『ルイスと不思議の時計』日本語吹き替え版に初挑戦・佐藤二朗が戦々恐々「続編が安田顕になっていたら…」【インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

10月12日公開の映画『ルイスと不思議の時計』で主演ジャック・ブラックの日本語版ボイスキャストを務めた佐藤二朗さんにインタビュー。自身初となる洋画実写吹き替えの難しさと続編への焦りを語った。

ルイスと不思議の時計』。両親を亡くした10歳の少年ルイスが、叔父に引き取られ、隣に住むツィマーマン夫人と新たな生活を始める物語。しかしこの叔父と夫人、実は魔法使いであり、ルイスも少しずつ魔法を教えてもらいつつ、やがて「開けてはいけない」危険な扉を開いてしまうことに……。

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魔法の腕はいまいちながら、ルイスを愛し、ジョークで包み込む叔父ジョナサンをジャック・ブラックが演じ、日本語版吹き替えをジャックと同年代という佐藤二朗が務めた。長いキャリアの中で、実は初めて洋画実写の吹き替えを担当したという佐藤だが、おちゃらける弾け具合の声はお手の物、反対に、ルイスとの関係性が縮まっていき成長が見られるシリアスな場面ではやわらかな声質で、存在感を放っている。全米では9月21日に公開され、北米では、2,600万ドル(約30億円 ※10月10日時点レート換算)というオープニング興収で初登場1位に輝き、当然続編も「噂」されている本作。「続投」の可能性も交えつつ、佐藤に吹き替えの楽しさを語ってもらった。

佐藤二朗

――本作、いかにも佐藤さんらしい要素が詰まっている場面と、全然違うように感じる場面があり、いろいろな声質を持っていることに驚きました。ご自身でも意識されて演じたのですか?

いやいや、何もですよ。自分の声質というよりは、本当にジャック・ブラックさんのお芝居を観てやりました。同業者ゆえに、「こういうお気持ちでやったのかな?」とか、「ここが肝なのかな?」と、ちょっとわかったようなところがあったので、日本語吹き替え版をご覧になる方にも、外さないで届けたいと思って。それだけを考えてやりました。

――洋画実写の吹き替えは初挑戦なんですよね?

そうですね。うんうん、難しいねえ……。

佐藤二朗

――佐藤さんでも難しかったんですか?

難しい、難しい。もう……全然難しい! 例えば、「あのー」と言うとしたら、「あのー」の前の「スーッ」と息を吸うことまで書いてあるんですよ。だから、「あのー」だけじゃなくて、「スーッ」+「あのー」って(笑)。あえぐ、息を吐く、息を吸う、また息、とか。これは難しかったですね。ただ、それに縛られて萎縮したり、その言葉の気持ちになれなかったりするのは駄目だと思ったので、ジョナサンの気持ちは、ちゃんと持ってやろうとしました。細かいことで気持ちがおろそかになっては、本末転倒なので。

だからこそ、プロの声優さんってすごいな、と改めて思いました。僕が子供の頃はレンタルビデオ店がなかったから、洋画を観るとしたら各キー局がやっていた、ゴールデン洋画劇場とか、日曜洋画劇場とかなんですよ。そこで山田康雄さん、広川太一郎さん、野沢那智さん、鈴置洋孝さん……挙げればきりがないんだけど、そうした素晴らしい一流の声優さんたちの吹き替えを観ていたから、「あの人たちは、やっぱり本当にすごかったんだな」と自分がやってみて思いました。声優さんのすごさを痛感しましたね。

――そのあたりは、ツィマーマン役の宮沢りえさんともお話しになりましたか?

まさに、宮沢さんも「声優さん、本当にすごいですね!」と言っていましたよ。俳優とは全く違う筋肉を、違う技術、違うギアでやらなきゃいけなかったという感想も一緒でしたしね。

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――宮沢さんとの掛け合いもみどころのひとつだと思います。どうやって録られたのでしょうか?

ひとりでした……。僕が最初に録ったから、宮沢さんがやるときには僕の声があったらしいんです。僕がやるときには誰の声も入っていないから「……んー、上手くいくんかいの……?」と思いながらやりました。だけど、出来上がりを観たら、すごい、その場でやっているとしか思えないような吹き替えだから、「すごいな、編集って!」とも思いましたけど(笑)。

――ところで、もともとジャック・ブラックさんはお好きな俳優だったとか?

はい。『スクール・オブ・ロック』で大好きな俳優だったので、今回、お話をいただいて非常に光栄だなと思いました。しかも、同い年ですし。

――縁も感じます。吹き替え版で担当する目線でご覧になって、改めて気づいたジャックさんの魅力などはありましたか?

基本、ジャックさんは三枚目のイメージだと思うんですけど、甥っ子のルイスを思う切実なところとかは、非常に抑制の効いたお芝居をしていたので、そこは発見でした。そこも、日本語でやるときにちゃんと届けたいと思ったポイントのひとつですね。

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――コミカル要素も多く出てきますが、そのあたりでは佐藤さんはどんな感想を持たれましたか?

ジャックさんのコメディを全部観ているわけじゃないけど、いつものジャックさんよりは、コミカルも抑制が効いていますよね。お客さんのほうをあまり向き過ぎないというか。作品によっては、もちろんお客さんのほうを向いてやる笑いもあっていいんですけど。日本でも同じで、例えば、『勇者ヨシヒコと導かれし七人』の仏(※佐藤演じる)なんていうのは、完全に客のほうを向いているし。ああいうのは、ああいうのでいいんです。だけど、『ルイスと不思議の時計』は、お客さん側というより、共演者のほうを向いてやり取りをしているのが結果、面白いという。そういう意味で、ジャックさんも『スクール・オブ・ロック』とは明らかに違う感じの笑いを客に提供しているな、と思いました。

佐藤二朗

――映画全体の仕上がりは、どのように楽しまれましたか?

非常にファンタジーだし、観て「ワアッ!」となるような映画であるのと同時に、ちょっと戦争の時代背景もあったりして、アイザック(※黒魔術を得意し世界 を破滅へと導こうとする主)がなぜこうなってしまったかという経緯に関しては、大人でも「なるほど」と思うようなテーマがあったりしてね。大人でも楽しめるような要素もありつつ、華やかでファンタジーなところもあったりするので、本当に性別や年齢問わず、みんなが楽しめる作品だなと思いました。

――キーとなるジョナサンとルイスの叔父関係は、佐藤さんの目にどう映りましたか?

僕が子供のとき、大人に「うーん。僕、いくつ?(※子供言葉)」って言われるのが、すごい嫌だったんですね。なんでこんな、必要以上に自分のところに下りてくるんだ、という感じがして。すごいませた子供だったからかもしれませんけど。子供に対しても、「何やってんだ、お前」と接しようって、僕は思っているんです。普段の撮影現場でも、子役さんともそう接するようにしているんです。僕が精神年齢が低いから、できるのかもしれませんけど……。

だから、ジョナサンとルイスを見ていても、もしかして、ちょっとルイスのほうが大人なんじゃないか、と思うようなところが、たくさんあるじゃないですか。ネタバレになるから言えないけど、最後のところもね? もう、対等。むしろ、ルイスのほうが精神年齢が上なんじゃないか、みたいなところがいくつかあった。そんな関係はすごく良いな、と思いました。

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――佐藤さんご自身でも子育てに関してポリシーはありますか?

さっきもね、違う取材で同じような質問があったんですけど……。ないんだな……ポリシー……。

――勝手ながら連載やSNSなどを拝見しておりますと、あるように感じるのですが……。

ありますか? うーん。一生懸命愛して、一生懸命育てることぐらいしかないですかね。甘やかさない、とかね。それは、どの親御さんでも思っていることじゃないですか。とにかく、別に特別なポリシーみたいなのはないです。溺愛イコール甘やかすことにはならないと思うので、溺愛はしていますけど、息子のためには甘やかさない……ということを、自分に言い聞かせてやっています。つい「甘やかしちゃったあ、今」というときはありますけど、嫁と相談しながらふたりで子育てをやっていますよ。

佐藤二朗

――ありがとうございました。ちなみに、本作、「シリーズ化するのでは?」という噂が、まことしやかに流れています。

えっ、そんな噂が出ているんですか!?

宣伝:「噂」は出ています。

え~、そうですか。

――となれば、続投しますか?「もういいや」と思いますか?

それは、もう使う側次第ですよ! それは!

――佐藤さん的には、全然来いと?

もちろんですよ、それは! 吹き替えは楽しかったんでね! 俺の吹き替え、急に安田顕とかにしないでくださいね(笑)? (インタビュー・文=赤山恭子、撮影=林孝典)

佐藤二朗

映画『ルイスと不思議の時計』は、2018年10月12日(金)より全国ロードショー。

ルイスと不思議の時計
(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO.,LLC

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※募集は締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました!

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【応募方法および当選者の発表】
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