TBS系日曜劇場『VIVANT』。本作は大人気ドラマ『半沢直樹』(TBS系)で演出を務めた福澤克雄が原作を担当しており、主演が堺雅人であることからも、放送前から話題を集めた。また、事前にあらすじや設定、登場人物を一切明かさないといったことも異例だった。現在は放送するたびにSNS上で物語の予想や、登場人物の正体を考察する声が集まっている。
その理由は、規模の大きいストーリー展開と信用できない登場人物たちの行動によるものだろう。視聴者は、1話から3話で広大な砂漠での逃亡劇にハラハラさせられたかと思いきや、4話では主人公の正体に驚くこととなる。映画のようなスケールのダイナミックな映像と、俳優の熱のこもった芝居。見応えは抜群だ。
まだまだ謎が多い『VIVANT』。これまでのあらすじを踏まえながら物語の見どころと今後の注目ポイントについて紹介する。
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『VIVANT』第1話〜第5話までのあらすじ
中央アジアのバルカ共和国で太陽エネルギープラント事業を進める日本企業・丸菱商事。現地のインフラ会社・GFL社に対し、正規の契約金の10倍の1億ドルが誤送金され、事業を担当していた乃木憂助(堺雅人)は関与を疑われる。
乃木は、誤送金された契約金を追う中で、現地テロ組織・テントのアジトに潜入。自身も自爆テロに巻き込まれるも、テロの重要参考人としてバルカ警察のチンギス(Barslkhagva Batbold)に追われてしまう。乃木は、テロ組織のアジトで居合わせた日本の公安・野崎守(阿部寛)と、バルカ警察から2人の仲間と見なされたWHI(世界医療機構)の医師・柚木薫(二階堂ふみ)とともにバルカ警察から必死の逃亡劇を繰り広げる。
無事日本に帰国し、野崎とともに誤送金事件を調べていく乃木。誤送金事件の原因は、丸菱商事で乃木の同期である山本巧(迫田孝也)が、天才的なハッカーの顔を持つ太田梨歩(飯沼愛)を操り、経理システムを書き換えたことによるものだった。実は山本はテロ組織・テントの一員で、組織に金を送るためにこの事件を起こしていたのだ。
野崎は山本を捕えるために奔走するも、一足早く自衛隊の影の諜報部隊・別班の黒須(松坂桃李)が山本を確保。黒須と山本の元に乃木が現れ、自分も別班であると明かした。その後、山本にテロ組織の情報を自白させ、黒須と乃木の二人は山本を自殺に見せかけて始末する。
山本が不自然に始末されたことを疑った野崎は、乃木は別班ではないかと疑い、バルカ共和国での乃木の行動と経歴を調べる。また、乃木はテロ組織・テントの日本担当であると明らかになったGFL社のアリから組織の情報を得るために、再びバルカ共和国へ向かった。
【考察】次々と正体が明らかになる登場人物たちの伏線行動
このドラマが度々SNSを賑わせる魅力のひとつは、はりめぐらされた伏線の多さだ。
第1話ではアマン社に潜入した乃木がザイールに「お前がVIVANTか?」と問われ、第2話では野崎がVIVANTは自衛隊の影の諜報部隊・BEPPAN(別班)と推理した。野崎から別班の存在を語られた乃木は別班を知らない様子を見せるが、第4話で乃木が別班であることが明らかになった。この事実を知った上で物語を振り返ると、乃木にはあやしい行動が多々散見される。
そもそも乃木はCIAの友人であるサムの協力を得てザイールの居場所を突き止めている。一介の会社員にCIAの友人がいるのは少しおかしい。また、第4話で、GFL社のアリ(山中崇)がテロ組織・テントの日本担当であることが明らかになった。そもそもGFL社との契約を進めたのは乃木本人であり、誤送金事件が起きた直後に乃木の上司が「だから中央アジアの無名の企業なんてやめとけって言ったんだよ」と乃木を責めていた。第4話で乃木は、別班の任務のために海外を飛び回れるようにあえて出世コースから外れていたと語っている。別班の任務をうまく進めるために丸菱商事の社員としてバルカ共和国との仕事を担当し、怪しんでいたGFL社との契約を進めていたと考えられる。
第5話では、データのハッキングやスマホのすり替えなど、種明かし的に乃木のこれまでの行動を振り返っていた。第1話から、うだつの上がらない下っ端会社員を演じていた乃木だったが、実は彼こそが別班ではないかと疑うことができるシーンは複数存在していたのだ。
野崎は何故、乃木をマークしていたのか
乃木と野崎の行動は、野崎がザイールの自爆テロから、乃木を守ったことから始まる。野崎は乃木を保護するのは、日本のためだと語っている。また、野崎はたびたび乃木を怪しむような目線を向け、乃木が別班と明らかになる前に公安の情報網を使って、乃木の経歴を調べていた。日本に帰国したあとも警護と称して乃木を見張っている。
そもそも野崎は部下のドラム(富栄ドラム)に依頼して、乃木に盗聴器を仕掛けていた。その理由として野崎は「商社マンがザイールに接触しようとする情報が入ってきた」と話しているが、ドラムは乃木がCIAのサムからザイールのことを聞く前に、乃木に盗聴器を仕掛けていた。公安はもともと乃木を何らかの理由で追っていたのではないか。公安と別班はやり方は違えど、日本を守るという目的は一致している。なぜ野崎は別班を探しているのか。
山本の不自然な死により、野崎はさらに乃木に疑いの目を向けている。第5話では、乃木がドラムの仕掛けた盗聴器に気づいていたことや、ザイールが自爆する際に拳銃を打っていたことに野崎は気づいてしまった。また、乃木がテロ組織・テントを追う理由が、テントに自分の父親がいるからだということも。乃木は今後も野崎に素性を隠しながら、テントを追うことはできるのか。
【考察】薫は本当にただの医師?乃木が固執する理由は
ザイールの自爆テロの後に乃木と野崎が入院する病院で出会った薫。WHIの一員として、バルカ共和国の病院に勤めていたが、乃木らとともにバルカ警察に追われ、日本に帰国した。乃木は薫と少女・ジャミーンに異様なまでの執着を見せている。
乃木はバルカ共和国からの逃亡よりもジャミーンの手当を優先させる薫に賛同したり、砂漠を通っている間にラクダから落ちた薫を何時間もかけて探したりという行動を見せた。第4話では、ジャミーンの手術費用が足りないからとクラウドファンディングを始め、第5話で乃木は手術費用として1470万円を振り込んでいる。命を助けられた恩があるとはいえ、丸菱商事の社員として誤送金事件を追い、別班の一員としてテロリストの始末を任務とする乃木が、ただの医師や少女にここまで固執するのは、少々違和感がある。
また、第5話までに各俳優の役柄が続々と明らかになっている。役柄が何であるか噂されてきた松坂桃李は別班の一員であることや、乃木の父親役として登場した林遣都は、現在の姿は役所広司であり、テロ組織・テントのトップであったこと、第1話でサプライズキャストとして登場した二宮和也もテントの一員であること。メインキャストはほとんど別班か公安かテロリストである。メインキャストである二階堂ふみの何らかの組織の一員であるほうが自然だろう。ジャミーンが過去にテントの一員と写真を撮っていたこと、第1話でノゴーン・ベキ / 乃木卓がアディエルとジャミーンの話題を出していたこと、そのジャミーンへの薫の執着から見ても薫がテントの一員である可能性も大いにある。
今後の注目ポイント
第5話では衝撃的な事実が明らかになった。テロ組織・テントのマークと乃木家の家紋が一致し、亡くなったと思われていた乃木の父親はテントのトップだった。乃木は父親の組織を暴き、始末するために別班の一員となっていた可能性がある。今後、乃木と野崎がどのようにテントに接触し、日本を守るかは間違いなく見どころとなるだろう。また、乃木の第二人格であるF(エフ)が生まれたきっかけや、ジャミーンとテントの関係、薫の正体など謎は多い。現時点で一般人のふりをしているテントの一員や別班の一員がいることもありえるだろう。ふとしたシーンやセリフに伏線が含まれている可能性がある。
テレビドラマとは思えないスケールで進む『VIVANT』。こんなに勢いがあって、積み重なる謎にワクワクさせられるドラマはそうないだろう。ぜひこのブームに乗り遅れないでほしい。
*2023年8月14日時点の情報です。