アカデミー賞4部門を獲得した『グランド・ブダペスト・ホテル』（18）や、日本を舞台にした『犬ヶ島』（18）など、芸術作品のように緻密に作り込まれた映像の美しさや、唯一無二のシュールなキャラクターが展開するストーリーで多くの人々を魅了し続ける映画監督ウェス・アンダーソン。
本記事では、2023年9月1日（金）に公開される最新作『アステロイド・シティ』を含めたウェス・アンダーソン監督作品を一覧にしてご紹介します。この機会に、是非チェックしてみてください。
映画セレクト基準は？
本記事で紹介する映画は、国内最大級の映画レビューサービス「Filmarks（フィルマークス）」のデータに基づき、セレクトされています。
『アンソニーのハッピー・モーテル』（1996）
オーウェン・ウィルソン共同脚本作品。ルーク・ウィルソン、オーウェン・ウィルソン、ネッド・ダウド、シェア・フォウラー、ヘイリー・ミラー、ロバート・マスグレーヴ、アンドリュー・ウィルソン、ブライアン・テネンバウム、ジェニ・トゥーリイ、テンプル・ナッシュ、ジェームズ・カーン出演。
病院から退院したばかりのアンソニーは、自分よりもはるかに変わり者の相棒・ディグナンの強盗計画を手伝うことに。ディグナンは大泥棒・ヘンリーの助けを借り、その道のプロを招集。ターゲットの場所へ乗り込むが、そこで思わぬ展開に……。
自主製作の短編映画をリメイクした、ウェス・アンダーソン監督の商業映画デビュー作。監督独特のユーモアや鮮やかな色彩で構成された、原点とも言える作品。常連俳優となるオーウェン、ルーク・ウィルソン兄弟も本作でデビューを飾っている。
『天才マックスの世界』（1998）
オーウェン・ウィルソン共同脚本作品。ジェイソン・シュワルツマン、ビル・マーレイ、オリヴィア・ウィリアムズ、シーモア・カッセル、ブライアン・コックス、メイソン・ギャンブル、サラ・タナカ、スティーヴン・マッコール、ルーク・ウィルソン、コニー・ニールセン、アンドリュー・ウィルソン出演。
私立のラシュモア高校に通う行動的な生徒のマックスは、並行して20前後の課外活動をこなすという忙しい毎日を送っているが、成績は急降下中。ある日彼は高校に新たに赴任した女性教師クロスに一目惚れし、同級生の父親で親友のブルームに手助けをしてもらうことに。ところが、ブルームもクロス先生を好きになってしまい……。
第56回ゴールデングローブ賞最優秀助演男優賞ノミネート作品。監督自身を投影させているという主人公マックス役はフランシス・フォード・コッポラ監督の甥でもあるジェイソン・シュワルツマンが演じている。アンダーソン作品の常連となるビル・マーレイの絶妙な快演も必見のインテリジェント・コメディ。
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』（2001）
オーウェン・ウィルソン共同脚本作品。ジーン・ハックマン、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・スティラー、グウィネス・パルトロー、ルーク・ウィルソン、オーウェン・ウィルソン、ダニー・グローヴァー、ビル・マーレイ、シーモア・カッセル、クマール・パラーナ、アイリーン・ゴロヴァイア、グラント・ローゼンマイヤー、ラリー・パイン、ジェニファー・ワクテル出演。
テネンバウム家の子ども3人は幼いころ、世間を驚かせる天才児だった。長男チャスはビジネスで大稼ぎし、長女マーゴは劇作家となり、次男リッチーはテニス界の寵児に。しかし父ロイヤルと母エセルが別居したころから一家はつながりを失い、子どもたちも精彩を欠くような毎日を送っていた。ある日、エセルが今の恋人に求婚されたと知ったロイヤルは、自分ががんだと偽って子どもたちを呼び集め、一家の絆を取り戻そうとする。
第74回アカデミー賞脚本賞ノミネート、第59回ゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞（ミュージカル・コメディ部門）受賞作品。監督がずっと憧れていたという街、ニューヨークを舞台に描かれるコメディ・ドラマ。ベテランから若手まで豪華なキャストが集結し、監督の出世作となった作品。
『ライフ・アクアティック』（2004）
ノア・バームバック共同脚本作品。ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット、アンジェリカ・ヒューストン、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、マイケル・ガンボン、バッド・コート、ノア・テイラー、セウ・ジョルジ、ロビン・コーエン、シーモア・カッセル出演。
世界的に有名な海洋学者にして海洋ドキュメンタリー監督のズィスーは、ある意味で人生の危機を迎えていた。数年ヒット作に恵まれず、資金繰りがきつい。おまけに、撮影中に長年のパートナーが幻の怪魚ジャガーザメに喰われてしまった。なんとしても仲間のリベンジを果たし、自身の名声をも取り戻すため、ズィスーは新たな航海に出ることを決める。しかし、その航海には、想像を越えた冒険と、思わぬ悲劇が待ち構えていた。
フランスの海洋学者ジャック=イヴ・クストーをモデルにしたオフビートな冒険物語。ユニークな海洋生物たちはストップモーションアニメで描かれており、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』（93）などの監督ヘンリー・セリックが担当している。
『ホテル・シュヴァリエ』（2007）
ジェイソン・シュワルツマン、ナタリー・ポートマン出演。
フランス・パリのホテルの一室に宿泊しているジャック。彼の部屋にガールフレンドがやってくるのだが……。
『ダージリン急行』（07）のプロローグとして制作された短編映画。本編で三男・ジャックが語る元カノとのエピソードが描かれている。
『ダージリン急行』（2007）
ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン、Emilie Cherpitel共同脚本作品。オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン、アンジェリカ・ヒューストン、アマラ・カラン、カミーラ・ラザフォード、ウォレス・ウォロダースキー、イルファン・カーン、ビル・マーレイ、ナタリー・ポートマン出演。
父の死後、1年もの間音信不通となっていたホイットマン3兄弟。バイク事故で瀕死の重傷を負い、奇跡の生還を果たしたばかりの長男・フランシス。近頃、身重の妻アリスとの不仲に悩んでいる次男のピーター。そして、家族のことをネタにした小説を最近書き上げたばかりの3男ジャック。フランシスの提案で久々に集結し、兄弟の絆を再び取り戻すべく、インド北西部を走るダージリン急行で旅へと出発する。それぞれ問題を抱える3兄弟が衝突を繰り返しながら、さまざまな体験を重ねていく。
インドを舞台に展開される温かなロードムービー。撮影は、改装した鉄道車両をインド北西部にある鉄道路線で実際に走行させながら行われた。オーウェン・ウィルソン、ジェイソン・シュワルツマンに、『戦場のピアニスト』（02）などのエイドリアン・ブロディが加わった異色の3人が、大人に成り切れない兄弟を演じている。
『ファンタスティック Mr.FOX』（2009）
原作は、『チャーリーとチョコレート工場』（05）などの原作者ロアルド・ダールによる「すばらしき父さん狐」。ノア・バームバック共同脚本作品。ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープ、ジェイソン・シュワルツマン、エリック・アンダーソン、ウォーリー・ウォロダースキー、ビル・マーレイ、ウィレム・デフォー、オーウェン・ウィルソン、マイケル・ガンボン、ヘレン・マックロリー、ジャーヴィス・コッカー出演。
Mr.フォックスはかつては泥棒だったが、妻のMrs.フォックスと息子アッシュのために足を洗い、今は穴暮らしをしながら新聞記者として働く日々。しかし、窮屈な穴ぐら生活を疑問に感じ、心機一転と丘の上の大木の家を購入することに。しかし丘の反対側には意地が悪い3人の農場主（人間）が住んでいた。農場を見て野性の本能に目覚めたMr．FOXと動物仲間たちは、人間たちの飼育場から昔のように獲物を盗むことに熱をあげていくが……。
第82回アカデミー賞長編アニメーション賞・作曲賞ノミネート、第67回ゴールデングローブ賞最優秀長編アニメーション映画ノミネート作品。監督が人生で初めて所有したという本を、構想に10年、撮影に2年かけて制作されたストップモーション・アニメ。本作では秋色トーンで統一したいという監督のビジョンのもと、緑や青を一切排除して作られている。
『ムーンライズ・キングダム』（2012）
ロマン・コッポラ共同脚本作品。ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード、ジェイソン・シュワルツマン、ハーヴェイ・カイテル、ボブ・バラバン、ルーカス・ヘッジズ、チャーリー・キルゴア、シーマス・デイヴィー=フィッツパトリック出演。
1965年、ニューイングランド沖にある小さな島。12歳のサムはボーイスカウトのキャンプから脱走する。1年前、サムは同い歳のスージーと出会い、手紙のやりとりを通して密かに駆け落ちの計画を練っていた。2人はある入り江にある秘密の場所、“ムーンライズ・キングダム”に向かう。一方、2人がいなくなった事に気づいた大人たちは大慌て。
第85回アカデミー賞脚本賞ノミネート、第70回ゴールデングローブ賞最優秀作品賞（ミュージカル・コメディ部門）ノミネート作品。監督は「こんな子供時代が過ごせたらいいなという願望を込めた」と話しており、60年代のノスタルジックな雰囲気で描かれる思春期の逃避行は、甘酸っぱい思い出を蘇らせる。
『カステロ・カヴァルカンティ』（2013）
ロマン・コッポラ共同脚本作品。ジェイソン・シュワルツマン、ジアダ・コラグランデ出演。
1955年9月のイタリア。ジェイソン・シュワルツマンが運転するレーシングカーがイエス・キリスト像に衝突する。そこは誰もが遠い親戚で、バスの本数が少なく、スパゲッティを食べながらよその家族の秘密を噂する近代化から取り残された小さな町「カステロ・カヴァルカンティ」。途方にくれるシュワルツマンだったが、自分の祖先に関わるような場所であることに気づく。
プラダとのコラボレーションによるショートフィルム。プラダとロマン・ポランスキー監督とのコラボレーションによって制作した『セラピー』（12）に続く作品。ローマ国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門の一作品として、2013年11月13日に初公開され、撮影は、ローマ郊外映画撮影所・チネチッタのセットで行われた。
『グランド・ブダペスト・ホテル』（2018）
レイフ・ファインズ、F・マーリー・エイブラハム、マチュー・アマルリック、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、ハーヴェイ・カイテル、ジュード・ロウ、ビル・マーレイ、エドワード・ノートン、シアーシャ・ローナン、ジェイソン・シュワルツマン、レア・セドゥ、ティルダ・スウィントン、トム・ウィルキンソン、オーウェン・ウィルソン、トニー・レボロリ出演。
1932年、東欧のズブロフカ共和国。格式高いグランド・ブダペスト・ホテルには、伝説のコンシェルジュと呼ばれるグスタヴ・Hがいた。究極のおもてなしを信条とする彼を目当てに、多くの客がホテルを訪れていた。しかし、長年懇意にしていた“マダムD”が殺害され、遺言で名画“少年と林檎”がグスタヴに贈られることになるが、同時に殺人の容疑がグスタヴにかけられてしまう。ベルボーイのゼロとともに、事件を解明すべく冒険を繰り広げる。
第87回アカデミー賞にて美術賞、作曲賞、衣装デザイン賞、メイクアップ・ヘアスタイリング賞の4部門に輝き、第72回ゴールデングローブ賞では最優秀作品賞（ミュージカル・コメディ部門）、第64回ベルリン国際映画祭では銀熊賞 審査員グランプリを受賞した。シュテファン・ツヴァイクの著書にインスピレーションを受けた冒険譚。ドイツにある小さな町・ゲルリッツで空き家になっていた百貨店を実際にホテルへ改装して撮影が行われた。
『犬ヶ島』（2018）
ブライアン・クランストン、コーユー・ランキン、リーヴ・シュレイバー、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、野村訓市、グレタ・ガーウィグ、フランシス・マクドーマンド、スカーレット・ヨハンソン、ヨーコ・オノ、ティルダ・スウィントン、野田洋次郎、村上虹郎、渡辺謙、夏木マリ出演。
近未来の日本、メガ崎市では犬インフルエンザが大流行し、人間への感染を恐れた小林市長がすべての犬を“犬ヶ島”に追放した。ある時、市長の養子で12歳の少年・アタリが愛犬で親友のスポッツを救うため、一人で小型飛行機に乗り込み、島に向かった。島で出会った勇敢で心優しい5匹の犬たちと共にスポッツの探索を始めたアタリは、メガ崎市の未来を左右する大人たちの陰謀へと近づいていく。
第68回ベルリン国際映画祭にて銀熊賞（監督賞）を受賞したストップモーション・アニメ。1960年頃の日本を舞台にしつつ、今から20年後という設定で描かれるワンダフル・アドベンチャー。黒澤明作品・宮崎駿作品をはじめとする日本映画や日本文化からインスパイアされたという監督の日本愛溢れる一作。
『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』（2021）
ベニチオ・デル・トロ、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン、レア・セドゥ、フランシス・マクドーマンド、ティモシー・シャラメ、リナ・クードリ、ジェフリー・ライト、マチュー・アマルリック、スティーブ・パーク、ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、クリストフ・ヴァルツ、エドワード・ノートン、ジェイソン・シュワルツマン、シアーシャ・ローナン出演。
20世紀フランスの架空の街にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部。米国新聞社の支社が発行する雑誌で、アメリカ出身の名物編集長が集めた一癖も二癖もある才能豊かな記者たちが、国際問題からアート、ファッションから美食に至るまで深く斬り込んだ唯一無二の記事で人気を獲得していた。ところが、編集長が仕事中に心臓まひで急死、彼の遺言によって廃刊が決まる。果たして、何が飛び出すか分からない編集長の追悼号にして最終号の全貌とは？
第79回ゴールデングローブ賞最優秀作曲賞ノミネート。第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。架空の街にあるフレンチ・ディスパッチ誌の4本の記事にまつわる物語を振り返っていくオムニバス。編集長は「ザ・ニューヨーカー」の創始者をモデルにしており、他にも著名な記者へリスペクトを込めて製作された。
『アステロイド・シティ』（2023）
スカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス、マーゴット・ロビー、ジェフリー・ライト、ブライアン・クランストン、ティルダ・スウィントン、エイドリアン・ブロディ、ビル・マーレイ、ルパート・フレンド、ジェイソン・シュワルツマン、ホープ・デイヴィス、スティーヴン・パーク、マヤ・サーマン＝ホーク、エドワード・ノートン出演。
1955年、アメリカ南西部に位置する砂漠の街、アステロイド・シティ。隕石が落下してできた巨大なクレーターが最大の観光名所であるこの街に、科学賞の栄誉に輝いた5人の天才的な子供たちとその家族が招待される。子供たちに母親が亡くなったことを伝えられない父親、マリリン・モンローを彷彿とさせるグラマラスな映画スターのシングルマザー。それぞれが様々な想いを抱えつつ授賞式は幕を開けるが、祭典の真最中にまさかの宇宙人到来⁉︎ 予想もしなかった大事件により人々は大混乱！ 街は封鎖され、軍は宇宙人の事実を隠蔽しようとし、子供たちは外部へ情報を伝えようと企てる。果たしてアステロイド・シティと、閉じ込められた人々の運命の行方は⁉︎
第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。宇宙開発時代のアメリカで、演劇「アステロイド・シティ」にまつわるテレビ番組が放映されるという設定の劇中劇。スペインのチンチョン郊外で実際に街を作って撮影された。
『The Wonderful Story of Henry Sugar（原題）』（2023）
原作はロアルド・ダールの1977年の短編集「奇才ヘンリー・シュガーの物語」。レイフ・ファインズ、ベネディクト・カンバーバッチ、ルパート・フレンド、ベン・キングズレー、リチャード・アイオアディ、デヴ・パテル出演。
2023年秋頃にNetflixで公開予定の短編映画。ウェス監督によるロアルド・ダール作品は、『ファンタスティック Mr.FOX』（09）以来、2度目の映画化となる。父親の遺産で生活する大金持ちの男、ヘンリー・シュガーをベネディクト・カンバーバッチが演じる。
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※2023年8⽉9⽇時点の情報です。
