【震災から5年】記憶を未来へ「3.11映画祭」私たちは今も東北と共にある

映画と本とコーヒーと。

藤ノゾミ

東日本大震災から5年。

映画を通して震災について考える「3.11映画祭」が今年も3月11~14日、東京・千代田区のアーツ千代田3331で開かれます。

3回目となるこの催しはFILMAGAでも以前、3月の注目映画祭の一つとして紹介されましたが、今回は計16本の上映作品からお勧めの3本をピックアップ。気になる作品があれば、全国各地にサテライト会場もあるので、ぜひ足を運んでみてください!

誰もいなくなったニッポンでアンドロイドは花を見る『さようなら』

震災がテーマの映画祭だけにドキュメンタリーが上映作品の多くを占めますが、フィクションも3本上映されます。中でもイチオシの1本が、本物のアンドロイドの“出演”で話題になった『さようなら』(深田晃司監督)です。

さようなら

(C) 2015『さようなら』製作委員会

あらすじ

放射能に侵された近未来の日本。国民は海外へと次々に避難していくが、外国人の難民であるターニャは避難の優先順位が低く、病弱な彼女を世話するアンドロイドのレオナと共に取り残される。やがて、ほとんどの人が消えた中、ターニャはレオナに見守られながら最期の時を迎えて……。

芸術×科学で生まれた圧巻のラスト20分

もともとは舞台劇だった今作は、日本を代表する劇作家・平田オリザと世界的なロボット研究者である大阪大学の石黒浩教授のコラボで生まれました。

レオナを“演じる”のは石黒教授が開発したアンドロイド、ジェミノイドF。「アンドロイドが谷川俊太郎の詩を朗読したら」という平田オリザの着想がそのまま映像化され、ススキの揺れる荒涼とした風景の中、レオナは淡々とターニャに詩を語り聞かせます。

谷川俊太郎、ランボー、若山牧水……。無表情なレオナから紡ぎ出される美しい言葉の数々。レオナに喜怒哀楽はないはずですが、ターニャが死んで一人ぼっちになったレオナが車椅子で荒野を駆ける姿には、思わず涙がこみ上げてきます。

レオナはターニャと昔、数十年に一度しか咲かないある花の話をします。皮肉にも一人でその花を見ることになったレオナが最後に取った行動は希望か絶望か――。命を持たないレオナの問いかける“生”と“死”が、見る者の胸を鋭く突き刺します。

故郷を失った5年間の記録『フタバから遠く離れて 2016総集編』

震災からの復興を複雑にしているのは、言うまでもなく福島第一原発の事故です。

福島県双葉町は大熊町とともに福島第一原発の立地する自治体で、事故によって全町民が避難を余儀なくされました。その状況は今も続いており、『フタバから遠く離れて』の舩橋淳監督は5年間にわたってその生活を追いかけてきました。

この間、双葉町では、長引く避難生活に苛立ちが募って町議会と町長が対立。2013年に当時の井戸川克隆町長が辞任し、町長選挙を避難先で行うという異常事態になりました。さらに、人の消えた空っぽの町に「核のゴミ」を受け入れる中間貯蔵施設の建設計画も持ち上がります……。

この作品を通して、「避難した人たち=かわいそうな被害者」というレッテルをひっくり返したい、と言う舩橋監督

福島の電力を使ってきたのは「僕たち東京の人間」であり、「原子力にGOサインを出して来たのは日本社会そのもの」。双葉町から遠く離れると、その痛みを感じにくくなるけれど、国や東京電力だけでなく「僕たちも加害の一端を担っていること」に思いを馳せたいと語っています。

多くの人が声をあげた希望の瞬間『首相官邸の前で』

大震災と原発事故をきっかけに自ら行動を起こした人もたくさんいます。

ある人は被災地へボランティアに入り、ある人はビジネスで復興を支援し、そして多くの人が脱原発を求めて首相官邸の前に集いました2012年夏、その数は20万人にも膨れ上がります。しかし、この抗議デモがテレビや新聞で大きく報じられることはありませんでした。

首相官邸の前で

(C)2015 Eiji OGUMA

「この出来事を記録したい。いま自分がやるべきことはこれを後世に残すことだ」。気鋭の歴史社会学者である小熊英二さんが初めての映画製作を決めたのは非常にシンプルな思いから。スタッフは小熊さんとカメラマンの総勢2名だったというから驚きです。

本作には、デモの参加者がネット上にあげた膨大な映像を本人の賛同を得たうえで使用し、現場映像だけが持つ生の迫力を伝えます。世代も立場も違う人たちが一つの場所に集ったのはなぜなのか?小熊さんはこの抗議デモを「希望の瞬間の歴史」と表現します。毎週金曜の抗議活動は今も首相官邸前で続いています。

トークに東北特産マーケット、全国約30カ所でサテライト開催も!

3.11映画祭では上映にあわせ、監督や出演した人たちのトークイベントが行なわれる他、13日には東北で作られた雑貨や食品を扱うマーケットも開かれます。また、自宅で使える太陽光発電キットを組み立てるワークショップや、アーツ千代田3331の屋上に泊まるキャンプ体験も。映画を見るだけでなく、自ら参加できるイベントが目白押しです。

なお、メイン会場はアーツ千代田3331ですが、北海道から九州まで約30カ所の会場でも本祭と連携して上映企画を実施します。

神戸に避難した高校生が立入制限区域になっている母校にタイムカプセルを掘りに行く『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』が石川や福岡で、被災したペットを描く『犬と猫と人間と2』が埼玉で上映されるなど、独自のプログラムもあるので要チェックです!

関東大震災のガレキが残る場で“終わらない震災”を考えよう

2011年3月11日、アーツ千代田3331には多くの帰宅困難者が集まりました。

その経験から地域の防災拠点としての取り組みを続けているのですが、実は3331に隣接する練成公園は1923年の関東大震災後に作られた復興公園の一つで、土の下にはその時のガレキが埋まっているそうです。

関東大震災から88年、東日本大震災から5年。時間だけはどんどん経ちますが、震災の記憶は私たちの心や身体から消えないもの。東北にはなかなか行けないけれど、普段は自分の仕事や生活に没頭しているけれど。一日ぐらいはゆっくり「3.11」について思いを巡らせてみるのもいいのではないでしょうか。

映画祭の詳細は公式サイト「3.11映画祭」まで。

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  • chi
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    本物のアンドロイドが出演してるから人間とは何?って考えちゃうしそうさせる設定と演出が多い。ラストしばらく頭から離れない、、ゾクゾク、、
  • せいけ
    3.8
    原発事故以降の荒廃した日本を舞台に死の寂しさ残酷さを描いている 避難の優先順位という体のいい序列を敷かれてしまった世界の虚無感がなんともいえない 生きていく以上、設備など限りがある以上仕方ないこととはいえ生きづらい世の中だと思う 異なる者同士が生きている世界で完全に平等などあり得るのだろうか しがないロックバンドの歌声の熱い歌声が却って虚しく聴こえてきた あまりにも平坦に進んでいくのでちょっと退屈に感じてしまうところもあったけどいわゆる深田監督らしさも随所に感じた カットの収め方やアンドロイドの起用など深田作品の中でもかなり挑戦作なのでは
  • きたぴん
    -
    劇作家・平田オリザとロボット研究者・石黒浩(大阪大学教授)とのコラボで、俳優とロボットが共演するロボット演劇「さようなら」を深田晃司監督が脚本・映画化したもの。 描かれている内容は死なないアンドロイドの生と、死にゆく人の対比なのだが、「死」に近づいていくというより、朽ちていくというほうがしっくりくる。 主人公とアンドロイドの二人で会話しているが、本質的には一人という描き方には、ハッとさせられた。この世界感ならではの描き方だな。 後からジワジワくる。
  • 鈴木
    2
    深田晃司大好きだけどこれはちょっと退屈だった。
  • もう少し
    2
    難しかった
さようなら
のレビュー(897件)