映像美と不可解なストーリーがクセになる!奇才、デヴィッド・ロバート・ミッチェルを大解剖

映画観て、絵描いて、ハイッ!

フクイヒロシ

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若者が人生の真理を知る瞬間を描いた傑作ホラーイット・フォローズは、映画人からも高く評価され世界的なヒットとなりました。日本でも話題になり、その映像美と“イットとは何なのか”という謎に惹きつけられた方も多かったようです。

これを監督したデヴィッド・ロバート・ミッチェルは、2014年、米誌『Complex』で「商業的な成功を収める可能性がある10人の有望な映画監督」にも選ばれた、今までにない魅力的な映画を撮る映画作家です。

今回は、日本ではまだまだ知名度の低いデヴィッド​・ロバート・ミッチェルの魅力をご紹介します。

映画への目覚めは超ド級のカルトムービー?

サム・ライミ

1974年にデトロイトで生まれたデヴィッド少年は、9歳の時に親戚のおじさんが関わったインディペンデント映画『地獄部隊サム・ライミ/虐殺ヒーロー』(原題『THOU SHALT NOT KILL…EXCEPT』)を公開初日に観て、「これだ!」と思ったとのこと。

この映画はカルト教団とベトナム帰還兵の戦いを描いたスプラッターホラー。予告編を観ると「映画撮ってる時みんなすげぇ楽しかったんだろうな!」ってのがものすごく伝わってくるので、きっとデヴィッド少年も直感的に映画作りの楽しさを感じ取ったのでしょう。

その後デヴィッド少年は『E.T.』にハマり、ヒッチコックやフランソワ・トリュフォーに傾倒し、映画監督を目指して自ら脚本を書きはじめます。

初監督作 短編『Virgin』

映画監督を志しながらフロリダ州立大学とウェイン州立大学を卒業。2002年には初監督作(脚本も)短編映画『Virgin』を撮影します。この短編を日本で観ることは叶わないのですが、“処女懐胎”の聖母マリアがモチーフとなっていて、タイトルが『Virgin』な訳ですから、その後のアメリカン・スリープオーバー『イット・フォローズ』へ繋がる作品であることは想像に難くありません。

長編1作目 青春映画の傑作『アメリカン・スリープオーバー』

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映画のCMや予告編を制作する会社に勤めながら、傑作青春映画『アメリカン・スリープオーバーを撮影しはじめます。無名の新人監督ですから、自らも制作費を捻出し、公開の目処さえ立っていない中でこの映画の編集に1年を費やしました。そして2010年に完成した本作は、第63回カンヌ国際映画祭の批評家週間で上映され、新人監督賞にノミネート。SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)映画祭というインディペンデント映画の祭典でアンサンブル・キャスト賞を受賞します。

原題は「The Myth of the American Sleepover」。Mythは「神話」を意味します。それだけに、意識的にこの映画は時代感がない(いつの時代なのかわからなくしてる)し、大人がいない(1人いるけど寝てる)し、誰か1人を主役にせずに鳥瞰的に全体を見渡した視点に? ??っています。ラストのダンスもまるで神に捧げる踊りのようにも見えてきます。

その後、限定公開を経てついに全米公開されると、当初の興行収入は全米で4万ドル程度でしたが、国内外での評価は高く、日本でもイベント上映を経て日本語版DVDが発売されるまでに至りました(現在は動画配信サービスでも観ることができます)

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大ブレイクのホラー映画『イット・フォローズ』

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『アメリカン・スリープオーバー』の後も生活のため、映画の予告編を作る仕事は続けていたデヴィッド。そんな中、大きな期待を背負って商業映画として撮影したのがイット・フォローズ(14)です。これは彼が幼少期に見ていた「誰かにゆっくり追いかけられる」悪夢をモチーフとしています。

正体のわからない“それ”に若者が次々と殺されていく物語であり、“それ”が何を象徴しているのかという謎と、魅力的な映像美でリピーターが続出しヒットしました。監督は「映画の答えが一つだけというのは好きじゃない。観客によって異なっていい」という考えのもと、“それ”が何を表しているのかを決して答えませんでした。が、あまりに監督の意図と離れた解釈が蔓延したので、ついに口を割りました。知りたい方はググってみてください。

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安住しない姿勢を見せた新作『アンダー・ザ・シルバーレイク』

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今まで自らプロデューサーも兼ねていましたが、新作『アンダー・ザ・シルバーレイク』では、監督と脚本に専念。結果、前2作と比較しても相当に奇妙で不可解な映画となりました……。

これまでは無名俳優を起用してきましたが、今作の主演は大スターのアンドリュー・ガーフィールド! 相変わらずの映像美とギラギラしたポップカルチャー全く予想できないストーリー。「犯罪スリラー映画」とカテゴライズされていますが、本国の予告編の雰囲気はかなりコメディ寄りになっています。この映画を説明しようとして言葉を並べれば並べるほど、意味がわからなくなっていくというかなり奇妙な映画です。

「商業的な成功を収める可能性がある10人の有望な映画監督」だと褒められても、「だからどうした」とひたすら撮りたいものを撮って、それが多くの観客の心を捉えて離さないなんてなんともカッコイイ! そもそもトリュフォーや『デカローグ』、『ツリー・オブ・ライフ 』が好き」だとか言ってるわけですから、商業とあまり相性はよくないような気も……。

きっとどんどん変化して誰も観たことのない映画を作り続け、失敗作と言われる映画を作ったりすることもあるでしょう。同時代にこういう個性的な監督の映画が観られる幸せを享受していきましょう!

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※2022年4月24日時点のVOD配信情報です。

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