FILMAGA編集部が選ぶ2023年の「推し映画」を発表!【ベストムービー2023】

2023年もたくさんの映画が公開され、話題になりました。社会派や考察、ラブコメ、ホラーにアクション……。さまざまなジャンルの中で、データだけでは決められない「とにかく好み!」な作品だって存在します。 FILMAGA編集部が、「これ面白かったな〜!」と感じた、2023年公開のベストムービーを発表します!次観る作品を探している皆さん、私たちの推しムービー、いかがですか?

【ベストムービー2023】FILMAGA編集部が選ぶ2023年の「推し映画」を発表!

2023年もたくさんの映画が公開され、話題になりました。社会派や考察、ラブコメ、ホラーにアクション……。さまざまなジャンルの中で、データだけでは決められない「とにかく好み!」な作品だって存在します。

今回は、常日頃から傑作を求めて奔走するFILMAGA編集部が、「これ面白かったな〜!」と感じた、2023年公開のベストムービーを発表します!

次観る作品を探している皆さん、私たちの推しムービー、いかがですか?

「こんな映画体験は久々」
編集長・遠藤のベストムービー

PROFILE:ミーハーマインドを持つFILMAGA編集長。2023年はなかなか手が出せなかった「ワイスピ」合宿を遂に実施。合計1,237分を費やし最新作に追いつく。現在はソン・ガン出演作ラッシュに合わせて慌ただしい年末を過ごしている。

遠藤が推すのは『aftersun/アフターサン

あらすじ:11 歳の夏休み、思春期のソフィは、31 歳の父親・カラムとトルコのリゾート地にやってきた。 まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、ふたりは親密な時間をともにする。 20 年後、カラムと同じ年齢になったソフィは、懐かしい映像のなかに大好きだった父との記憶を手繰り寄せ、当時は知らなかった彼の一面を見出してゆく……。

遠藤:「あの頃の父親の年齢に追いついた娘の視点で映し出す、二人で過ごした“あの夏”。実際に家庭用ビデオカメラで撮影されたローファイな映像の質感は粗く不鮮明で、でも空気感がすごくダイレクトに伝わって一気に引き込まれました。
本作では主人公のソフィを通して記憶を辿って、客観的に今見るとわかることもたくさんあって。映画の中のストーリーを観ているはずなのに、気がついたら自分のことを思い返して、リンクして、心が揺さぶられる……。そんな映画体験は久々でした。
この間、“母が自分を産んだ年齢”に追いついた時、私って全然大人じゃない……と感じたのですが、本作で、子供から見ると絶対的に強い親の“年相応に脆い姿“を見ると胸が締め付けられたりもして、やっぱり私もしっかり大人なのかも。と感じたり、いい意味で情緒がふわふわと不安定になるような映画で、そこまで“振り回してくれる“ところが強烈に印象に残りました。劇中曲のセレクトも痺れるくらいセンスが良かったのでどっぷりと浸ってほしいです!」

「観た人がその先に行けるような一作」
編集部員・堤のベストムービー

PROFILE:いまだに「NANAの中で誰と付き合いたいか」で2時間いける立派な成人女性。天気のチェックを欠かさず、お日様に合わせて生活をしている。最近の失敗は、まつげパーマの最中に何故か狩野英孝のことを思いだし、1時間ずっとプルプルしてしまったこと。

堤が推すのは『怪物

あらすじ:大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した……。

堤:「第76回カンヌ国際映画祭にて脚本賞とクィア・パルム賞を受賞した映画、『怪物』。一つの事件を複数の視点から繰り返し描くことで、物語の輪郭がジワジワと視えてくる構成の巧さに126分が一瞬でした。シルエットは捉えられても、最終的に何に視えるのかは受け取り手次第なラストもかなり好みで、劇場を出て直ぐにレビューを読み漁りました(笑)。
「誰かの正義は誰かの悪」といった普遍的なテーマを扱いつつも、現代社会の様々な問題を同時にはらんでいて、内包しているテーマの多さも魅力のひとつだと思います。この作品を観たから何か答えを貰えるというよりは、むしろ疑問を投げかけられるような、観た人がその先に行けるような一作です。まだ観ていない方は、是非この機会にどうぞ!」

「ドキュメンタリーのように描かれる舞台裏は視点が独特」
編集部員・井上のベストムービー

PROFILE:映画に加えてドラマ・アニメの気になる作品が多くて困っている。2024年公開作品では、アリ・アスター監督の『ボーはおそれている』と原作のLINEスタンプも愛用中の『カラオケ行こ!』が楽しみ。

井上が推すのは『アステロイド・シティ


あらすじ:時は1955年、アメリカ南西部に位置する砂漠の街、アステロイド・シティ。隕石が落下してできた巨大なクレーターが最大の観光名所であるこの街に、科学賞の栄誉に輝いた5人の天才的な子供たちとその家族が招待される。それぞれが様々な想いを抱えつつ授賞式は幕を開けるが、祭典の真最中にまさかの宇宙人到来!? 人々が混乱するなか、街は封鎖され、軍は宇宙人の事実を隠蔽しようとし、子供たちは外部へ情報を伝えようと企てる……。

井上:「ウェス・アンダーソン最高傑作と言われていると知って、とても楽しみにしていました。
監督の作品は、実際に組まれた大掛かりなセットや細部までこだわった小道具や衣装、それを映し出す画面の美しさが特徴ですが、今回のセットは本当にハリボテ。“劇中劇”という重なった設定を行ったり来たりする複雑な構成ですが、ドキュメンタリーのように描かれる舞台裏は視点が独特で面白かったです。特にマーゴット・ロビーの出演シーンはとても印象的でした。
そのほかにも、賢い子供たちや、ストップモーションなど、ウェス・アンダーソン監督ならではの可愛くてコミカルな要素がたっぷり含まれていました。アステロイド・シティでは珍事件がテンポよく繰り広げられる中で、登場人物たちが抱える問題や葛藤、死について語られています。これまでも、“大切な人の死”という一番辛い出来事を必然のように描いてきた監督ですが、パジャマのまま行われる葬儀の場面はどこか温かく、胸を打たれました。」

「ホラー映画とは思えないほど美しいビジュアル。でも……」
編集部員・永見のベストムービー

PROFILE:映画館の雰囲気が好きなので劇場によく行きます。新宿に行けば今やっている大半の映画は観られるので、新宿の街が好きです。家では昔のホラー映画ばかり観ています。レッサーパンダと猫が好きです。

永見が推すのは『Pearl パール

あらすじ:ダンサーを志ざし、スターの華やかな世界に憧れるパール。人里離れた農場で、厳格な母と体が不自由な父に育てられた彼女の愛への渇望が、スターへの夢を育み、両親からの異常な愛が、その夢を腐らせていく……。籠の中の無垢なる少女が抑圧から解き放たれたとき、比類なき無邪気さと残酷さをあわせもつシリアルキラーが誕生する!

永見:「前作の『X エックス』(2022)も独特なホラーだったので、かなり期待して劇場に足を運びました。
前日譚にあたる本作は、クラシカルな画面のルックと、ヴィヴィッドな色合いが目を惹く、ホラー映画とは思えないほど美しいビジュアルでした。見た目とは裏腹に、中身はこれでもかとエグい描写になっているのがとても良かった!
『X エックス』に登場する老婆パールは、肩入れの仕様がない気味の悪さを持っています。ところが、今作で描かれる若き日のパールは、厳格な母親と身動きの取れない病気の父親と共に暮らしており、その抑圧された状況に、どうしてもこちらが感情移入してしまいます。パールの持つ狂気の一端は映画序盤から描かれており、なるべくしてなったように見える展開にも思わず震えます。
特筆したいのは、ラストシーンからエンディングまでの一連の流れ。目に涙を貯めながら画面のこちら側をじっと見つめるパールの姿は痛々しさと悲しさと怖さが混じり合って、何とも言えない後味になっています。2023年に観た映画作品の中でも抜群のインパクトでした。」

「人間・スピルバーグのドラマが詰まってる」
編集部員・前田のベストムービー

PROFILE:エッセイや余白の多い映画が好きです。趣味はZINEを作ること、シナリオを書くこと、お散歩をすること。2024年は劇場でたくさん映画を観たい!

前田が推すのは『フェイブルマンズ

あらすじ:初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になったサミー・フェイブルマン少年は、8ミリカメラを手に家族の休暇や旅行の記録係となり、妹や友人たちが出演する作品を制作する。そんなサミーを芸術家の母は応援するが、科学者の父は不真面目な趣味だと考えていた。そんな中、一家は西部へと引っ越し、そこでの様々な出来事がサミーの未来を変えていく――。両親との葛藤や絆、そして様々な人々との出会いによって成長していくサミーが、人生の一瞬一瞬を探求し、夢を追い求める物語。

前田:「巨匠・スピルバーグ監督の原体験を映画にした自伝的作品『フェイブルマンズ』。
初めて8ミリカメラを手にした幼少時代から、映画作りに没頭する少年時代と、成長と共にその頭角を現すシーンは観ていてとてもワクワクしました。物語の中盤までは温かなホームドラマかと思いきや、その後、心に傷を残すであろう事件が……。観ていて少しつらかったですが、印象的だったのは、母親にあるビデオを見せる場面。映像の良い面や明るい部分だけでなく、影の部分を描いたシーンが今も記憶に鮮明に残っています。映像は人を喜ばせることも、傷つけることもできる。そのことを有名になっても尚、スピルバーグ監督が真摯に向き合っているような気がして心打たれました。
引っ越し、別れ、進路の悩み、いじめ、様々な困難や人の屈折した部分を美化することなく描いていて、ノスタルジーだけではない、人間・スピルバーグのドラマがたくさん詰まっています。そして、憧れのジョン・フォード監督との出会いには思わず胸が熱くなりました。ユーモア満点のラストも最高です!」

「唯一無二な世界観にずっと浸っていたい!」
編集部員・小川のベストムービー

PROFILE:涙もろく、誰かが泣いてるとつられてしまう。映画の感動シーンはグッと堪えて冷静に観るべきか、感情に任せて泣くべきか、葛藤し続けている。2024年一発目の映画は、涙の心配がない(多分)『エクスペンダブルズ ニューブラッド』で決まり。

小川が推すのは『ジョン・ウィック:コンセクエンス

あらすじ:裏社会の掟を破り、粛清の包囲網から生還した伝説の殺し屋、ジョン・ウィック。地下に身を潜めながら、全てを牛耳る組織・主席連合から自由になるために立ち上がった。組織内での勢力拡大を狙う若き高官、グラモン侯爵は、ジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破、ジョンの旧友でもあった盲目の達人ケインを強引に引き入れる。そんな中、日本の友人、シマヅの協力を求めてジョンが大阪のコンチネンタルホテルに現れた……。

小川:愛犬を殺されたことから始まるジョンの戦いが、ついにひとつの決着を迎えます。「ジョン・ウィック」シリーズの魅力といえば、コンチネンタル・ホテルやコイン、誓印にみられる独特な組織のルール。唯一無二な世界観にずっと浸っていたいと思いつつ、サクレ・クール寺院を背に、美しい街を見下ろすジョンに、この結末を迎えられてよかった……、としみじみ感じてしまいました。
作中で大きなインパクトを残したのは悪役、グラモン侯爵。彼を演じたビル・スカルスガルドといえば、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』でのペニーワイズの怪演を思い出しますが、そのイメージは一変! あまりに見目麗しい貴公子っぷり(そしてわかりやすく嫌なやつ)に、これまでにはない華を添えてくれました。そしてもう一つ、今作はジョンを支えてきた、故ランス・レディック演じるコンシェルジュ、シャロンの見納めでもあります……。続編も決まっているようですが、彼の姿はもう見られないと思うと寂しいですね。作品になくてはならない存在を、しっかりと目に焼き付けました。
他にも、大阪コンチネンタル・ホテルには、真田広之による支配人シマヅが登場! 見どころだらけで語りきれないですが、まだ観たことがない方は、一作目からぶっ通しで視聴するのがおすすめです。」

イラスト:FILMAGA

*2023年12月28日時点の情報です。

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