【9話考察】乃木が「別班の任務」と答えてしまったワケ。ドラマ日曜劇場『VIVANT』ネタバレ考察

TBS系日曜劇場『VIVANT』、第9話までのストーリーを考察!乃木が嘘をつけない理由やFとの関係、本当の敵は誰なのかを考察します!

TBS系日曜劇場『VIVANT』。9話までの放送でノゴーン・ベキの過去やテントの内情が明らかになる中、いよいよ最終回は目前だ。乃木が「別班の任務」だと明かしてしまった理由、本当の敵は誰なのかを考察する。

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※以下、ネタバレを含みます。

VIVANT』第9話までのあらすじ

【9話考察】乃木が「別班の任務」と答えた本当の理由。ドラマ日曜劇場『VIVANT』ネタバレ考察

別班を裏切り、父であるノゴーン・ベキ(役所広司)へ会うためテントのアジトへ向かった乃木憂助(堺雅人)。乃木はテントが資金の大半をバルカ北西部の土地購入に充てていることに疑問をもつ。その乃木に対し、土地を購入する目的をベキは明かした。バルカ北西部には純度99%のフローライトが眠っており、このフローライトを採掘し潤沢な利益を得ることで半永久的に孤児や貧しい人々に富を分配することを目指していたのだ。理由に納得した乃木は別班がもつ情報網を使い、株の信用取引を提案して残る土地に必要な費用を稼ぐことに成功。組織から信頼を得ていく乃木は、ベキやノコル(二宮和也)など親しい幹部が集まる食事会に招かれ、ベキの公安時代やバルカで起こった過去の話を聞く。ノコルだけでなくベキとともに歩むバトラカ(林泰文)やピヨ(吉原光夫)、そしてアディエル(ツァスチヘル・ハタンゾリグ)との関係も明かされた。

家族の一員として馴染んでいく乃木かと思われたが、問題が発生する。フローライトの存在が政府にバレてしまったのだ。情報をリークした犯人は乃木ではないかと疑うノコルのもとに、テントのモニターから「死んだはずの別班員の生存写真」が送られてくる。リークの犯人として捕えられた乃木はベキに問いかけられ、別班の任務としてテントに来たと伝えた。

【考察】乃木はなぜ「別班の任務」と答えた?

1話から8話まで目まぐるしく展開を繰り広げた『VIVANT』。9話は乃木とベキとの対話を中心にテントの謎を解明する回となった。これまでのテントのイメージは巨大なテロ組織であり、別班が始末するべき日本の敵だった。しかし、9話でのテント、そしてリーダー、ノゴーン・ベキは「家族」であった。彼らを包む団欒のようなひととき。しかし、物語の最後には乃木は自身の目的が「別班の任務」だと明かしてしまう。何故そのような答えを選んだのだろうか。

乃木に応えるノゴーン・ベキと悪役の崩壊

テントのアジトで活動を始めた乃木はすぐさま組織の内情を探り始めた。テントやムルーデルの収支報告書を調べ、バルカ北西部の土地購入に組織解明の鍵があると確信する。その様子をバトラカはベキに報告していた。てっきり乃木を怪しみ監視しているのかと思っていたが、乃木の疑問に一つひとつ答えるためだったようだ。資金の流れの謎、ノコルが拒否したムルーデルの収支報告書、土地購入の理由、そしてベキの過去。ベキは息子が求める答えを提供していたのだ。

幾度も状況が変化し誰もが敵に見える『VIVANT』だが、9話のベキが見せた表情に視聴者の心は揺らいだだろう。食卓を囲み過去を語るベキは父親そのものだった。妻や息子、孤児たちを想う気持ち、「テント」に込められた「家族や仲間が集まる、大切な人達が集まる場所」という意味。さらにはテントの最終標的が日本だという事がデマだと判明。これまで描いていた恐ろしい組織像はなんだったのだろう。乃木はここで気付いたのかもしれない。テントは「日本に害をなすもの」ではなかったと。

乃木とFの奇妙な関係に理由が隠れる

政府へのリークを疑われて身柄を拘束された乃木は、自分が別班の任務としてアジトに潜入したことを告白する。しかし、それは自分の身を危険に晒すことと同じだ。Fは必死に止めていたが、どうして乃木はそんな選択をしたのか。それは「嘘はやめてくれ」と問う父に、子として誠実に応えたかったからではないだろうか?

そもそも乃木の本心は別班の目的とは別だったはずだ。これまでの考察でも度々触れたが、6話では乃木とFの間に意見の対立があった。「別班としてベキを始末する」というFに対して、乃木は「愛情を注いでもらえるかも」「会って話したい」という考えを持っていた。これは今も変わらない乃木の気持ちだと思う。ベキもそれは乃木の本心だと理解しているようだった。しかし、それでも「別班の任務」だと伝えたのは、Fが別班の任務を遂行しているからではないか。

乃木とFの関係は多重人格としては少し特殊だ。解離性同一性障害として有名な「ビリー・ミリガン」は24の人格を持つ男性だ。彼についてはノンフィクション小説の出版や、2021年にはNetflixで『ビリー・ミリガン: 24の人格を持つ男』というドキュメンタリーが配信されている。多重人格をテーマにした作品の中には、彼をモデルにしていたり、引き合いに出して説明するものも多々ある。ビリー・ミリガンをはじめ作品に登場する多重人格キャラクターの多くは別人格が表に出ている時、自分自身はその時の記憶を持たないことが多い。一方、乃木はFと記憶を共有している。自分が別班であることも、Fが行う出来事もきちんと把握しているようだった。多重人格というより、乃木の第二の意志のような存在なのだろうか。(ちなみに作中で二人の関係を多重人格、あるいは二重人格などと言及はされていない)

つまり、乃木は自分の中のFが「別班の任務」としてテントのアジトにいることを知っているのだ。だからこそ、ベキへの気持ちに嘘はなくとも「別班の任務ではない」というのは嘘になってしまう。子として父に嘘をつきたくないという気持ちが、Fの静止を振り切ってでも正直に伝えてしまった結果なのではないか。9話を通して自分の疑問に誠実に向き合ってくれた父。「憂助!」と呼びかけるベキの声はとても印象的だった。

【考察】残るは最終話。『VIVANT』の敵は誰なのか

毎回大ボリュームの本作だが、9話にしてテントの最終標的が日本ではないことが明かされた。今までテントを敵と捉え、別班、公安それぞれ動いていたはずだが、最終話は一体誰が敵になるのだろう? 9話までの気になるポイントを考えつつ、最終回に備えたい。

まだテントを信じきれない、明美の遺言

子の疑問に丁寧に答える父、父の問いかけに精一杯の誠実さをもって答える息子。緊迫した場面だったが、一つの家族の形を目の当たりにした。乃木は目的を告白したが、テントは日本を標的にしていないのだから、すでに別班の敵ではないのではないか?  ただし、ベキを清廉潔白と判断するには引っかかることがある。それは亡き妻・明美の遺言だ。「憂助を探して」という言葉と共に告げられた「私達をこんな目に遭わせたやつを私は絶対許さない。復讐して」だ。「私達をこんな目に遭わせた奴」とは公安か、イスラム系武装組織か……。ベキはこの遺言にだけ具体的な行動を見せていない。8、9話で大部分が明かされたテントだが、まだ隠していることがあるのだろうか。

「最終標的、日本」を広めていたのは誰だ?

テントの目的が日本ではないことが明かされたが、モニターの山本やアリなど一部のテント関係者は日本が標的であると乃木に伝えていた。この情報を影で操っていたものが最終の敵だと推測する。山本はとにかく、テント幹部のアリがこのことを言っていたのであれば、テント関係者が絡んでいる可能性が高い。テントで怪しいと断言できる人物はまだいないが、乃木に敵対心を抱くノコルは疑いたくなってしまう。9話で「あなたは7回撃たれた狼だ」というセリフがノコルの顔のアップと共に流れる。これはピヨの発言だと公式がXで言及している。モンゴルの諺で「何回も困難を乗り越えたあなたはその経験で困難を克服したね」という意味だそうだ。おそらく株の信用取引をやり遂げた乃木をねぎらった言葉と思われるが、ノコルは不満そうな表情をしていた。乃木へ嫉妬の感情をむき出しにするノコル。残る1話での彼の動きは注目だ。

別班生存の写真を送ったのは?

乃木を窮地に追いやった別班員たちの生存写真。本編では「モニターからのメール」と言われていたが、送信者は誰なのだろう。これまで味方だと思われた人物が裏切っていてもおかしくない。9話で全く登場のなかった野崎の動きも気になる。乃木(F?)から謎の言葉(8話考察参照)を受け取り、またスマートフォンで何かを受信している様子もあった。乃木あるいはFから使命を託された野崎がモニターを装って裏で動いているのでは、と期待してしまう。

何はともあれ、次回で最終話を迎える『VIVANT』。裏切りや数々の伏線に多くの視聴者を振り回した2カ月間だった。最後をしっかりと目に焼き付けよう。

VIVANT』作品情報

日曜劇場『VIVANT』

原作・演出:福澤克雄

脚本: 八津弘幸、李正美、宮本勇人、山本奈奈 演出: 宮崎陽平、加藤亜季子

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/

 

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2023年9月12日時点の情報です。

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