2月28日(現地時間)に開催される第88回アカデミー賞。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の最多部門受賞が噂されている今回、密かに注目を集めているのが監督賞ノミネートのアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥなんです。
第87回アカデミー賞で監督賞(『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でノミネート)を受賞し、今回も『レヴェナント:蘇りし者』でノミネートされています。もし受賞すれば、史上3人目の監督賞2連覇という快挙!その可能性は?過去にこの偉業を達成した2人は誰で、どの作品が受賞したのか?この記事を読めばアカデミー賞が待ち遠しくなること間違いなし!
イニャリトゥが受賞する可能性は?
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実は、アカデミー賞はハリウッドの映画関係者が投票する身内の映画賞なんです。ハリウッドで仕事をする業界人は各業種ごとに協会に所属することになっており、各協会で独自の映画賞を開催します。
ここでの結果がアカデミー賞に大きく関係することになります。各協会の映画賞に投票した人がアカデミー賞でも投票するわけですからね。あまり注目されませんが、ゴールデングローブ賞よりも信憑性が高いウラ前哨戦なんです。
イニャリトゥは今年開催された第68回全米監督協会賞の長編映画監督賞を受賞しました。この賞の結果はアカデミー監督賞とほぼ一致しており、彼は去年も『バードマン』で受賞しています。また、アカデミー賞の前哨戦とされる第69回英国アカデミー賞、第73回ゴールデングローブ賞でも監督賞を受賞しているため、イニャリトゥの監督賞2連覇はほぼ確定したと言えます。
ちなみに、『レヴェナント』の音楽を担当した坂本龍一はゴールデングローブ賞の作曲賞にアルヴァ・ノトと連名でノミネートされましたが、惜しくも受賞を逃しました。
監督賞2連覇の偉業を達成した2人の巨匠
もしイニャリトゥが監督賞2連覇を達成すれば史上3人目の快挙になります。では、過去にこの偉業を達成した映画監督は誰なのでしょうか?
一人目はジョン・フォードです。西部劇の優れた監督として知られるフォードは1940年に『怒りの葡萄』で、翌41年に『わが谷は緑なりき』で監督賞を受賞しました。
代表作として知られ、映画のお手本として映画学校の教材として使用されることが多い『駅馬車』で39年にも監督賞にノミネートされましたが惜しくも受賞を逃しています。もし『駅馬車』でも受賞していたら、史上唯一の3連覇だったのですが……。
ちなみに、受賞者は13部門にノミネートされた『風と共に去りぬ』のヴィクター・フレミング。『スミス都へ行く』のビリー・ワイルダーもノミネートされており、三つ巴の激戦だったことが伺えます。
二人目はジョーゼフ・L・マンキーウィッツ。プロデューサー上がりのマンキーウィッツは1949年に『三人の妻への手紙』で、翌50年に『イヴの総て』で監督賞を受賞しています。48,51年に公開された映画はなかったため、フォードとは異なり3年連続受賞のチャンスはありませんでした。
1950年の第23回アカデミー賞は『イヴの総て』が39年の『風と共に去りぬ』の13部門を超える14部門でノミネートされ、監督賞は39年に引けをとらない激戦でした。他の候補に『第三の男』のキャロル・リード、『サンセット大通り』のビリー・ワイルダー。誰が受賞してもおかしくない状況でマンキーウィッツが受賞したのです。
イニャリトゥのライバルは誰だ?
フォードとマンキーウィッツには強力なライバルがいましたが、イニャリトゥにはライバルがいるのでしょうか?
ノミネートはイニャリトゥの他に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のジョージ・ミラー、『スポットライト 世紀のスクープ』のトム・マッカーシー、『ルーム』のレニー・アブラハムソン、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のアダム・マッケイの4人です。
対抗にあげられるのはロサンゼルスやロンドンなど世界中の映画賞で監督賞を受賞しているジョージ・ミラー。作品賞の有力候補である『ルーム』のレニー・アブラハムソンは他の映画賞で監督賞を受賞していないため、可能性は低いと考えられます。
とはいえ、ジョージ・ミラーはゴールデングローブ賞でノミネート止まり、英国アカデミー賞ではノミネートすらされていません。前哨戦での成績を踏まえればイニャリトゥの受賞は揺るぎないということになります。
しかし、イニャリトゥがあのジョン・フォードと肩を並べるに相応しい監督かどうかという議論もあり、受賞を逃す可能性は0ではありません。運命の2月28日、イニャリトゥの運命やいかに。
※2022年9月29日時点のVOD配信情報です。