『あやしい彼女』はおばあちゃんが主役の『ローマの休日』!

映画に夢中な書店員

ふじわらなお

73歳のおばあちゃんが突然ハタチに!?

おいおい、そんなの聞き飽きたぜ。って思ったそこのあなた

なーんて、実は私もなんです。

つい先日最終回を迎えたばかりの金曜ナイトドラマ『スミカスミレ』(テレビ朝日)は65歳の松坂慶子が45歳若返って桐谷美鈴になる話でした。

4月15日と22日にスペシャルドラマが放送される『民王』(テレビ朝日)も遠藤憲一と菅田将暉の親子が入れ替わる話です。

今度は倍賞美津子多部未華子に・・・・って。

最近そういうの多すぎやしないかい? 嫌いじゃないけど、むしろガッツリ観てるけど。でもさでもさ・・・なんてブツクサ言いながら初日に観てきました。

あやしい彼女

(C)2016「あやカノ」製作委員会 (C)2014 CJ E&M CORPORATION

面白かった!! さんざん笑いました。気付いたらワンワン泣いていました。

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あらすじ

カツ(倍賞美津子)は、73歳のおばあちゃんです。かなりの毒舌、頑固で変わりもの。雑誌の編集者をしている自慢の娘(小林聡美)と、メジャーデビューを夢みてバンド活動に明け暮れている孫(北村匠海)と3人で暮らしています。

カツは、戦争や夫との死別のために、貧しく大変な青春時代を過ごしました。

私の人生、苦労ばかりで楽しいことなんてなかった!

娘とケンカし、家を飛び出した先でふらりと入った写真館。

そこは、急速に若返ることのできる不思議な場所だったのです。シャッターが切られた瞬間、たちまちおばあちゃんはハタチの女の子(多部未華子)に!! 肩が回る、身体が自由に動く! 勢いにまかせてひったくり犯を懲らしめちゃいます。

さあ、おばあちゃんの新しい青春が始まります。

作品について

監督は水田伸生。阿部サダヲさん主演の『謝罪の王様』、『舞妓Haaaaan!!!』など、ポップで弾けた、ハイテンションな人情喜劇が魅力的です。

実はオリジナルは2014年に公開された韓国映画『怪しい彼女』。日本版とはまた少し違った、とってもステキな作品です。

怪しい彼女

(C)2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

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みどころその1. 物語を彩る魅惑の昭和歌謡

この映画の一番の魅力は、なんといっても劇中、多部未華子さんが歌う昭和歌謡の数々です。

透き通った真っ直ぐな声が何十年も前の曲を現代に蘇らせます。坂本九さんの「見上げてごらん、夜の星を」、笠置シヅ子さんの「東京ブギウギ」。

そしてなにより素晴らしかったのが、ザ・フォーク・クルセダーズの「悲しくてやりきれない」。カツの人生を反芻しながら歌われるその曲は、涙なしには聴けません。

みどころその2.『ローマの休日』彷彿とさせる胸キュン純情恋物語

ローマの休日

ローマの休日』といえば、オードリー・ヘップバーン演じるアン王女が、公務に追われる日々から抜け出し、彼女の正体を知らないグレゴリー・ペック演じる新聞記者のジョーとつかの間の休日を過ごすロマンチックな名作映画です。

『あやしい彼女』は、その 『ローマの休日』がたくさん登場します。

入り口にオードリー・ヘップバンの写真が飾られている不思議な写真館の名前は、「オオトリ写真館」。カツが咄嗟に作った偽名も「大鳥節子」。髪型や服装もオードリースタイルそのものです。若いころの憧れの存在・オードリー尽くしではじまるカツの青春は、それこそ『ローマの休日』

町内会の福引きの箱に手を突っ込み、悲鳴をあげて手がなくなったとおどけてみせるのも、かの有名な「真実の口」のシーンを彷彿とさせます。

彼女の才能を見込んだ音楽プロデューサー・小林(要潤)は、さながらグレゴリー・ペックのような優しく包容力のある大人の男性。2人のかわいらしいデートは、胸の高鳴りをおさえきれません!

でも、実はグレゴリー・ペックはもう1人いたりして!? な~んて。最後のサプライズは映画を観てのお楽しみです。

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みどころその3. 親子の絆

この映画のもう1つのみどころは、娘の視点です。

最初、カツは娘に「お前が生まれたから、全ておまえのために」と連呼します。苦労ばっかりの人生だったことを娘のせいにするなんて、それはちょっとヒドイですよね。そのことでケンカ別れしたまま、突然失踪してしまった母親。母親のことを知るために、娘は、彼女の過去を知る人たちに話を聞いて回ります。

次第に明らかになる波乱万丈の人生

この映画は、カツがもう一度青春を生き直すことで自分の歩んできた道を振り返るという視点と、娘が母親の人生を辿っていく視点という2つの視点でできています。その2つが交じり合う時、それまですれ違ってばかりいた2人の関係性はどう変わっていくのでしょうか

この親子を見ていて、もう一度観たくなった映画があります。

昨年上映されたフランス映画『カミーユ、恋はふたたび』

カミーユ、恋はふたたび

(C) 2012 F comme Film, Ciné@, Gaumont, France 2 Cinéma

こちらのおばちゃんも10代の頃にタイムスリップ!

不思議なのは、見た目はまるで変わらないのに確かに10代の頃に戻っていて、周りの人も違和を感じないことですが。上手くいかない人生を変えるために過去を必死で変えようと努力するヒロインの最後の選択は、『あやしい彼女』のカツと重なります。

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まとめ

人生には、たくさん選択肢があります。あの時この道を進んでいたら。あの時どうしてこんなことをしてしまったんだろう。

後悔しないように生きることは難しい。

この映画は、前に進むことに迷っているあなた、なにかに後悔しているあなたの背中をそっと押してくれる素敵な作品です。

 

※2022年3月20日時点のVOD配信情報です。

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  • chisa
    3.7
    愛に溢れてる映画だった。 なんでかわからないけどすごく涙が出た。 お年寄りになるまで生きるのも良いなと思った。 北村匠海かわいい
  • Maki
    3.5
    中身が強気なおばあさんの多部ちゃん…天真爛漫で可愛いし、歌も気持ちが良い。多部ちゃんの歌う『悲しくてやりきれない』良かった。 身体が突然若返るストーリーって沢山あるけど、温かい作品だった。やはり小林聡美さん素晴らしいし、志賀廣太郎さんのオチも◎
  • tAsq
    3
    2014年に韓国で放映され、その後中国、日本、ベトナムなどでリメイクされた【あやしい彼女】。日本版はコメディ色が強いけど、他はシリアスシーンがあって別の楽しみがありそうな作品。 作中で主人公が、子どもを叩いて叱る母親に語りかけるシーンで思わず泣いてしまいました。
  • azkyon
    3.6
    73歳が20歳に若返った。 容姿は変われど性格は変わらず口も悪い。 若い頃に楽しめなかった人生を取り戻そうとしながらも、やはり娘と孫を思う20歳のばあちゃん。 ハートフルな家族愛。 懐かしい歌がたくさんだった。 「恋の奴隷」久しぶりに聴いた。 奥村チヨ! (いやー!この名前知ってるなんて年だわ)
  • rii
    4
    多部ちゃんの歌めっちゃ好き
あやしい彼女
のレビュー(20939件)