映画『罪と悪』は、井筒和幸をはじめ、廣木隆一や入江悠などの作品に、助監督として参加してきた齊藤勇起が監督・脚本を務めた本格ノワールミステリー。主演を高良健吾が務め、大東駿介や石田卓也などが出演する。
13歳の少年が何者かによって殺された殺人事件は、22年後さらに新たな殺人を生むことに。罪を抱えて生きてきた少年たち、そして大人になるにつれ育っていく悪意。片時も目が離せない物語の結末を見届けて欲しい。
『罪と悪』（2024年）あらすじ
13歳の少年・正樹が何者かに殺された。大切な友人が殺害されたことが許せない春、晃、朔は、正樹がよく遊びに行っていた怪しげな老人・おんさんが犯人だと考え、揉み合いの末おんさんを殺してしまう。春は全ての罪を被り、おんさんの家に火を放つ。22年後、刑事になった晃（大東駿介）は父の死をきっかけに地元に戻ってきていた。朔（石田卓也）は引きこもりになった兄・直哉の面倒をみながら家業を継いで農家に。そして再び22年前と同じような少年が殺される事件が発生する。晃は捜査の中で、建設会社を営む春（高良健吾）と再会。春は地元の不良少年たちの面倒をみており、殺された少年とも面識があった。3人が共有した22年前の罪、そして再び発生した殺人事件。この二つの事件が繋がったことで、事件の本当の姿が見えてくる。
※以下、『罪と悪』のネタバレを含みます。
3人が共有した罪
春、晃、朔、正樹はサッカー部の友人同士。部活の試合の日、なぜか正樹は来なかった。そして次の日、何者かに殺されて遺体となった正樹が橋の下で発見される。春、晃、朔は、正樹を殺した犯人に違いないと怪しい老人・おんさんの家に向かう。おんさんの家にはなぜか正樹のスパイクが落ちていた。
朔はおんさんにスコップで殴りかかり、春はおんさんを引き倒して殴る。そしてまた朔がスコップで後ろから頭を殴り、おんさんは死んでしまう。春は自分がすべての罪を被ると告げ、おんさんの家に火を放つ。春はそのまま少年院へ入り、3人は散り散りとなった。
22年後、警察官になった晃は父親の死をきっかけに地元に戻ってきていた。晃は農家をしながら、引きこもりになった兄・直哉の面倒を見ている春とも再会を果たす。そんなとき、22年前に正樹が殺されたのと同じような形である少年が殺される。その少年・小林大和は春が面倒をみていた地元の不良少年だった。春は建設会社を営みながら、不良少年の面倒を見つつ、裏の仕事にも手を染めていた。晃は捜査協力を仰ぐため、春のもとを訪れた。
見つかっていない正樹の財布
正樹のときと同じ形で事件が起きてしまった。晃のなかには正樹を殺したのはおんさんではないのかもしれないという疑念が生まれていた。自分の罪を洗いざらし話して楽になりたい。晃は罪の意識に苛まれるようになっていたのだ。
そんな罪の意識を感じる晃を咎める春。春は、晃が貫きたい警察の正義を小馬鹿にする。少年院に入っていた春は、晃の父親が手を回したおかげで罪が軽くなっていたのだ。晃の父親も晃の上司・佐藤（椎名桔平）も、権力を傘に悪に落ちてしまった地元の不良少年たちの面倒をみていたことを晃は知ってしまう。
晃と春はそれぞれの立場から、小林少年を殺した犯人を調べ始める。調べるうち、小林少年の遺留品から、正樹の財布が見つかる。正樹は殺される前日に春と買い物をしており、春の自宅に財布を忘れていた。春はその財布を正樹の家が近かった直哉に渡していたのだ。
晃と春は共に、朔と直哉の家へ。22年間も正樹の財布を持ち続けていた直哉の部屋に乗り込むと、直哉はすでに自ら命を絶ったあとだった。直哉の部屋を探ると、小林少年を殺した時の凶器が。直哉が正樹も小林少年も殺したとして被疑者死亡として事件は解決した。
物語の結末は？犯人は誰？
解決したかのように見えた事件には続きがあった。春と晃、朔は地元の夏祭りで再会を果たす。朔は、こんな小さな町で居場所なんてないと、北海道で暮らすことにしたと告げる。
晃は朔に正樹を殺したのは誰なのか、本当に直哉だったのかを問いかける。おんさんの家で正樹のスパイクを見つけたのも、最初におんさんに襲いかかったのも朔だった。実は正樹が来なかった試合の前日、正樹も朔もおんさんから性的暴行を受けていた。朔にはおんさんに対して、正樹を殺したからという理由以外の殺意があったのだ。
彼ら4人が住んでいたのはとても小さな町だ。性的暴行を受けたことを告げたら、どんな目で見られるかわからない。朔はどうにか被害にあったことを隠したかった。しかし、そして暴行にあった次の日、正樹が春と会っていたことを知ってしまう。正樹が春に性的暴行について話したと誤解した朔は激昂し、正樹を殴ってはずみで殺してしまう。
朔は自分が性的暴行の被害にあったことを知っている人間を殺そうと春のことも狙っていたが、途中で小林少年を殺して直哉に罪を被せることを思いつく。一連の事件の犯人は、朔だったのだ。しかし、朔は認めないまま立ち去る。春は正樹を殺したこと、面倒をみていた小林少年を殺したこと、それらの恨みを込めて仲間に朔を車に轢かせて殺してしまう。
小さな町の閉鎖的な環境が生み出す悪意が連鎖して起こってしまった事件。そして悪意が罪を生み、取り返しのつかない事態へと陥っていく。最後のシーンに映るのは、無垢できらめいた日々を送っていた頃の4人の思い出。何か一つでも救いがあれば、きっと4人はずっとあのままの関係を続けていられたのだろう。
(C)2023「罪と悪」製作委員会
※2024年2月3日時点の情報です。
