したくなる登場人物たちの愛され人格にどハマりしました。セリフの言葉遊びだったり、状況説明が少なめなのも自分なりの解釈で楽しめる感じがして、何度も繰り返し観てしまいます。
堤:想像を掻き立てる脚本と演出が、ついつい“語りたくなる”余地を残してくれますよね。
山口:そうですよね、「これはこういうことなの?」と自分なりに解釈したり、人に「どう思う?」って聞いてみたくなる。こんなに譲り合う恋愛ドラマというのも新鮮だし(笑)、今のところ嫌われ役が一人もいない。あと、大きなドラマが起きなくても続きが気になる構成が凄い。ふと映った物が伏線になっていたりするのも面白いです。とにかく作り込まれているなあ、と。
堤:わかります。聞こえない世界の演出としてあえて無音のシーンを挟んだり、気持ちに嘘をついている時の表情を見せない後ろからのカットだったり。毎週木曜日が楽しみです(笑)。今回は座談会形式で存分に語っていただきますので、よろしくお願いします!
ドラマ『silent』あらすじ
主人公の青羽紬(あおば・つむぎ/川口春奈)は8年前に、一生をかけて愛したいと思えた恋人との別れを経験し、新たな人生を歩もうと前を向いて生きている一人の女性。そんな紬と大切な人との出会いは高校2年の秋、たまたま朝礼で耳にしたある男子生徒の声に惹(ひ)かれたことがきっかけでした。壇上で作文を読む、佐倉想(さくら・そう/目黒蓮)に心を奪われた紬は、次第に彼が気になる存在になっていることに気づきます。3年生で同じクラスとなり、共通の友人を通してだんだんと距離が縮まっていった二人は付き合うことに。音楽好きというお互いの趣味で通じ合い、仲を深めていった二人でしたが、卒業後のある日、これからも一緒にいたいと思う紬に対し、想は突然、理由も言わずに別れを告げて姿を消してしまいます。
それから8年という月日が流れ、新たな人生を歩み始めていた紬でしたが、ある日、偶然、雑踏の中に想の姿を見かけたことをきっかけに、再び彼の存在を意識するようになっていきます。もう一度、想に会ってちゃんと話をしたいと彼の姿を探し始めた紬でしたが、実は彼が徐々に耳が聞こえにくくなる“若年発症型両側性感音難聴”を患い、聴力をほとんど失っていたという思いがけない現実を知ることになって…。
最強のヒロイン、紬。
堤:紬の圧倒的ヒロイン感、ちょっと他ではみないなと思ったんですが、どうですか? 男女分け隔てなく愛されるキャラクターで、微塵もいやらしさを感じさせない愛され力の高さが「最強」だと思います。作品の雰囲気的に、紬を嫌う女子…みたいなライバル的対立構造が大きな山にならなさそう。
山口:不幸なヒロインをイケメン2人が取り合う…みたいなプロットじゃない所もよりリアルですよね。爽やかで健康的で、正統派。脚本はいわゆる“当て書”で作られたそうなので、川口春奈さんと紬というキャラクターのイメージに違和感を感じ辛いから、より感情移入しやすいのかも……!
松浦:「実際にいるな」と想像しやすいから、ちょっと自分に素直すぎる所とか、都合よく記憶を改竄したり(笑)するのも人間らしくて、愛せますよね。あと、紬は高校のマドンナではあったけど、今はカースト上位って感じはあんまりなくて。きっと本人がそこにステータスを置いていないからだとは思うのですが、ちょうど応援したくなる女の子としてキャラクターが作り込まれてますよね。
山口:好物はきっとハンバーグなんだなとか、わかりやすい所も愛おしい(笑)。あと、涙の美しさが凄い……! 展開に心が追いつかなくて“じわじわ…”っと泣き出す感じとかリアルで、思わずつられ泣きしちゃうというか。
松浦:普通、主人公が2人の間で揺れていたりすると、どっちなの?! とヤキモキしちゃうけど、3人ともお互いを思いやる気持ちが丁寧に描かれているから、「もう、3人で決めて…。」って、こちらもただハッピーエンドを祈るばかりです。紬の幸せにちゃんとついていきたくなる、2022年最強の愛されヒロイン。
湊斗と想、“優しさ”のベクトルの違い
堤:今作を観ていて思ったのですが、湊斗と想は優しさのベクトルが違いますよね。湊斗は“譲る/尽くす”優しさで、想は“守る/与える”優しさだなって。エピソード0を観るとすごく顕著だなと思いました。
山口:たしかに。どちらも別軸の“優しさ”の癖があって、同時に弱みもわかるというか。湊斗は以前に、紬と友達の会話の中でも「なんであんなに自信ないの。佐倉くんの隣にずっといたからかな」と冗談ぽく言われていたり、紬になんでも合わせてくれて、尽くす感じの“優しさ”は本物だろうけど、裏を返せば、自信のなさや嫌われたくないという恐怖心に繋がる気がしますね。
松浦:実は高校の時から紬のことがずっと好きだったけど、二人の恋を応援していたとか、考えるだけで苦しい……。同窓会の後、ファミレスで紬が仕事をしている所にやってきた湊斗が、「無理なことってあるんだよ」と声をかけたシーンも、さまざまな場面で自分自身にかけてきた言葉だったのかなと考えると、涙ですね。「始めちゃうと、終わっちゃう」とかも、よく性質がわかるセリフでしたよね。
堤:一方で、想は紬に真実を伝えずに突き放したことが“優しさ”で、自分の苦しさを隠すことで紬の“普通”の幸せを守ろうとしたというか。付き合っている時は音楽や映画を紬に“与えて”いたし。優しさの方向性は真逆だけど、想が紬に当時の気持ちを伝えた場面で、分かってはいてもいざ言葉にされると、“本当に紬のことが好きだったんだな……。”と伝わって、ジーンときますよね。
山口:わかります。ある意味で、みんなの“憧れ”としてヒーロー化されていたからこそ、心配かけたくない、気を使わせたくない、何故なら“自分らしくない”からって考えちゃったのかな。“助けて”が言えない所は、想の弱い部分かなと思います。
松浦:そうですね……。紬の接し方からもそれぞれに求めているものが分かるし、愛の形が違うだけで本気で好きだったということは凄く伝わってきますもんね。それでいて、二人の友情も本作の大きなポイントですよね。第4話で、想が湊斗の名前を発声したシーンで、二人の絆の深さに泣けました。家族の前でしか出さなかった声を…と考えると、取り戻せた友情の尊さでまた切ない気持ちに……。
山口:だからこそ、どっちも応援したくなりますよね。ただの親友よりももっと複雑で、受け入れがたい現実もあるはずなのに、すっごい綺麗な物を見せてもらって。優しすぎて、本当にどっちも応援したくなります。
どちらを選んでもハッピーエンド?
堤:無粋ですが、正直ポスターと紹介文の時点で、湊斗と紬は別れてしまうんだろうな…と思いながら観ていたのですが、『silent』ファンとしては「結局どっちと付き合うのが幸せなんだろう?」とか考えたことありませんか?
松浦:難しい……。でも、私は公式がそれ(紬と想のラブストーリー)を提示してくれていることで、ある意味安心して観ています。過程を楽しむタイプなので……(笑)。
山口:うーん。難しいですよね……(笑)。私は実際、湊斗と一緒にいる紬も凄く幸せそうだなと思うし、この二人の3年間が、高校時代の半年に劣るって絶対ないと思うので、正直二人が一緒になる結末を願っているかも……。
堤:私も山口さんよりの考えかも。恋愛ドラマって、もっと自分本位に描かれるものだと思うのですが、本当にみんな理性が凄いですよね。というより、湊斗と想が凄く絶妙なバランスで和を乱さない。まだキスシーンもないですし(笑)。5話までは過去の精算が大きな割合を占めていたから、本当にこれからどうなっていくのかが気になります。
松浦:本当に! どちらを選んでも幸せだとは思うけど、それぞれ共感するポイントがあるし…はやく続きがみたい。
『silent』6話の展開予想
堤:これまでのエピソードで過去の精算パートはあらかた終わったかなという印象ですが、これからどうなると思いますか?
山口:やっぱり紬と想の関係の発展も気になるけど、湊斗とよりを戻す…もしくは、もう一度何かあるんじゃないかなといった期待もあります。別れても友達であることには変わらないだろうし、出番が減ることはまずない! と願いたいです(笑)。
松浦:次回予告で奈々が出てくることは分かりましたが、私は春尾先生の発言も気になっていて。手話ができることで「ろう者のことを分かった気になりたくない」とか、「ろう者の8割くらいが、ろう者同士と結婚するんです。ろう者同士の方が幸せってことですかね」などと言っていましたよね。もしかしたら過去にろう者の恋人がいて、それが奈々だったのかな……? とか想像してみたり。
山口:私もその発言が気になってました。もしかしたら伏線になっていて、想と奈々がくっつく可能性もあるのかも? と思ったり。凄い楽しみになってきた……(笑)。
堤:それを聞くと、奈々と春尾先生に何かあることを期待しちゃいます(笑)。6話は一体どんな展開になるのか、楽しみですね! 今回はこの辺でお開きですが、引き続き『silent』についてお二人と話せると嬉しいです。本日はありがとうございました!
松浦:是非是非、話させてください(笑)。
山口:うれしい(笑)。ありがとうございました!
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※2022年11月8日時点での情報です。