ミニシアター系映画監督たちの魅力:フランス映画界の奇才ギャスパー・ノエ

愛と自由と無限が大好きな私と、映画

GATS

唐突ですが、質問です。皆さんが最近映画館で観た作品は何でしょうか?

スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でしょうか。マットデイモン主演『オデッセイ』、もしくはタランティーノ最新作の『ヘイトフルエイト』でしょうか。

このような大作は予算が多く組まれ映画産業の核となり、好まれやすい作品です。どの雑誌でも、どのレンタルショップでも、映画広告やレコメンドはこういった商業的作品が多い傾向があります。

そこで“Independent Movie Directorsミニシアター系映画監督たちの魅力”では、私が最高にお勧めするミニシアター系映画や、インディペンデント映画と呼ばれる作品たちを、監督別にご紹介していきます。

アート系映画が好みの方も、そういった作品を観たことのない方も好き嫌いせず、ぜひ挑戦すれば必ずあなたを変える良作があるはずです。

フランス映画界の奇才、ギャスパー・ノエ

第一回目は、4月1日公開の超問題作『LOVE 3D』(監督、ギャスパー・ノエ)を紹介します。

ギャスパーノエ LOVE

(C) 2015 LES CINEMAS DE LA ZONE . RECTANGLE PRODUCTIONS . WILD BUNCH . RT FEATURES . SCOPE PICTURES .

彼はブエノスアイレスに生まれ、幼少期をニューヨークで過ごし、パリへ移住してから映画を学び始めます。

撮る内容は、非常に過激でセクシュアルなものが多く、暴力シーンが多いことも働き、映画界の奇才と表現されることがよくあります。

最新作の『LOVE 3D』では、過剰なセックスシーンが多く、海外のレビューを読むとポルノと表現されていることからも、監督の過激っぷりが発揮されている作品となることは間違いないようです。

噂では、体液や精液が3Dで飛び出すということです!笑

日本版予告がすでに公開されているので、気になる方はチェックしてみて下さい。

(C) 2015 LES CINEMAS DE LA ZONE. RECTANGLE PRODUCTIONS. WILD BUNCH . RT FEATURES. SCOPE PICTURES

さてここからは、過去に公開された2作品をご紹介します。

ファッションアイコンのロングカットレイプシーン『アレックス』

ギャスパーノエ アレックス

『ブラックスワン』や、『美女と野獣(2014)』など近年の映画にも出演するヴァンサン・カッセルと、当時、妻であったモニカ・ベルリッチをカップルで主演にとった本作。

美しいものが壊れていく映画はよくありますし、むしろすでに陳腐でありきたりなものになりがちな気がしています。しかし、そういった概念を壊してくれた唯一の映画かもしれません。この映画では、壊れて始まる時間が、美しかったものへと変化していきます。

斬新にも、時系列を逆に描いている作品で、結果から始まり、どういった経緯でそうなったかの原因を観る映画です。つまり結果である“彼女が居なくなってしまった彼氏”という設定から始まるわけです。

映画と言えばオチを先に教えられるなんて御法度という方も安心してください。この映画にとってオチとは、皆さんの知っている冒頭のオープニング部分で、この映画を時系列通りに観ても、正直全く面白くないでしょう。

さらに、この作品を盛り上げてくれるのが、手持ちカメラでPOV手法(Point of View: キャラクターの目線と同時に動くカメラのこと。ホラー映画で多く観られる)をとったカメラワーク。

そして、そのカメラワークを誇張するかのように扱われるドラッグシーンの演出。

加えて、それすらを盛り上げてくれる音楽を担当しているのが、あのエレクトロ音楽界の神様、Daft Punkの片割れ、トーマ・バンガルテルです。正直これだけでも見る価値あります。

新宿歌舞伎町が舞台!ドラッグ感覚の可視化映画『エンター・ザ・ボイド』

ギャスパーノエ Enter the Void

さて、まずタイトルの意味ですが、英語表記で『Enter the Void』。

これは「無への回帰」や、本作のテーマである「輪廻転生」とも訳せそうですね。

そして、ダニー・ボイル監督の『トレインスポッティング』や、マコーレー・カルキン主演の『パーティーモンスター』など、名高いドラッグ映画に劣らぬ今作の舞台は歌舞伎町。街のネオンライトが、生き生きと活躍するドラッグ映画です。

こちらは『アレックス』と同じく、POVでのカメラワークやグラフィティを使った演出により、観ているこちらまでラリったようになる感覚的映画で、映画音楽を担当するのも、やはり前作同様Daft Punkのトーマ・バンガルテルです。

この映画のドラッグを用いた狂気的サイケデリックな恐怖は、全て監督の演出の思惑通りでしょう。

更なる注目ポイントは、役者にオリー・アレクサンダーを起用しているところです。

俳優よりもアーティストとしての活躍が目立つオリーは、イギリスのエレクトロポップバンド、Years&Yearsのボーカルです。

彼らはグラミー賞受賞歴もあり、先月2月に来日公演をしていたので、知っている方も多いと思います。

俳優としては、イギリスのTVドラマSkinsに出演したり、去年、公開されたポップミュージカル『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』は、作品楽曲提供者でもある、スコットランド、グラスゴーの人気バンドBelle and Sebastianのスチュアート・マードックが監督した作品として記憶に新しいでしょう。

おわりに

このようにして、監督別に映画を観ることは、監督、芸術家としてのスタイルや癖なども見つけれるようになりますし、映画鑑賞が、娯楽以上のものとして楽しみが増えるようになります。

ギャスパー・ノエ監督作品の場合には、ロングカット、POV、取り扱う内容は過激で過剰な愛など。皆さんがお好きな監督にもきっとそういったスタイルがあると思いますので、ぜひ探してみてください。

このようなミニシアター系映画や、インディペンデント映画には、大作映画ではまず味わえない魅力、取り扱えない内容も含まれています。ご覧になられたことのない作品があれば、ぜひチェックしてみて下さい。

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  • BEEKENY
    3
    2024-04 83
  • かすみちゃん
    3.4
    何度も何度も、あーでもないこーでもないって描き続けて 今回ちょっとBGMこだわってみよかぁ?って感じですか? 3Dで観た人の感想生々しく聞きたいわ アレックスもそうだし話は最初の1hでお腹いっぱいですけど、愛は空虚で性はアートで空虚が愛を埋める気がして努力ができない人間哀れだなー
  • こう
    -
    情けない男の話やで。
  • 3.8
    「CLIMAX」に次いで好き。 CLIMAXと同じ理由で内容云々ではなく、鑑賞して気持ちいいかで評価。 全体的にbgmのセンスが良すぎるし、滑らかなカットの繋ぎ方が気持ち良すぎてアガった。 再生ボタンを押して1秒で「うわっ」と期待値0で鑑賞できたのもあるかもしれない。 個人的にモザイクは映像に対するノイズ感が凄くて嫌い。 主要3人でのsexでギャンギャンに鳴り響くエレキと優しいピアノ、真上からのアングル、照らす赤、初めて映画のsexシーンで素人ながらに芸術性を感じた。 3D仕様の為なのか奥行きを感じさせる画が多くて好み。 最悪な3Dシーンを見せられた、わざわざ比率変えてまで飛び出しを強調させる演出に笑う。 「愛は奇妙だ、ジャンキーの気分だ、こんなに最高なものが苦痛をもたらすとは愛さない方がいいのか」 「俺の取り柄はひとつ失敗(ファック)すること」
  • pussycat
    1.5
    ギャスパー・ノエさんの映画はCLIMAXとルクス・エテルナを鑑賞してもぅ観ることはないと思ってたけど、こちらも気になって観てしまった。。 やっぱり世界観がわからんかった、、、。 LOVEってタイトルずりぃーな。
LOVE【3D】
のレビュー(3447件)