2019年の4月から9月までの2クール放送され、考察ブームの火付け役となったドラマ『あなたの番です』。2021年には映画化。ドラマのテーマとなった交換殺人ゲームが行われなかった世界を描いているが、こちらも次々と人が殺されていく。どうして、事件が起こったのか、どういう結末を辿るのか。ドラマとの違いから犯人までネタバレありで『あなたの番です 劇場版』について解説していく。
『あなたの番です 劇場版』(2021)
2019年、マンション「キウンクエ蔵前」に引っ越してきた手塚翔太(田中圭)と菜奈(原田知世)のカップル。その当日、マンションの住民会が開かれていると聞き、菜奈ではなく翔太が参加することに。交換殺人の話題が飛び出すも、翔太の助言もあり、その話は広がることなく終わった。
その2年後、ようやく正式に結婚した翔太と菜奈は、マンションの住人たちを招待して船上でウェディングパーティーを開催。みんなで幸せな時を過ごせると思いきや、管理人の床島比呂志(竹中直人)の死体が見つかる。それをきっかけに、次々と人が殺され、連続殺人事件に発展。
推理好きの翔太と菜奈は犯人を見つけるべく、動き出すが……。
公式サイト:https://anaban-nana-shouta.jp/
企画・原案:秋元康
脚本:福原充則
監督:佐久間紀佳
※以下、ネタバレを含みます。
管理人の殺害からはじまった連続殺人
翔太と菜奈のウェディングパーティーが終わったあと、管理人・床島の死体が見つかる。その後、黒島の部屋から火だるまになった男が発見され、死亡。その男が南雅和(田中哲司)だった。
犯人は誰なのか推理していた翔太は当初、「キウンクエ蔵前」住人の黒島沙和(西野七瀬)の彼氏で、パーティー会場を覗くなど不審な行動が多かった二階堂忍(横浜流星)に目をつけていた。
しかし、同じく住人の田宮淳一郎(生瀬勝久)から黒島が元カレ・波止陽樹からDV被害にあっていて、その彼がなぜかすでに亡くなっていることや彼女のまわりに死が多いことを聞き、一連の犯行は黒島なのではないかと疑い出す。
しかしその最中、黒島が殺され、彼女と陰で繋がっていた内山達生(大内田悠平)の死体も見つかってしまう。
ドラマ版との共通点と相違点
この作品はドラマ版と共通している設定と、異なる部分があるので、事件の真相を解説する前にまずそこを押さえておこう。
共通点
・黒島は快楽殺人者で、南の娘と高校のときの家庭教師を殺した過去を抱えている。
・内山は黒島を何かとサポートしている。
・南は娘を殺した犯人を追っていて、その犯人こそが黒島だと思っている。
・黒島は「キウンクエ蔵前」住人・赤池幸子(大方斐紗子)の隠し孫である。
・殺人事件の捜査に刑事の水城洋司(皆川猿時)と神谷将人(浅香航大)が登場。
相違点
・二階堂は「キウンクエ蔵前」の住人ではなく黒島の彼氏として登場。
・南は黒島を追って、「キウンクエ蔵前」の住人ではなく、翔太たちのウェディングパーティーが開かれた船員として登場。
・南と同じく黒島を追って新キャラクター・浦部優(門脇麦)が船の客として登場。
・ドラマ版では名前しか登場しなかった早川教授(酒向芳)が、ウェディングパーティーが開かれた船で実験を行っている。
黒島への殺意が連続殺人につながる
4人殺されたが、ここまで殺された人が多くなったのは、黒島を狙う人が多かったこと。
まず、黒島は赤池幸子の隠し孫で、息子の吾朗(徳井優)よりも遺産の取り分が多いことを、彼の妻である美里(峯村リエ)が嗅ぎつけ、それを不服に思っていた。そして管理人・床島と結託し、ウェディングパーティー後、船上で黒島を殺す予定だった。しかし、実際には床島が殺されてしまう。
また、南は娘を殺した犯人が黒島だと突き止め、こちらも船上で殺害するため船員として潜入。彼女が不在中に部屋へ潜入し、殺す予定だった。
そしてもうひとり同じ目的で船にいたのが、新キャラクターの浦部。彼女は亡くなった黒島の家庭教師の恋人だった。彼の死を不審に思い、独自に調べていった結果、黒島が殺したと思うように。そして、船に客として潜入。黒島が部屋を離れている間に船内を停電にし、彼女が部屋に戻った瞬間にドアの隙間から室内に火を放ち殺すつもりだった。
ところが、そのときに部屋に入っていったのは南。黒島だと勘違いして火を放ったため、南が火だるまになって死んでしまったのだ。
人を本気で愛したせいで黒島は殺害された!?
ドラマ版と同様に、一連の黒幕だと思われた黒島が殺されてしまった。おそらく彼女が殺人を実行したのは床島だけで、南の殺害には関わっていないのだが、なぜ彼女が殺されなくてはならなかったのだろうか。
快楽殺人者で殺人衝動がある黒島。しかし二階堂と付き合ったおかげで、人を愛する気持ちが芽生え、“普通”の女性として生きたいと思うように。
そこに現れたのが捜査のため船に乗ってきた刑事の神谷。実は彼は黒島と以前、付き合っていたのだ。もちろん現在は二階堂と付き合っていることを知っているが、まだ未練が。
自身に振り向いてくれない憎しみから、黒島に殺人衝動があることを利用し、「生きていたら愛している二階堂をいつか自身の手で殺める」と彼女を脅し、黒島を殺害。彼女も二階堂を殺めることを未然に防ぐため、神谷に殺されることを受け入れてしまう。そして彼女をサポートしていた内山も神谷は殺害していた。
愛を感じられる作品に仕上がっている劇場版「あな番」
劇場版を見て感じたのは、ドラマ版よりも人への愛を感じられる作品に仕上がっているということ。
基本的に黒島への殺意をメインにした殺人事件を描いているが、その裏には誰かへの愛があった。例えば、南は殺された娘に、浦部は殺された恋人に。
また黒島も自ら神谷に命を差し出すことで、「二階堂を自分の気まぐれな衝動で殺さない」という愛情を示している。しかも、内山から預けられていた早川教授開発の救命剤(海水をかけると蛍光色が浮かび上がる)を利用して、誰が自分を殺した犯人かわかる仕掛けを施していた。
これもひょっとしたら、神谷に未練がないことを示し、自分が愛しているのは二階堂だけということを伝えていたのかもしれない。
そして主人公の手塚夫妻。ドラマ版と相変わらずの暴走ぶりを見せる翔太。そのせいで菜奈から一瞬、犯人と疑われるも、無事2人の熱意もあり事件が解決。今回は菜奈が死ぬこともなく(彼女が動揺したせいで、翔太が怪我をしたシーンはあったが)、夫妻の愛がより深まっていた。
最後の最後まで見逃せない
今回、ドラマ版とほぼ同じキャストが出演していたがその中で劇的な変化があったのは、尾野幹葉(奈緒)が妊娠していたことだ。キャラクターは相変わらずで、翔太を翻弄するような態度を見せるが、子供の相手は誰だかわからない。しかし、最後のシーンでまさかの父親が発覚。
また、エンドロール後にも物語が続いている。これは、ドラマ版第1章ラストに登場するあのシーンとそっくりな場面。今回もあの人にピンチが訪れるのか……!? と、ドキドキしてしまった。
事件が解決したあとも驚きがある仕掛けに、最後の最後まで気が抜けない作品である。
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※2022年11月18日時点の情報です。