実際の事件や社会問題を取り扱う「社会派映画」は、他のジャンルよりもリアリティ色が強く、世界中で巻き起こっている根深い問題について深く考えさせられます。
本記事では、様々な社会問題を題材に扱った「骨太な社会派映画」を10本ピックアップしてご紹介します。
映画セレクト基準は?
本記事で紹介する映画は、国内最大級の映画レビューサービス「Filmarks(フィルマークス)」のデータに基づきセレクトされています。
『新聞記者』(2019)
東都新聞記者・吉岡のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届いた。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、ある強い思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原は葛藤していた。「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。愛する妻の出産が迫ったある日彼は、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう。真実に迫ろうともがく若き新聞記者。「闇」の存在に気付き、選択を迫られるエリート官僚。二人の人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる!
『余命10年』(22)の、藤井道人監督作。シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、岡山天音、郭智博、長田成哉ほか出演。第43回日本アカデミー賞にて、最優秀作品賞を含む主要3部門を受賞。
『罪の声』(2020)
35年前、日本中を巻き込み震撼させた驚愕の大事件。食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件は、誘拐や身代金要求、そして毒物混入など数々の犯罪を繰り返す凶悪さと同時に、警察やマスコミまでも挑発し、世間の関心を引き続けた挙句に忽然と姿を消した謎の犯人グループによる、日本の犯罪史上類を見ない劇場型犯罪だった。大日新聞記者の阿久津英士は、既に時効となっているこの未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、取材を重ねる毎日を過ごしていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、家族3人で幸せに暮らしていたが、ある日、父の遺品の中に古いカセットテープを見つける。「俺の声だ……」それは、あの未解決の大事件で犯人グループが身代金の受け渡しに使用した脅迫テープと全く同じ声だった! やがて運命に導かれるように2人は出会い、ある大きな決断へと向かう。
『花束みたいな恋をした』(21)の、土井裕泰監督作。作家・塩田武士による同名タイトルのミステリー小説を原作としている。小栗旬、星野源、松重豊、古舘寛治、市川実日子、梶芽衣子、阿部純子(吉永淳)ほか出演。第44回日本アカデミー賞にて、最優秀脚本賞を受賞。
『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)
2002年1月、米国の新聞「ボストン・グローブ紙」が、カトリック教会の信じがたい実態を報じた。数十人もの神父による性的虐待を、教会が組織ぐるみで隠蔽してきた衝撃のスキャンダル。その許されざる罪は、なぜ長年黙殺されたのか。“スポットライト”という名の特集記事を担当する記者たちは、いかにして教会というタブーに切り込み、暗闇の中の真実を照らし出したのか……。
『スティルウォーター』(21)の、トーマス・マッカーシー監督作。レイチェル・マクアダムス、マーク・ラファロ、マイケル・キートン、スタンリー・トゥッチ、リーヴ・シュレイバーほか出演。第88回アカデミー賞にて、作品賞と脚本賞の2部門を受賞。
『インサイダー』(1999)
CBSネットワークの人気報道番組「60ミニッツ」のプロデューサーを務めるバーグマンのもとに、匿名の人物から、あるタバコメーカーがひた隠してきたタバコの有害性についての極秘書類が届けられる。早速この書類について調べ始めたバーグマンは送り主が、大手タバコメーカー・B&W社の研究開発部門の副社長・ワイガンドであることを突き止める。バーグマンはワイガンドに取材を試みるが、上層部と対立したことで会社を解雇されていたワイガンドは家族との生活基盤が失われることを心配し取材を拒否。そして、ワイガンドがマスコミと接触したことを知ったB&W社は、ワイガンドと彼の家族に圧力をかけ始め……。
『ヒート』(95)の、マイケル・マン監督作。ラッセル・クロウ、アル・パチーノ、クリストファー・プラマー、ダイアン・ヴェノーラ、フィリップ・ベイカー・ホールほか出演。
『護られなかった者たちへ』(2021)
東日本大震災から時を経た現代の宮城県内の都市で全身を縛られたまま放置され、餓死させられるという凄惨な 連続殺人事件が発生する。被害者たちはそれぞれ善人、人格者と言われていた男たちだった。宮城県警捜査一課 の笘篠誠一郎は、2つの事件からある共通項を見つけ出す。捜査線上に浮かび上がった容疑者は刑期を終えて出所したばかりの利根泰久、31歳。知人を助けるために放火、傷害事件を起こして服役していた元模範囚だった。 犯人の決定的な確証がつかめない中で、新たな第3の事件が起こり……。裁かれなかった罪と罰、正義が交錯した果てにあったのは、あまりに切なすぎる真実だった。
『糸』(20)の、瀬々敬久(鈴木俊久/南極1号)監督作。作家・中山七里による、同名タイトルのミステリー小説を原作としている。佐藤健、阿部寛、清原果耶、林遣都、永山瑛太(瑛太)ほか出演。第45回日本アカデミー賞にて、最優秀助演女優賞を受賞。
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022)
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『ロード・オブ・ザ・リング』『恋に落ちたシェイクスピア』『英国王のスピーチ』……数々の名作を手掛け、ハリウッドで“神”とも呼ばれた映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの何十年にもわたる性的暴行事件を告発したその記事は、映画業界や国を超えて世界中の性犯罪、セクシャルハラスメントの被害の声を促していく……。世界中で社会現象となった“性犯罪告発運動“=#MeToo運動を爆発させ、正に社会を動かした記者と女性たちの実話であり、真実を追求したジャーナリストの物語。
『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』(21)の、マリア・シュラーダー監督作。ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーによる、ハリウッドの性暴力を告発したベストセラー回顧録「その名を暴け -#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い-」を原作としている。キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリーほか出演。
『すばらしき世界』(2021)
下町の片隅で暮らす三上は、見た目は強面でカッと頭に血がのぼりやすいが、まっすぐで優しく、困っている人を放っておけない男。しかし彼は、人生の大半を刑務所で過ごしてきた元殺人犯だった。社会のレールから外れながらも、何とかまっとうに生きようと悪戦苦闘する三上に、若手テレビマンの津乃田と吉澤が番組のネタにしようとすり寄ってくる。やがて三上の壮絶な過去と現在の姿を追ううちに、津乃田は思いもよらないものを目撃していく……。
『永い言い訳』(19)の、西川美和監督作。作家・佐木隆三の小説「身分帳」を原作としている。役所広司、仲野太賀(太賀)、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみほか出演。
『Winny』(2023)
2002年、開発者・⾦⼦勇は、簡単にファイルを共有できる⾰新的なソフト「Winny」を開発、試⽤版を「2ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本⼈同⼠が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で⼤量の映画やゲーム、⾳楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。次々に違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の⾦⼦も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004 年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護⼠・壇俊光は、「開発者が逮捕されたら弁護します」と話していた⽮先、開発者⾦⼦⽒逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。⾦⼦と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第⼀審では有罪判決を下されてしまう……。しかし、運命の⽷が交差し、世界をも揺るがす事件へと発展する……。なぜ、⼀⼈の天才開発者が⽇本の国家組織に潰されてしまったのか。本作は、開発者の未来と権利を守るために、権⼒やメディアと戦った男たちの真実を基にした物語である。
『ぜんぶ、ボクのせい』(22)の、松本優作が監督と脚本を務める。東出昌大、三浦貴大、吉岡秀隆、渡辺いっけい、吉田羊、吹越満ほか出演。
『空白』(2021)
全てのはじまりは、よくあるティーンの万引き未遂事件。スーパーの化粧品売り場で万引き現場を店主に見られ逃走した女子中学生、彼女は国道に出た途端、乗用車とトラックに轢かれ死亡してしまった。女子中学生の父親は「娘が万引きをするわけがない」と信じ、疑念をエスカレートさせ、事故に関わった人々を追い詰める。一方、事故のきっかけを作ったスーパーの店主、車ではねた女性ドライバーは、父親の圧力にも増して、加熱するワイドショー報道によって、混乱と自己否定に追い込まれていく。真相はどこにあるのか……? 少女の母親、学校の担任や父親の職場も巻き込んで、この事件に関わる人々の疑念を増幅させ、事態は思いもよらない結末へと展開することに……。
『神は見返りを求める』(22)の、吉田恵輔が監督とオリジナル脚本を務める。古田新太、松坂桃李、田畑智子、藤原季節、趣里、寺島しのぶほか出演。
『ある男』(2022)
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から奇妙な相談を受ける。里枝の亡くなった夫「大祐」の身元調査を頼みたいと言うのだ。里枝は離婚を経験後、子供を連れて故郷に戻り、やがて出会う「大祐」と再婚。新たに生まれた子供と4人で幸せな家庭を築いていたが、ある日突然夫が不慮の事故で命を落としてしまう。悲しみに暮れる中、大祐の法要の日、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一が訪れ、遺影を見て「これ、大祐じゃないです」と言い放つ。愛したはずの夫「大祐」は、まったくの別人だったのだ……。城戸は、“ある男”の正体を追う中で様々な人物と出会い、衝撃の事実に近づいていくと、いつしか城戸の中にも他人として生きた男への複雑な思いが生まれていく……。
『蜜蜂と遠雷』(19)の、石川慶監督作。芥川賞作家・平野啓一郎による、同名タイトルのベストセラー小説を原作としている。妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、眞島秀和ほか出演。第46回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞を含む最多8部門を受賞する快挙を成し遂げた。
(C)2019『新聞記者』フィルムパートナーズ 映画「罪の声」製作委員会(C)2015 SPOTLIGHT FILM, LLC(C)2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会(C)Universal Studios. All Rights Reserved.(C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会(C)2023 映画「Winny」製作委員会(C)2021『空白』製作委員会(C)2022「ある男」製作委員会
※2023年5月19日時点の情報です。