原作は1995年11月に講談社から単行本が刊行された東野圭吾の長編クライシスサスペンス。テロ、ドローン、原発、さらにいじめという今日的要素を取り入れて、堤幸彦監督がアクション大作に仕上げました。
開始早々からハラハラさせるシーンで、ラストまでテンポの早い展開でストーリーが進んでいきます。上映時間138分がとても短く感じられる作品です。
劇場公開は2015年9月12日。興行成績は10.8億(日本映画製作者連盟発表)と2015年に公開された邦画の中では振るわなかったのですが、同年公開された邦画の中では一番面白い作品だと僕は確信しています。
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遠隔操作ができる最新鋭ヘリコプターが「天空の蜂」と名乗るテロリストに奪われる。ヘリにはヘリ開発の技術者・湯原(江口洋介)の息子が乗っていた。敦賀湾にある高速増殖炉の上空まで飛行したヘリはそのまま800メートル上空でホバリングする。
テロリストの要求は8時間以内に全国の原子炉をすべて破棄すること。応じなければヘリを増殖炉に墜落させると。墜落すれば増殖炉は破壊され、放射能汚染で日本の半分は壊滅する。限られた時間の中で、テロリストとの攻防戦が開始された。
限られた時間、緊迫感がたまらない
ヘリの飛行可能時間は8時間。犯人像を追う警察、増殖炉を守ろうとする技術者たち、原発を止めることに難色を示す政府高官、機内に残された息子の救出劇、限られた時間内で繰り広げられるそれぞれのドラマの緊迫感がたまりません。
上空800メートルで繰り広げられる救出劇がすごい
ヘリに閉じ込められた湯原の息子を救う方法、それは別のヘリコプターで接近しそこからロープを使ったアクロバット的な離れ業でした。失敗したかと思われたその瞬間、自衛隊員の捨て身の行動が奇跡を起こします。
明かされていく事件の裏に隠された犯人像
犯人はかつて増殖炉の清掃員として働いていました。事件の動機は病に冒された身体に対する復讐なのでしょうか。狂気に包まれたテロリストを演じた綾野剛の存在感が光ります。
犯人の背後には意外な黒幕が
犯人(綾野)が追い詰められ、事件は解決したかに見えましたが、犯人の背後には意外な黒幕がいたのです。その黒幕と湯原(江口)との対決が事件のラストを盛り上げます。
本作のラストシーンは忘れてはいけない2011年3月11日
テロリスト事件から16年後。テロではなく、自然災害で原発が破壊。現場には自衛隊員として住民を救出している湯原の息子(向井理)の姿がありました。かつて命の危機から自衛隊員の決死の行動で救い出された少年が、今度は自ら命をかけて人を救う仕事に就いていたのです。災害現場で語り合う老いた父(江口)と逞しく成長した息子(向井)の姿が感動を呼びます。
まとめ
本作と他の作品を合わせて堤監督は報知映画賞監督賞、本木雅弘はブルーリボン賞、日本アカデミー賞など多数の助演男優賞を受賞。
安全とされてきた原発の弱点を突いた超ハードな社会派サスペンスアクションです。原発の安全性は2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震で否定されましたが、本作もまた安全性への疑問がストーリーの根本になっています。
これまで経済発展には欠かせないとされてきたエネルギー資源としての原発を見直すいいきっかけになる作品でしょう。劇場で観ることができなかった方にぜひ鑑賞していただきたいです。
(C)2015「天空の蜂」製作委員会
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※2022年4月24日時点のVOD配信情報です。