原作 三上 延 さん(みかみ・えん) さん
1971年神奈川県生まれ。中古レコード店、古書店勤務を経て、2002年に電撃文庫「ダーク・バイオレッツ」でデビュー。11年に『ビブリア古書堂の事件手帖』を刊行。シリーズ化され、累計680万部を突破。9月にシリーズ最新作『ビブリア古書堂の事件手帖〜扉子と不思議な客人たち〜』(メディアワークス文庫)を刊行。
人類の知性を詰め込んだ「本」の魅力
映画『ビブリア古書堂の事件手帖』の公開を目前に控え、シリーズでお届けしている特別インタビュー。第3弾は原作者である三上延さん。本作は古書ミステリーとして、日本中の文芸ファンとミステリー愛好家から熱い支持を受け、累計680万部を誇る大ヒットシリーズとなった。活字とは異なる映画としての「ビブリア」の魅力や、三上さんにとっての「本」について伺った。
古書店員としての経験が創作活動に生きている
小説特有の問題ですが、ビブリア古書堂をはじめとした建物や空間を描くのに、言葉だけではどうしても限界があります。映像の場合、そこをビジュアルで表現できるので迫力や説得力が違います。映画では、原作に出てくる建物や空間の一つひとつが丁寧に再現されていて、非常にうれしかったです。特にビブリア古書堂では本棚に本がずらりと並んでいて、何の本が置いてあるかが気になり、ジロジロ見てしまいました。
小説家になる前は古書店で働いていたことがあり、本作のように様々なお客さんや本との出会いがありました。ある日、店の倉庫で見つけたのが、原作の1巻にも登場した青木文庫の「論理学入門」。そこには刑務所の受刑者が私物として本を持ち込む際に貼られる「私本閲読許可証」の札がありました。持ち主だった人はなぜその本を手放したのか。想像すると、一方ならぬドラマがありそうですよね。古書店員として働いた経験は小説にも生きていると実感しています。
モノとしての本に残る当時の空気感や時代状況
小学6年生の頃に買って今でも手元にあるのが、妹尾河童さんの『河童が覗いたニッポン』。妹尾さんが全国を歩き回った紀行文のような内容なのですが、風変わりな場所とスケッチが面白かったんです。例えば網走刑務所の俯瞰見取図。自分だったらここでどんな風に生活をするだろうかと想像するのが好きでした。読み返してみると、その時の気持ちを今でも思い出しますね。
最近は、子ども向けに作られていた頃の『家の光』という雑誌のバックナンバーを集めていて、昭和30年ごろの誌面を開くと、新幹線の想像図がありました。明らかに無理のあるものやちょっと惜しいもの、意外に合っているものなど、見ていてなかなか面白い。今ではインターネットで何でも調べられるように思いますが、時代で区切って当時の状況を調べるのには難があります。モノとして残る本や雑誌には、当時の空気感とともに時代状況を残せるという長所もあると思います。
本は、人類の知性がすべて詰め込まれているもの。膨大な知識が身につきますし、すべて覚え切れなくても、どの本を参照すればいいか理解し、色々な本とつながるようになると、まるで自分の頭が外部に拡張していくような感覚があるんです。本は、読めば読んだ分だけちゃんと返してくれます。この映画や原作を通して、より多くの人が本に親しむきっかけを得てくれることを期待しています。
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映画『ビブリア古書堂の事件手帖』
STORY:夏目漱石のサイン本と、太宰治の希少本。50年の時を超えて、2冊を結ぶ禁断の秘密とは――?その謎が解き明かされるとき、本がつなぐ真実の愛に心揺さぶられる。
鎌倉の片隅に佇む古書店「ビブリア古書堂」。五浦大輔(野村周平)は、亡き祖母の遺品である夏目漱石の『それから』に記された著者のサインの真偽を確かめるため、店を訪れた。若き店主・篠川栞子(黒木華)は、たちどころにサインの謎を解き明かしただけでなく、この本には祖母が死ぬまで守り通したある秘密が隠されていることに気付く――。
出演:黒木華 野村周平/成田凌/夏帆 東出昌大
原作:三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)
監督:三島有紀子
脚本:渡部亮平、松井香奈
主題歌:サザンオールスターズ「北鎌倉の思い出」(タイシタレーベル/ビクターエンタテインメント)
配給:20世紀フォックス映画/KADOKAWA
11.1 [THU] 全国ロードショー
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