どうも、侍功夫です。
好きな芸能人の髪型や私服に憧れて、同じ髪型にしたり同じものを買ったことは、誰でも1度はあると思う。あの行為を映画製作において行うのが今回のテーマ「オマージュ」だ。
よく「パクリ」と混同されがちだが、そのあたりの違いについてはコチラを参照。つまり、作家が自作を通して他の映画へ愛の告白をしている情景が「オマージュ」になる。今回はそんな、映画に対する愛に溢れた描写を取り上げていく。
『ドッペルゲンガー』の『レイダース 失われたアーク』
新作『散歩する侵略者』でついに「宇宙人による侵略」をテーマに取り上げた黒沢清監督。かねてからスティーヴン・スピルバーグのファンであることを公言していたが、よもやソコでソレを!?とファンのド肝を抜いた場面だ。
『ドッペルゲンガー』
医療関連の技術者が開発したロボットを巡る争奪戦の中、悪漢が廃屋に侵入すると階段の上から巨大なミラーボールが転がってくる。
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』
冒頭、チャチャポヤン寺院の殺人カラクリ場面へのオマージュである。
『レイダース〜〜』が公開された当時から当該場面はCMなどで繰り返し放映され、パロディでもよく引用された有名な場面ではあるが、静謐でシックなトーンの黒沢作品に突如として投入されたインパクトは絶大であった。
上記したように数多くの(主にパロディ)映画などで引用された当該シーンだが『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では、『レイダース〜〜』でインディ・ジョーンズを演じたハリソン・フォード本人が、転がりながら襲ってくる猛獣“ラスター”を前に、オリジナルと全く同じボディアクションも加えて再現したのも記憶に新しいところだろう。
スピルバーグ
日本を代表する名監督である黒沢清からも愛の告白を受けるスピルバーグ。新作では、狂ったようなサブカルチャーアイコン総出演の嵐と、マイケル・ベイの十八番を奪う大破壊のスペクタクルを見せる『レディー・プレイヤー・ワン(原作)』予告が解禁され、世界中のボンクラを歓喜の渦に叩き込んでいる。
そのスピルバーグの作品には、シネフィルらしい多くのオマージュが散見される。
『激突!』の『大アマゾンの半魚人』
TVムービーながら、スピードとサスペンス溢れる展開で全世界にスピルバーグの名を轟かせた『激突!』。カーチェイスがメインになるのだが、トラック運転手の顔を写さずトラック自体を意思のあるモンスターのように見せることで意図的に「怪獣映画」として演出されている。
ラストで、トラックがくぐもった咆哮をあげながら崖から落ちていく時の“咆哮”が『大アマゾンの半魚人』の「半魚人」ギルマンの叫び声なのも、その証左である。
『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の『キングコング』
『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』ラスト。本土に連れてこられたTレックスのお母さん。子供を追いかけ、ひとしきり大暴れしたところで摩天楼のビル群と満月を背景に咆哮をあげる。これは『キングコング』で月を見たコングが故郷を思い、月に近づこうとエンパイアステートビルに昇る場面へのオマージュだ。
物言わぬTレックスが望郷の思いを抱いていることを表している。
『宇宙戦争』の『ゴジラ(1954)』
『宇宙戦争』
突如現れた三本足のロボット“トライポッド”が世界各地に出現。人々は逃げ惑い、トム・クルーズ演じるレイも息子と娘を連れて、ニュージャージーから2人の母親のいるボストンへ向かう。途中、暴徒に車を奪われ、しかたなくフェリーに乗り込む。と、フェリー乗り場を見下ろす丘の上にトライポッドが出現する。
この場面、1954年の最初の『ゴジラ』で初めてその姿を現す大戸島の場面そっくりに作られている。かつてローランド・エメリッヒがリメイク『GODZILLA ゴジラ』を作ると聞き「オリジナルへの冒涜にしかならないからやめなさい」と直接諌めたと言う伝説を持つスピルバーグによる「怪獣ってのはこう撮るんだよ!」という思いの篭った鳥肌モノの名場面だ。
ゴジラ
スピルバーグも大ファンである世界に誇る日本の大スター、ゴジラ。当然のように多くの作品からオマージュが捧げられている。
海からやって来る
巨大ロボットと大怪獣が戦う『パシフィック・リム』では“カイジュウ”は太平洋に開いた時空の裂け目から出てくる。そのため、必ず海の中から現れる。これはゴジラが必ず海から登場することへのオマージュだ。