映画とファッションとは切っても切れない関係。
映画の中の美女や美男のようにはなれないとわかっていても、映画好きのみなさんなら、そのファッションを真似したくなったことは一度や二度ではないはず。
そこで、今回は『華麗なるギャツビー』をファッションという視点から、勝手に新旧対決してみようと思います。
まずはロバート・レッドフォード主演の『華麗なるギャツビー』(1974年)(※以下、旧ギャツビーと勝手に呼称します)から。
『華麗なるギャツビー』(1974年)
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この映画のデザインを担当したのはノスタルジックテイストのデザインを得意芸としていたラルフ・ローレンです。
1970年の春夏コレクションで、白い麻のパンツに白いフランネルのブレザーという、時代に逆行したともいえるデザインをラルフ・ローレンは世の中に投げかけます。
ファッション界はこれを「フィッツジェラルドの30年代への回帰」と評しました。そこに目をつけたのがハリウッドの衣装デザイナーのセオーニ・オルドリッジ。
1973年にオルドリッジが『華麗なるギャツビー』の衣装デザインを担当することなり、ラルフ・ローレンに衣装の製作を依頼します。
デザインの最終決定権はオルドリッジにありましたが、メンズ衣装のほとんどをデザインしたのはラルフ・ローレンです。
特にこの中で特徴的なのが、レッドフォードの着ていたピンクの麻のスーツ。レッドフォードのギャツビーといえば「これ!」というぐらいの代名詞的な姿でもあります。
洗練されたクラッシックさを醸しつつ、斬新だけれどうるさくないピンク色の麻のスーツは、作中でも印象的なシーンで用いられており、そのファッションとギャツビーとの台詞とも相まって私たちの脳裏に焼きつきます。
この『華麗なるギャツビー』では第47回アカデミー・衣装デザイン賞をオルドリッジが受賞
名前こそアカデミー賞には出ていませんが、もちろん、この影の大立役者はラルフ・ローレンです。
ラルフ・ローレンは、F・スコット・フィッツジェラルド原作の小説『グレイト・ギャツビー』が生まれた1925年頃のメンズファッションの忠実なレプリカではなく、ギャツビー・ルックという現代人が着てもカッコイイと思えるファッションを生み出しました。
そして当時の衣装といえばハリウッドお抱えの衣装デザイナーの領域だったのですが、衣装デザイナーではなくファッションブランドと映画とのコラボレーションが本格化していくきっかけになったのは、このラルフ・ローレンのデザインによる旧ギャツビーからだといわれています。
続いて、レオナルド・ディカプリオ主演の『華麗なるギャツビー』(2013)(※こちらも勝手に新ギャツビーと呼称します)は、これでもか!と繰り出される豪華絢爛なファッションは見どころの1つです。
『華麗なるギャツビー』(2013年)
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ちょうど1920年代という時代には足首まで隠れるマキシ丈というスカートから、膝丈のスカートへと移行する女性ファッションの変革の時代。
そんな時代の流行の最先端がこの新ギャッツビーには細かく描かれています。
これら女性の服は「プラダ」「ミュウミュウ」とのコラボレーションによるものです。
特に作中のパーティーでのドレスは必見です!
そして女性の美しさを引き立たせるジュエリーや食器などは「ティファニー」とのコラボレーションによるもの。
見事に1920年代当時のアール・デコ様式を再現し、映画を観ている観客を今という現実ではないどこかへ連れ去ってしまいます。
ここで「なぜティファニー?」と思う方もいるかもしれませんが、ティファニーを選ぶあたりがこの映画のホンキさを表わしています。
というのも、原作者のフィッツジェラルドはティファニーの顧客でしたし、初代ティファニーはちょうどこのギャツビーの時代である「ジャズ・エイジ」ともよばれる1920年代の人物です(実際、作中にも登場するニューヨーク郊外のロングアイランドの社交界に出入りしていた人です)。
ついつい女性のファッションに目がいきがちなのですが、
男性のジャズ・エイジ独特のあでやかなファッションも見事です
メンズウェアはブルックスブラザーズとのコラボレーション。
実はこのブルックスブラザーズは原作者フィッツジェラルド愛用のブランドでした。
「ブルックスブラザーズこそはアメリカの名士が纏(まと)う究極の紳士服である」というような賛辞が彼の小説の中でも登場します。
そんなフィッツジェラルドが描いた世界ですから、彼の頭の中ではギャツビーがブルックスブラザーズを着ていたことは間違いないのです。
まさにF・スコット・フィッツジェラルドが頭に描いた世界を現代に蘇らせた一作ともいえるでしょう。
さて、新旧ギャツビーのファッション勝負の結果ですが…
それはご覧になったみなさまにおまかせします!!
※2021年3月8日時点のVOD配信情報です。