突然ですが皆さんがマットという名前を聞いて真っ先に思い浮かべる俳優さんは誰でしょうか?『オデッセイ』も公開中ですし、やはりマット・デイモンの名を挙げる方が多いのでは・・・?いやはやお待ち下さい。マットといえばマット・ディロンのことを忘れてはいませんか!?
マット・ディロンは映画界で長年に渡って活躍している俳優の一人です。2月18日はそのマット・ディロン52回目の誕生日ということで彼の簡単なプロフィールとファンである筆者が選んだ出演作を紹介したいと思います(代表作より地味な作品中心となっております)。
プロフィール
出展:https://en.wikipedia.org/wiki/Matt_Dillon
マット・ディロン(本名:Matthew Raymond Dillon)は1964年2月18日、ニューヨーク州ニューロシェルに6人兄弟の2番目の子供として誕生しました。画像を見ても分かる通り、極太眉毛が非常に特徴的な方です。
14歳の時に学校をサボっていたところ、「映画に出てみない?」とスカウトされたのがきっかけで1978年、ジョナサン・カプラン監督の『レベルポイント』にて映画デビュー。
1983年にはフランシス・フォード・コッポラの『アウトサイダー』と『ランブルフィッシュ』に立て続けに出演し、※YA(ヤング・アダルト)スターとしての地位を確立。その後は青春アイドルスターの印象を拭うことができず低迷期が続きますが、1989年にガス・ヴァン・サントの『ドラッグストア・カウボーイ』に出演しアイドルスターから演技派俳優への転身に成功。
昔から作品選びも上手く、かといって脇役としても積極的に出演している姿がとても素敵だなあと感じる俳優さんです。また最近ではM・ナイト・シャマラン製作総指揮の海外ドラマ『ウェイワード・パインズ 出口のない街』でテレビドラマシリーズ初主演を飾るなど活躍の場を確実に広げ続けています。
※YAスター・・・1980年代のハリウッド青春映画に出演した若手俳優たちに付けられたあだ名のこと
マイ・ボディガード(1980年/原題:MY BODYGUARD)
シカゴのハイスクールへ転校してきたクリフォードは初日からムーディら不良少年グループに目をつけられる。いじめは日に日に酷くなっていき、耐えかねたクリフォードは同じクラスのリンダーマンにボディガードを頼むが、リンダーマンは子供殺しだの、警官殺しだのと黒い噂がある人物であった…。
スクールカーストという題材を扱っていながらも、みずみずしい雰囲気が非常に心地よい作品。『マイ・ボディガード』といえばデンゼル・ワシントン主演の映画の方を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、本作は80年代青春映画の傑作と呼べるでしょう。
ちょっと頼りないクリフォードと大男リンダーマンの距離が少しずつ縮まっていく姿はベタですがとても微笑ましく、何よりバイクの部品探しで深まる友情というのがいかにも男同士という感じでイイ!ちなみにアダム・ボールドウィン演じるリンダーマンは漫画『クローズ』に出てくるリンダマンのモデルになっているとか。
マットは不良少年グループのリーダー的存在であるムーディを演じています。当時16歳くらいで初々しいことこの上ないのですが、この時からすでに妙なカリスマ性を光らせていて、ただ単に不良少年とは呼びたくない威圧感を醸し出しています。といっても最後の最後で情けない姿を晒していて、そのギャップがまたいいなあと思いますね。
死の接吻(1991年/原題:A KISS BEFORE DYING)
大富豪カールソン一族の娘であるドロシーが自殺した。不審に思った姉のエレン(ショーン・ヤング)は独自の調査を開始するが、どうやらジョナサン・コーリス(マット・ディロン)という男が関係しているようで・・・。
アイラ・レヴィンによる同名小説を映画化した作品。最初に言っておきます、マットは犯人役です。というのも本作は最初から犯人の顔が割れているという設定のもとストーリが展開されていくんですね。最初から犯人が分かっていながらも最後まで目が離せない展開が続くため、一級のスリルが味わえる作品です。
マットはジョナサンという人物の明と暗の部分を上手く演じ分けており、終始厚みを持たせています。そんな彼の姿に魅了されながらも何故こんなことを・・・?と観ている私たちは混乱するのです。
そしてジョナサンの動機が本当に切ない。もの悲しさに溢れたラストに余情を感じつつも、あまりにも皮肉なジョナサンの最期には誰もが言葉を失ってしまうことでしょう。
ビデオマーケットで観る【初月無料】ドラッグストア・カウボーイ(1989年/原題:DRUGSTORE COWBOY)
代表作より地味な作品を・・・と前述しましたが、やはりこれを外すことはできないのです。
薬が切れたらドラッグストアを襲い、その日暮らしをするジャンキーたち。監督のガス・ヴァン・サントはそんな彼らの世界を繊細かつシャープな映像で映し出し、同時にドラッグの魅力と恐ろしさ、相反する事情を中間の立場から描いています。
マットはジャンキーたちのリーダーであるボブを演じているのですが、当時25歳くらいでギラギラした若さと成熟した大人の雰囲気が混在し、容姿、中身ともに非常に魅力的な形となって映像に焼き付いています。舞台が1970年代ということで70年代ファッションを気取ることなく自然に着こなしている姿もカッコいい。
物語の中盤、度重なるアクシデントからその日暮らしの生活に疲れ果てたボブはサナトリウムへの入所を決意。俺は生きたいというメッセージがボブを演じたマット・ディロンにどうしても重なってしまう。何故なら80年代後半はマットが低迷していた時期。本作でのヨゴレ役は今後のキャリアを左右する捨て身の覚悟で臨んだ役だったのではないのかと私は思うのです。
そして映画の中のジャンキーにこんなにも魅力を感じることもなかなかないこと。第一にひねくれた私はこういう人間が更正してもどうせまた手を出すのでしょう…?と、どこか冷ややかな目で見てしまうのですが、このボブは何かが違う。誰にも邪魔されずに慎ましやかな生活を送って欲しいと願ってしまうこの感情は一重に、マット・ディロン魂の演技の賜物に他ならないのではないでしょうか。
蛇足ですがマットは監督のガス・ヴァン・サントとは『誘う女』(1995年)で再び顔を合わせています。
聖者の眠る街(1993年/原題:THE SAINT OF FORT WASHINGTON)
本作はニューヨークに生きるホームレスたちの姿を映し出した作品です。普段映画などではあまり見ることの出来ないニューヨークの裏側を描いた作品とも言えるかもしれません。
マットは精神を病んだ青年マシューを演じているのですが、役名が本名であるマシューというのはなかなか感慨深く、マシューの危うさ、脆さ、不安定さを全身で演じきっています。
そして突然住む場所を失ってしまった新米ホームレスのマシューにホームレスとして生き抜くためのアドバイスをくれる黒人のジェリーを演じるのは人情味溢れるおとっつぁん役がよく似合うダニー・グローヴァー。マシューとジェリーは人種の壁をも越えて次第に擬似親子のような関係になっていくのですが・・・。
マシューが常に肌身離さず持っているのはフィルムが抜かれたカメラ。フィルムが入っていないカメラで青年は一体何を捉えるのか、捉えていたのか。ホームレスの中にも序列が存在し、弱者はひっそりと道端のゴミのように死んでいく。悲しむものは誰もいない。ラストは明らかな皮肉と絶望を見せつけられますが、競争社会が生んだ闇を鋭く切り取った佳作。聖者が眠る街というタイトルもとても印象的です。
アルビノ・アリゲーター(1996年/原題:ALBINO ALLIGATOR)
俳優ケビン・スペイシーの初監督作品。
ひょんなことからトラブルに見舞われ酒場へと逃げ込んだ強盗3人組だったが、あっという間に警察から包囲されてしまう。彼らは咄嗟に酒場にいた5人を人質にとるのだが…。
強盗と人質たちによる密室劇が淡々と展開されていくだけなのにこれがなかなか面白い。密室劇となると制限された状況の中でいかに鑑賞者を退屈させず、上手く引き込ませるかが重要になってくるわけですが、本作は人間同士の駆け引きや、やり取りそのものが濃密で飽きのこない作風になっています。
さて、肝心のマットはゲイリー・シニーズ、ウィリアム・フィクナーらとともに強盗3人組の1人を演じています。30代になると20代の頃のギラついた若さはほとんど感じられないのですが、逆に渋みが増してこういうヨゴレ役がよく似合う。本作で演じたような役はまさに適役でしょう。
また強盗3人組の濃さもさることながらフェイ・ダナウェイ、ヴィゴ・モーテンセン、スキート・ウールリッチなど脇役も徹底して濃いメンバーが顔を見せている点にも注目です。
イン&アウト(1997年/原題:IN & OUT)
「恩師であるブラケット先生に感謝します。彼はゲイです」
昔の教え子で、今は映画界の大スターとなった男がアカデミー賞授賞式の場で何故か恩師のゲイをカミングアウト。この一件からブラケット先生は大騒動に巻き込まれてしまうが・・・。
昔の教え子にゲイ疑惑を暴露されるという珍騒動は、あれよあれよという間に進んでいき少し物足りなさの残る作品ではあるものの、ブラケット先生を演じたケビン・クラインのコミカルな演技が楽しい一本。
マットは映画スターとなったキャメロン・ドレイクという俳優の役を演じているのですが、注目していただきたいのはその容姿!なんと髪をブロンドに染めあげてきました!初めて観た時の衝撃といったら・・・。ファンでも思わず目が点になってしまうという変貌ぶり。まあ、これが慣れてくるとなかなか新鮮に感じるんですけどね。
小ネタとしてはアカデミー賞授賞式のシーンが逸品で映画ネタがほどよく盛り込まれており、かつ皮肉がたっぷりと込められていて笑えます。
トラブル・マリッジ カレと私とデュプリーの場合(2006年/YOU, ME AND DUPREE)
晴れて新婚ホヤホヤとなったカール(マット・ディロン)とモリ―(ケイト・ハドソン)だったが、友人で超トラブルメーカーのデュプリー(オーウェン・ウィルソン)が2人の愛の巣に居座ってしまい…。
何も考えずに観られるドタバタコメディ。マットの役は夢見ていた新婚生活をトラブルメーカーの親友にこれでもかと邪魔されるという実にかわいそうな役。お邪魔虫の役を演じたオーウェン・ウィルソンはこういうウザキャラがよく似合いますね。彼の場合はただウザいだけでなく、どこか憎めないという補正付きなのもいいです。
またオーウェン演じるデュプリーはオードリー・ヘプバーンの大ファンという設定なのですが・・・。
カール – 「『ローマの休日』オタクめ!お前にお似合いの映画は『フレッチ 殺人方程式』だ!」
デュプリー -「違うね。好きな映画の5本には入るけど」
というカールとデュプリーの会話がいかにも友人同士の掛け合いといった感じで楽しいのです。映画ネタが惜しみなく突っ込まれているのも嬉しいところ。
そして最も注目して欲しいのはマットをはじめ、オーウェンもケイトも左利きで3人が揃った食事シーンがとんでもないことになっている点。何でしょうこの左利き率は!まさかこの画を撮りたいがためにキャスティングしたんじゃあるまいな?と疑いたくなる謎の揃いぶり。
ちなみにこの時期、オーウェンとケイトはリアルに恋人同士だったはずなのですが、映画とはいえ実際のところケイトのお相手はやりにくかったのでは…?とマットに同情したり、しなかったり。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】テイカーズ(2010年/原題:TAKERS)
一年に一度、大掛かりな銀行強盗を決行し大金を手にする犯罪組織テイカーズと彼らを追いかけるロサンゼルス市警ウェルズの姿を描いたクライムムービー。
ポール・ウォーカーやヘイデン・クリステンセンらが演じるテイカーズたちがバシッとスーツを着こなしているその姿に惚れない人はいないのでは?一年に一度だけ犯罪を犯すという設定も大物ぶりがよく現れていていいですよね。
そんな彼らに私生活をなげうってまで追いかける刑事ウェルズをマットが熱演。仕事に対する執念は生半可なものではなく、妻とは当然離婚。休日に娘と一緒に出かけている最中でも追跡捜査をしてしまうようなダメなオヤジ。近年ではこういうくたびれた中年オヤジの役が妙にしっくりくる。そういえばマットが父親役というのもあまり見かけたことがないような?これから増えていくのかもしれませんね。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】Happy 52nd birthday!
ということで52回目の誕生日おめでとうございます!
今回紹介することができなかった『クラッシュ』、『メリーに首ったけ』、『シングルス』、『ワイルドシングス』、『ハービー/機械じかけのキューピッド』、『ジュエルに気をつけろ!』、『ザ・クリミナル 合衆国の陰謀』、『アーマード 武装地帯』、『ビッグタウン』などもマットの魅力がたっぷりとつまった作品です。
またデビュー作である『レベルポイント』をはじめ、『酔いどれ詩人になるまえに』、『フラミンゴキッド』などはDVDが廃盤となっており中古価格がとんでもないことになっているものもあるため、これらはぜひとも再販して欲しい作品ですね。
若くてきれいだった時期があるからこそ、さすがにこの年になるとマットも老けたな~と思わずにはいられないのですが、その年月を少しずつ渋みに変えているのはさすが!改めて今後の活躍が楽しみになってきました。みなさんこっちのマットもぜひ注目してみて下さい!
※2021年4月24日時点のVOD配信情報です。