映画ごとにある独特の色味や印象的なワンシーン。そんな“イメージ”をお酒と花を愛するライター・JUNERAYがカクテルに落とし込んで紹介。
第3回は、凄まじくカオスな世界観が話題の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。その世界観にどっぷりと浸れるようなカクテルを作ってもらいました。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)
破産寸前のコインランドリーを経営する中国系アメリカ人のエブリン。国税庁の監査官に厳しい追及を受ける彼女は、突然、気の弱い夫・ウェイモンドといくつもの並行世界(マルチバース)にトリップ! 「全宇宙に悪がはびこっている。止められるのは君しかいない」と告げられ、マルチバースに蔓延る悪と戦うべく立ち上がるが……。
2023年アカデミー賞10部門11ノミネートされた話題作。大作映画でたびたび扱われる「マルチバース」をカオスに描く。さまざまなジャンルがミックスされた本作は、数々の名作のオマージュも多数存在。まさに映画愛に溢れた一作。
JUNERAY’s VOICE
ちょうど確定申告の時期で、デスクの上は未分類の領収書の山! という状態で観たので、冒頭20分くらいは変な汗が止まりませんでした。
これは「尻にトロフィーを挿した半裸の警備員と闘う話」でもあるし、「手の指がない世界で弾かれるピアノの話」で、「税務署に追い込まれた母がおかしくなってしまった家族の話」でもある。中国系アメリカ人の知らない女性の話で、私の話で、あなたの話でもある。
後悔を手放して、全ての可能性が選び取れるようになったとき、いったいどんな選択をすれば前に進めるのだろう? 夫・ウェイモンドが命をかけて語りかける「選択肢」は、日々仕事や家事の“めちゃくちゃ”(別名・ジョブのカオス)に揉まれる私たちにとって、最も大切なメッセージだったと感じます。
私たちの世界は(たぶん)映画ではないので、日々の現実に「格好のつかない、間抜けさ」を抱えて生きていかなければなりません。
そんな哀愁を抱きしめてあげるような演出(例えば、かっこいいアクションシーンでも、武器はイケてないウエストポーチ)が、日常に疲れた心を否応なく共感させてしまうのではないでしょうか。
「忙しくて、映画なんて観てる暇がないよ!」という方ほど観ていただきたい一作です。
Inspired by『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
冒頭から続く世界の青緑、歌手のエヴリンがいる世界の華やかな赤、そしてジョブ・トゥパキの世界の白が並行して存在するカクテル。
グラスの縁には、ベーグルのトッピングのパロディとして、ブラックセサミとブルーポピーシードをあしらいました。
一番上の白い層は生クリームです。牛が絶滅していない世界線に感謝!
HOW TO
・グレナデンシロップ……30cc
・ブルーキュラソー……20cc
・ペパーミントリキュール……10cc
・生クリーム……30cc
・ブラックセサミ(黒ゴマ)……ティースプーン1杯
・ブルーポーピーシード(青芥子の実)……ティースプーン1杯
・レモン……1切れ
ブラックセサミはあらかじめ粗くすり潰し、ブルーポピーシードと合わせて平たいお皿に入れておきます。ブルーキュラソーとペパーミントリキュールは混ぜておきます。
グラスの縁にレモン果汁を塗ったら、グラスを逆さにしてブラックセサミとブルーポピーシードをまとわせ、軽く叩いて余分を落とします。
グレナデンシロップ、ブルーキュラソー&ペパーミントリキュール、生クリームの順に注いだら完成。
スプーンの背などを使って、グラスの内壁に沿わせるように注ぐと、きれいな層になりますよ。
飲む前に混ぜて、マルチバースが入り乱れるカオスを楽しんで!
※2023年3月10日時点の情報です。
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