2007年に公開された劇場版名探偵コナン第11弾が『名探偵コナン 紺碧の棺』です。
本作では、女海賊のアン・ボニーとメアリ・リードの残した財宝や、古代の海底遺跡が舞台になったりと、普段のコナンではなかなか登場してこなかったアドベンチャー映画のような舞台で繰り広げられる作品となっているのが特徴です。
普段の街中で起こる殺人事件を解決していくような展開からすると、この映画だけにやけに突飛な内容にも思われるかもしれませんが、今作で描かれる内容には、意外と実際の史実などもベースとなっていたりします。そこで今回は本作がどこまで実際の物事をベースにしているのかを徹底紹介していきます。
『名探偵コナン 紺碧の棺』(2007)のあらすじ
新聞の難問パズルを解いたことをきっかけに賞金を獲得したコナンたちは、神海島(こうみじま)へやってきたコナンたち。しかし予約が入っていないというアクシデントに見舞われ、観光課の岩永の案内のもと、美馬が経営する民宿で宿泊することになる。神海島では、近海で海底遺跡が発見され、2週間ほど前に宝が見つかったばかりで、島にはトレジャーハンターたちの姿があった。
少年探偵団たちは、岩永から宝探しマップを受け取り、宝探しゲームに参加。蘭と園子は別行動を取り、ダイビングに向かう。コナンたちが順調に宝探しを進めていると、血だらけで運ばれるウェットスーツの人たちを目撃する。
海で何かがあったことを察したコナンは、1人その場を離れ蘭のもとへと向かう……。
※以下、『名探偵コナン 紺碧の棺』のネタバレを含みます。
『名探偵コナン 紺碧の棺』が描いた海賊の世界
女海賊なんて本当に居たの!?と思われるかもしれませんが、何を隠そう今回劇中で語られる女海賊のアン・ボニーとメアリ・リードは、1700年代前半の海賊行為が盛んに発生していたとされる時代の記録に実際に名を残す海賊だったりします。
「ONEPIECE」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどの印象で、ファンタジー作品などに結び付けられることが多いですが、2人とも現実に居たとされる存在なのです。
作中で語られる内容もいくつかは実際に史実に残っている内容に沿っており、メアリ・リードは捕らえられた後に、獄中で病気によって死亡したとされ、アン・ボニーは死刑が執行された記録がなく、晩年の行方については明確には明らかになっていません。
『名探偵コナン 紺碧の棺』ではアン・ボニーが、神海島に船を隠し、メアリ・リードを待っていたと語られますが、彼女たちが日本に来ていたという事実や、ましてや日本の近海に船を隠していたといった話はなく、こういった要素はこの映画内で描かれた独自の設定と言えます。
海底遺跡という浪漫あふれる舞台
映画の中の架空の要素でもう一つ大きなものが、クライマックスの舞台となる海底遺跡でしょう。「インディ・ジョーンズ」シリーズを思わせる遺跡には死のトラップが仕掛けられており、持ち前の反射神経で蘭がそれを避けるなど、スリルのあるシーンが用意されていました。
本作に登場したような海底遺跡は実際に日本にあるのかと言えば、これももちろんこの映画の独自の設定で、そもそも海底に建造物を作ることは難しく、世界の各地に存在するジャマイカのポート・ロイヤルや、ギリシャのパブロペトリなどの海底遺跡は元々は陸上にあったものが、海に沈んだとされるものがほとんどです。映画に登場するような海底遺跡を造るのはよほどじゃないですが難しいでしょう。
ただ、日本にも実は有名な海底遺跡が、沖縄・与那国島に存在します。1986年に与那国島沖の海底に人の手によって加工されたかのように観られる地形が発見され、話題になりました。残念ながら現状は、人為的な造りである証拠が見つかっていませんが、綺麗な造形がもしも古代の人間によって造られたのであれば、なんだか浪漫のある話です。まだまだ海底の世界にも未知は多いので、日本の海底にも知られざる文明が発見されるなんてことがあれば素敵ですね。
サメが人を襲うのも実はレアケースだった!
映画の嘘で言えば、実はサメについても一点勘違いしないでおきたいポイントがあります。それは、映画『ジョーズ』で描かれているようなサメが人を襲うような事件は、現実には極端なほどに稀であるということ。本来サメには人喰いザメのような種類はおらず、通常サメが人間を襲うことはほぼないとされています。
また、サメは水中の血液を感知できると言いますが、それほど嗅覚が優れているということもなく、よほどの至近距離でなければサメは感知ができないそう。『名探偵コナン 紺碧の棺』では、トレジャーハンターが園子を傷つけることで囮にしていましたが、実際は気休め程度にしかならないどころか、万が一園子がサメに襲われてしまったら、それをきっかけに余計にサメを引きつけることになりかねないので、トレジャーハンターは余計なリスクを負っているだけとも言えます。
映画に登場したトレジャーハンターたちはもしかしたら、サメ映画を見過ぎてサメへの間違った危険意識を持ってしまっていたのかもしれませんね。
もちろんサメが人間を襲わないという保証は全くないなので、サメは通常人間を襲わないとはいえ、もし海で遭遇しても意味もなく近づくのは避けましょう。
“トレジャーハンター”も実在する?
そもそもトレジャーハンターという存在もあまり身近には聞かない職業なので、現実味を感じないという人もいるかもしれません。実際、日本では法律での制限などもあるため、例えば地中に隠された埋蔵金探しなども気軽にできず、稀に発見される貴重な宝物も工事の過程で、偶然発見されるということがほとんどです。
ただし、海外に目を向けてみると、趣味として宝探しをしている人や、沈没船などをしっかり合法的な許可を得て調査し、財宝を見つけて生計を立てているようなプロも存在するそう。とはいえ、そういったプロのトレジャーハンターもほんの一握り。小規模な設備や人材だけでは、トレジャーハンターとして生活していくのは困難でしょう。
『名探偵コナン 紺碧の棺』に出てきたのはトレジャーハンターと称していながら、やっていることはかなり野蛮でした。彼らは実際はトレジャーハンターではなくただの犯罪者だった、というオチもしっかり忘れないでおきたいですね。宝探しも清く正しくです。
『名探偵コナン 紺碧の棺』を観て「これ本当にそうなの?」というポイントがいくつかあったと思いますが、それがこの記事で少しは晴れてくれれば嬉しいです。なにがフィクションで、なにがノンフィクションなのかを知っていると、より『名探偵コナン 紺碧の棺』がコナン映画きっての大きなスケールで描かれた作品であることが実感できるのではないでしょうか。
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※2020年12月20日時点の情報です。