『ヒメアノ〜ル』、『空白』、『ミッシング』など、人間の表と裏、感情の機微に鋭く切り込んできた𠮷田恵輔監督が、磯村勇斗と末澤誠也(Aぇ! group)をW主演に迎えた最新作『mentor』が、いよいよヴェールを脱ぐ。
本作は、龍之介(磯村)と拓海(末澤)が幼少期に起こした花火遊びによるアパートの火事が発端となる物語。罪の意識にさいなまれ、15年間引きこもりがちな拓海だったが、火事の被害者・埜本(綾野剛)と偶然再会する。大火傷を負い妻子を失った埜本に恨まれるはずと思っていた拓海だったが、広い心で自分と接する彼に傾倒し、「メンター」として慕っていくのだ。そんな折、拓海と埜本が龍之介のもとを訪れることで、3人の運命が狂っていく。
目の色を変えて埜本にのめり込んでいく危うさを全開にする拓海に、何を考えているのか本心がつかめない埜本。そんな二人とは当然、距離を置きたがる龍之介だが、むげにできず徐々に自分も乱されていくわけで――磯村・末澤・綾野の三者ががっぷりと組み合う芝居が、不穏さと緊張感を加速度的に高め、予想外の展開に観客をいざなう。
「ずっとご一緒したかった」と𠮷田監督との取り組みを熱望していた磯村と、磯村と綾野の懐に飛び込み「本作がターニングポイント」と笑顔を見せた末澤。初共演となった磯村&末澤に、オファーを受けたときの思いから役へのアプローチ、互いに距離を詰めていった撮影中のエピソードまで、ロングインタビューで聞いた。

𠮷田監督作品に、初めての出演となりました。オリジナル作品ですが、台本を読んでどのような印象でしたか?
磯村:𠮷田さんとはずっとご一緒したかったので、オファーをいただいたことがまずうれしかったです。社会的なテーマをえぐるように描いてくれているのが、僕はすごく好きなんです。“𠮷田監督ワールド”と呼びたくなるような、「普通はそこに注目しないよね」という仕草、言葉を、映画の中に散りばめている方という印象でした。だからこそ『mentor』はどんな風になるのかなあと、すごく期待していました。台本を読んでいると、展開が想像できない作りになっているところもありますし、それでいてブラックコメディとして成立している作品で、とにかく面白くて。日本でブラックコメディを作品で扱うことは、なかなか少ないですよね。『mentor』のような作品で笑える部分もあると、そこがやはり𠮷田監督、さすがだなと思いました。
末澤:個人としての映画初主演を、まさか𠮷田監督の作品で磯村さんとやらせていただけるなんてすごく光栄でした。台本を読んだとき、最初の1回目は「……どういうことだ!?」と(笑)。そこからもう1回、さらに1回と読み込んでいくにつれ、拓海という役の大変さを感じて身が引き締まりました。さらにキャストを見たときに、磯村くんと綾野さんの中に自分が入るわけで、ほぼほぼ3人で話が進んでいくという。プレッシャーはもちろんありましたし、同時に楽しみもすごくありました。自分にとってのターニングポイントとなる作品になるだろうなと感じていました。
プレッシャーはクランクインまでの間に、どうやって乗り越えていったんですか?
末澤:インするまでは、このお二人の中に入るという怖さのようなものがあったので、とにかく台本を読み込みました。普段はAぇ! groupというグループ活動をしていますが、ライブも同じで、とりあえず自分に自信を持たせるようにしているんです。不安があると、どうしてもその分プレッシャーがかかってくるので、その不安がなくなるくらい自分に「大丈夫だ」と言い聞かせてやろうとしていました。
結果、自分としてできるもの、出せるものをすべて出そうと思って挑んだ作品になりました。磯村くんや綾野さんとご一緒させていただけて、ものすごく刺激を受ける撮影の日々でしたし、「なるほど!そういうアプローチの仕方もあるんだな」と勉強させていただきながら撮影していました。今後もよりいいお芝居ができるように頑張っていきたいなと、この映画を通して強く思いました。
磯村:そうだったんだね。僕としても、現場ごとでキャストも監督も違うので、そういった人たちとの出会いの中でのお芝居を作り上げていくのは刺激的です。「この人、こんなお芝居するんだ!こっちはどう返そうかな?」と、今回の末澤くんや綾野さんとの現場でも思っていました。一緒に作っていけることが、現場の刺激的で面白いところだと思います。
磯村さんが演じる龍之介は、アーチェリーの選手という役どころです。数々の役を経てきた磯村さんですが、アーチェリーは初めてでしょうか?
磯村:はい、初めて挑戦しました。アーチェリーは龍之介の人生の一部ですし、それにずっとすがっているような部分もあるので、本当に大事だと思い1年前から準備をしていきました。選手の体を見て、同じようにトレーニングをしてアーチェリー選手ならではの筋肉をつけました。打つときに腕(の筋肉)は一切使わず、背中から肩回りを使うんです。なので、そのあたりの筋肉をつけようとずっとトレーニングで大きくして、説得力を持たせていきました。
_『mentor』.jpg)
お二人は初共演です。最初の第一印象を覚えていますか?
磯村:最初は、一報出しのビジュアル撮影のときに会いました。そのときは割とお互い静かでした。あまり多くはしゃべらなかったかな……?
末澤:ですね!
磯村:お互い、ちょっと探りあうような、そんな感じのスタートでした(笑)。会う前まで、末澤くんはテレビでよくしゃべっている明るいイメージがあったので、オフのときは意外と静かといいますか、人を観察するタイプの人なのかなあと思っていました。
末澤:僕は勝手に磯村くんにクールなイメージがあったんです。どういう感じで距離を縮めようかなと、そういう部分で緊張していました。クランクインしてから、いろいろお話しするようになった感じですよね!
距離が縮まったと感じたのは、どういう会話をしてなどきっかけはありましたか?
磯村:明確にはなくて。
末澤:あまりトピックを覚えていないですよね。
磯村:うん。もしかしたら、お互いいじられても大丈夫なんだという発見があったときかな?
末澤:確かに(笑)!
磯村:二人のシーンを何回か重ねていく中で、話していって「あれ…この人全然いじっても大丈夫だ」とお互いに思い始めてから、割とボケたり突っ込んだりが現場で始まった気がします。そうやって関係値はできあがっていきました。

実際に、お芝居に向き合う姿勢や現場での居方で、お互いに発見はありましたか?
末澤:磯村くんは現場ですごくいろいろなアプローチをされますし、それを間近で見ていて「あ、すごっ」と毎回思っていました。この作品において、拓海のほうが派手といいますか「動」の役どころで、龍之介は「静」の役どころだと思うんです。「静」の表現はすごく難しいと思いますが、磯村くんはちょっとしたニュアンスや目線の配り方で、そのときの心情を表現されていたんです。「さすがやなあ」と思っていました。
磯村:末澤くんは、お芝居に対して本当に迷いがないです。監督から求められることをまずはやってみる人なんです。その姿勢が役者にとっては必要な要素だと僕は思っていて、それを既に自分の中で持っているので、本当に感性がいいんだろうなと思っていました。
末澤:そんな……ありがとうございます!すごく覚えているのは、クランクインの日。久しぶりに龍之介と再会するシーンを撮ったんですね。あの日、磯村くんが龍之介として現場にいてくれて、すぐに「龍之介や!」となれたので、リアルに久しぶりに龍之介に会えた感覚になれました。空気づくりをしてくださって、最初からすごく自然でやりやすかった印象がありました。
磯村:初日の撮影は、二人が再会して気まずさみたいなものも感じるシーンだったんです。拓海と会っていない空白の時間は映画では描かれていないけれど、その部分を末澤くんが目の死んでいる具合や、暗い感じなどで埋めてきてくれました。初日からすでに背負っていてくれたので、入りがすごく良かったと思いました。
ちなみに、完成作をご覧になって、お互いの好きなシーンはどこですか?
末澤:予告でも流れている、龍之介が車の中で発狂するシーンです!今までそういう感じじゃなかったけど、龍之介があそこでようやくバカンッと一気に爆発する瞬間なので。撮影のとき僕も近くで見ていたんですけど、衝撃的でした。
忘れられない一人芝居の名シーンですよね。磯村さん、撮影はいかがでしたか?
磯村:あそこがやはり一番大事なシーンかなと思っていました。龍之介にとって一番吐き出すシーンでもあるので、思いっきりやっていました。確かパターン違いを含めて、3回ぐらいテイクを撮った記憶があります。俺が好きな末澤くんのシーンは……、言い方は悪くなっちゃうけど、やはり埜本に対しての金魚のフン感(笑)!
末澤:(笑)。
磯村:埜本が途中で拓海を突き放す方向にも行くのですが、そのときの引き下がらない様子のセリフの言い方や表情が、本当に「こういう人いるよな~ちょっとムカつくやつ…」という絶妙な感じを醸しているんです。「ムカつくな、こいつ」と思うぐらい表現できているのが、すごく素敵ですし面白いです。この作品は、本当に「役者・末澤誠也」を堪能できると思います。
拓海が土下座を練習するシーンも、印象的でした。普段アイドル活動の中で、あんなに土下座はしないですよね?
末澤:アイドルじゃなくても……しないでしょう(笑)!?
磯村:しないです!
末澤:人生で一番土下座したと思っています。一生分したんじゃないかなって。そうありたいです(笑)。
土下座を冷ややかに見ている龍之介、磯村さんの受けの演技も素晴らしかったです。
磯村:あれは本当に何テイクもして、ようやく撮れたという感じなんです。それまでは拓海の土下座シーンを見て本当に笑いが止まらなかったんです!
末澤:笑っていてNGみたいなものも結構ありましたよね(笑)!
磯村:そう、NGが多かった。笑ってダメだったんです。彼がすごくきれいな土下座をするんです!人の土下座を間近で見たことなんてないので……(笑)。本当に素晴らしかった、本当に良かった。
末澤:あ…ありがとうございます(笑)。

磯村さんのオフィシャルコメントで「2歳しか違わないけれど、末澤くんに弟みたいなかわいらしさを感じる」とありましたが、どんなときに特にかわいいと感じるんです?
磯村:立っているだけでかわいいんです。雰囲気が人に愛されるようなオーラといいますか。言葉にするのは難しいのですが、きっとそういう風に愛されて育ってきたんでしょうし、人を愛す心もあるんだろうな、とすごく思います。そこも弟っぽい感じなんです。
末澤:僕としても(磯村さんは)本当にお兄ちゃんというか。年下の僕を広い心で受け止めてくれる方なので、頼っております!

本作で不気味さを担っている埜本役・綾野さんの存在は、お二人にとって大きかったのではと思います。磯村さんはもう何作もご一緒されていますよね。
磯村:普段からお世話になっているので、現場に入る前から「『mentor』よろしくね」みたいな話もしていました。剛さんが演じる埜本は火事でケガを顔に負っているので、顔の造形が普段とは少し違うじゃないですか。現場に入って、その立ち姿や歩き姿など細かいところまで徹底して作っていらしたので、「ああ、こう作ってきたんだ!」と、まず見とれました。今までは割と硬派な役同士で向き合うことが多かったのですが、いざ対峙してみると、埜本はどこかユニークなところも持っているので、その表現もすごく面白かったです。OKが出てもさらに追求してくださるし、いろいろなアイデアが飛び交う中お芝居ができて、本当にメンターのように現場を先導してくれていました。
よく知る磯村さんから見ても、ちょっと新しい綾野さんの演技を見られたような感じでしたか?
磯村:そうですね。今回、感覚として、ショーン・ペンだなと勝手ながら思っちゃいました。それくらい振り切っている演技だなと、素晴らしかったです。
末澤さんは初めてご一緒して、いかがでしたか?
末澤:撮影では埜本とのシーンが多かったので、綾野さんに常に引っ張っていただいた印象です。どのシーンでも綾野さんが台本を開いて、監督を交えて「埜本は、こういうアプローチでいくのはどうかな?拓海も、こういうアプローチだとどうかな?」といろいろな提案をしてくださいました。磯村くんがお話されていたように、監督からOKが出ても「違うパターンを試していいですか?」と、どのシーンも妥協を一切なく追求される方なので、すごく刺激を受けました。撮影以外では、気さくにいろいろなお話をさせてもらえたので、それもとてもうれしかったです。
拓海とまではいかなくとも、俳優としてついていきたくなるような側面が綾野さんにありましたか?
末澤:やっぱり、そうですね。その場の空気を支配すると言うと大げさですけど、圧倒的な存在感がある方なので。引き出しの多さという部分でも、テイクごとに違うお芝居をされるので、すごく見習いたいと思っていました。

物語のラストは、予想もつかない展開へと流れ込みます。お二人はラストについてどう思いましたか?ネタバレにならない表現でのお願いとなり恐縮ですが…。
磯村:拓海に関しては衝撃がありました。ラストシーンでの拓海の表情は何とも言えない顔をしていて、ピカイチすぎて。僕は拓海の最後のあの顔、すごく好きなので注目して観ていただきたいです。
末澤:僕も台本を読みながら「え、これどうなっていくのかな…?」と思っていました。最後はだいぶ衝撃的な終わり方ですよね。しかも観る方によって全然違う捉え方ができる作品になるんだろうなとも思いました。龍之介と拓海の対比が後半になるにつれて濃く映っていくので、そこを楽しみに観てほしいです。
埜本が拓海に人生を導くような言葉を伝えていましたが、お二人が普段から心がけていることや、座右の銘にしていることがあれば、シェアしていただけますか?
末澤:座右の銘、僕はあります!
磯村:お、聞こうか!
末澤:ウォルト・ディズニーさんが、「夢を追い続ける勇気がある限り、夢は必ず叶う」と言っていて、僕はその言葉がすごく好きで座右の銘にしています。夢をずっと追い求められる、そういう勇気を持てるのがすごく大事だと思っているんです。デビューするまでの間も、そう思って頑張ってきました。気持ちが途切れないように持ち続けて、一つのことを追い求められるかどうかが、その後を左右するのかなと思っています。
磯村:僕は、座右の銘を持たないんです。だから末澤くんのように言えなくて。ちょっとこっ恥ずかしくない?
末澤:せこいですよ(笑)!俺が先、言ったのに(笑)!
磯村:僕、名言を残したい人ではないので。
末澤:俺が名言を残したい人みたいになってますって(笑)!
磯村:あ、違う(笑)?
末澤:聞かれたので答えたんです、も~!
磯村:はい、いじりました(笑)。座右の銘を否定しているとかではなく、自分には本当にないというだけなんです。ただ、言霊というのはあると思っています。やりたいことを口にしていくことが、いずれ叶うのは本当なんだろうなと思っています。
(取材・文:赤山恭子)
映画『mentor』は、2026年10月16日(金)より全国公開。

出演:磯村勇斗、末澤誠也、木南晴夏/酒井若菜、川上麻衣子、二村仁弥、黒沢あすか、田村泰二郎/綾野剛 他
監督・脚本:𠮷田恵輔
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ、スターサンズ
公式HP:https://www.mentor-movie.jp/
(c)2026「mentor」製作委員会
※2026年10月8日時点の情報です。
