2006年のドラマデビュー以来、さまざまなフィールドへ活躍の場を広げ続けている女優・川島海荷。テレビドラマ、舞台、映画などでの女優としての活動に留まらず、日本テレビ系情報番組「ZIP!」の総合司会を務め、いまや朝の顔としてもおなじみの存在だ。
その川島海荷が2017年末、高名な「ステラ・アドラー・スタジオ」主任講師であるロン・バラス氏による演劇ワークショップを受講した。彼女は何を想い、何を求めて同ワークショップに参加したのか? そして、体験を通して女優・川島海荷は、どのように感じ、成長し、今後に活かしていけるのか? 芸能界デビューから10年、決して立ち止まることがない女優・川島海荷の決意や想いについて、彼女の過去・現在・未来をテーマに話を聞いた。
過去:〜10代
「やる気はありますか?」
――早いもので芸能界に入って10年以上が経ちましたが、そもそものきっかけは何だったのでしょうか?
渋谷のスクランブル交差点で今の事務所にスカウトしていただいたことがきっかけでした。でも最初は、芸能のお仕事にまったく興味がなかったんです。当時はおしゃれにも興味がなく、上下ジーンズの素朴な女の子だったので、面接の時も「やる気はありますか?」と聞かれたほどでした。わたし自身、正直やる気はなかったかもしれないくらいの気持ちでいましたが、両親の「人生のいい経験にはなるから、軽い気持ちで始めてみたら?」というアドバイスみたいな言葉に後押しされて、スタートした感じだったと思います。
――女優やアイドル活動など、芸能活動へのあこがれはなかったわけですね。
ただ、ドラマっ子ではありました。毎日のようにテレビで1本は欠かさず観ていて、2本ある日は本当にうれしくて。全部の曜日のドラマを欠かさず観ていました。だからスカウトの時に、「あの世界に入れるの?」という好奇心は、少なからずありました。最初は気負いすることなく、楽しみながら過ごしていたと思います。オーディションも受かればラッキーに感じるくらいでプレッシャーもなく、ノーストレスのプラス思考ではあったと思います。
「カルピス」のCM以降、街で気づかれるように
――言っても中学生ですものね。芸能活動をしている意識みたいなものが芽生えた時期は、いつぐらいでしたか?
毎日が楽しく充実していて、有名になりたいモチベーションではなかったんです。まさか、この仕事を今の年齢まで続けることになるとは思っていなかったので、その時その時の仕事を無我夢中にやっていました。でも、ドラマ「役者魂!」(06)や映画『Life 天国で君に逢えたら』(07)の後くらいから、次第に街で気づかれるようになると、ヘンな感覚に陥りました。自分自身がひとり歩きしているような感覚というか、ドラマの中の自分を観ているようで違和感もありました。自分がずっと観ていたドラマの世界に入れてうれしいというよりは、ヘンな感じがしましたね。「カルピス」のTVCM以降は、すごく注目されるようになったので、意識するようにはなりました。
――映画『Life 天国で君に逢えたら』で、初めて川島さんを観た時の衝撃は、今でも鮮明に覚えています。終盤、健気に波に向かっていくシーンを観て、「この子は!」と思ったマスコミ関係者も少なくなかったはずです。
懐かしいですね(笑)。もう無我夢中でした。すごくわたしにとっても思い出深い作品ですが、感覚だけで演じていた部分もあったので、全身でぶつかっていた作品でした。
映画の中のヒロインになりたい
――女優としての意識が代わったような、そのきっかけとなった映画はありますか?
自分の作品ではないのですが、玉木宏さんと宮﨑あおいさんの『ただ、君を愛してる』(06)です。『Life 天国で君に逢えたら』の新城毅彦監督の作品でもあって、映画を観た瞬間に吸い込まれていくような感覚になりました。宮﨑さんがすごくかわいくて、めがねを取った瞬間のシーンとかすごくて、感情移入してしまいましたね。その時、自分も彼女のような女性になりたいって思いました。宮﨑さんのようなお芝居がしたいわけではなく、そういう人になりたいみたいな感覚……それは、映画を観て影響を受けるということを、初めて体感した作品かもしれないです。
――趣味は映画観賞だそうですが、芸能活動のスタートと同時期に、映画の魅力にも気づいていった感じでしょうか?
そうですね。それまではドラマっ子でしたが、映画に触れる機会は多くなりました。特に大学生になって以降は、よく観ています。でも意外に仕事目線では、観られないです。感情移入型の癖が抜けないので、勉強のために観ているかというと違うかもしれないです。いろいろなことを気にし始めると楽しめないものですが、わたしの場合はただのファンとして鑑賞をしているだけかもしれないです。ただ最近は、レポートや取材で映画に触れる機会もあるので、そこでは同じ世界にいる人間として衝撃を受けることが多いですね。(インタビュー・文:鴇田崇、写真:岩間辰徳)
<銀座九劇アカデミア>
“人と情熱とエンタテインメントが渦巻く劇場”として、2017年3月にオープンした「浅草九劇」。あらゆる表現を発信していく劇場の基盤となり、「プロフェッショナル」を育む場所として「銀座九劇アカデミア」は誕生しました。これまで、小野寺修二、広崎うらん、ベッド&メイキングス、長塚圭史など上質なワークショップを展開。今後もここでしか体験できない、クリエイターやアーティストのためのワークショップやイベントを開催していく。
公式HP:https://asakusa-kokono.com/academia/