2015年11月、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社グループ主催の映像クリエイター発掘企画「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM2015」(以下、TCP)の最終審査会が開催されました。全474の企画の中から勝ち抜いた7名のクリエイターが熱いプレゼンテーションを繰り広げ、グランプリ1作品と準グランプリ2作品が決定!
今回FILMAGAでは、受賞監督たちにリレー形式でインタビュー!第2回目は準グランプリ「GREEN FUNDING賞」を受賞された加藤卓哉監督にお話を伺いました。
《加藤卓哉さん:プロフィール》1978年生まれ。大阪府立大学卒業後、東京で就職し、ソニーのエンジニアとして働く。映画業界への転職を考え、経験不問の求人をみて東映株式会社に入社、その後助監督として映画制作に従事中。
40歳までにデビューできなかったら、この業界から足を洗おうと思っていました
―この度は受賞おめでとうございます!まずは受賞した感想について教えていただけますか?
ありがとうございます!今まで一本も映画を撮ったことのない人間が作ったオリジナルの脚本に対して、制作費を最大5,000万円もいただけるなんてなかなかないことです。それに選んでいただけたというのは、本当に感謝してもしきれないほどです。
―今回TCPに応募されたきっかけはなんですか?
確かニュースサイトで取り上げられていて、周りで話題になっていました。「こんなことやっているんだ。じゃあダメモトでいいから応募してみよう!」って感じですかね。
―ニュースを見てすぐ動かれたのでしょうか?
そうですね。僕は今ちょうど36歳なんですが、40歳までにデビューできなかったら、この業界から足を洗おうと思っていました。ちょうどそういうことも重なって、ちょっとこれに賭けてみるか!と思いました。
―加藤監督は普段はお仕事で映画の助監督をされていますが、今回映像作品を制作するにあたり、関わり方を含め、ご自身で感じる大きな違いなどはありますか?
助監督の時は、自分なりに考えて自分だったらこうするなっていう考えを、最終的には監督に決めてもらったり、みんなで相談して決めていくのが仕事のやり方でしたが、今回は全部自分で決めて責任をとらなきゃいけないってところが大きく違っているなと思いますね。
—憧れの監督や影響を受けたクリエイターの方はいらっしゃいますか?
中高生の頃はハリウッド映画ばかり観ていたので、スティーヴン・スピルバーグやジェームズ・キャメロンに憧れていましたね。最近だとクリストファー・ノーランはオリジナルの脚本をあのスケールで撮っているのはすごいと思います。
実際に一番影響受けたと思うのは、僕は助監督として、木村大作監督と成島出監督の作品をそれぞれ2本ずつやらせてもらっています。やはりそのお2人には特にお世話になり、演出面はもちろん、活動屋の精神や、仕事に対する粘りなど、本当に勉強させていただいたという感じはありますね。
まあ三大欲求の一つなので(笑)一番観客の心を掴めるかなと思って
―今回準グランプリ受賞となった『裏アカ』。
この作品は《SNSを使う若者3割が持つという裏アカウント=裏アカを持ってしまった女性・真知子が、欲望と理性との間で彷徨いながら生きていこうとする姿をラブストーリーとして描く》という内容ですが、この作品を撮ろうと思ったきっかけ、一番の理由について詳しく教えてください
映画の企画を考えた時に、30代は失っていくものがすごく多い年代だなって感じていました。10代の頃は夢を追っかけていて、20代の頃は勢いで生活していたのが、30代になるとそれぞれ家庭を持ったり、周りの友達がちょっと疎遠になってきたり、徹夜がしんどくなったりとか(笑)
自分自身も30代半ばで、仕事など得るものもたくさんあるけれど、やはり失うものがすごく多いなって感じたところが一番の出発点ですね。
そして、女性の友人と話していると、その30代の渇きのようなものが、女性の方が顕著みたいで。若いということだけでは通用しなくなったり、結婚しなきゃとか、何歳までに子供生まなきゃとか。自分は男ですが、女性を主人公にした方が、そのような《渇き》を強く描けるんじゃないかと思いました。
―プレゼン用の映像では、30代女性の《渇き》をテーマにされているからか、きわどいシーンが多く観客席がざわめいていました(笑)
そうですね(笑)
『裏アカ』と言っても、陰口を書き込んだり、ファンの方が熱狂的な書き込みしたり、いろんな裏アカウントがありますよね。
《エロ》というのは、まあ三大欲求の一つなので(笑)一番観客の心を掴めるかなと思って演出に入れました。
―今回の主人公は女性ですが、モデルとなった方はいらっしゃいますか?
モデルはいないのですが、僕がいろんな人から聞いた面白いなっていうエピソードをいろいろ盛り込んでいて、それが主人公の真知子を形成している感じですね。僕が脚本を書いているからかもですが、真知子は割と男性的な考え方をしている人なのかもしれないですね。
いろんなことに後悔を引きずって生きていたりだとか、自分でやるにも何か理由を探してしまうというか。今後はそのあたりも女性の意見を聞かせていただきながら、脚本に反映させていきたいと思っています。
誰にでもある裏の部分と、表と裏があってこその人間
―今回の作品で伝えたいテーマはありますか?
一番伝えたいのは、誰にでもある裏の部分と、表と裏があってこその人間だよね、ということですね。
世の中これだけSNSが普及しているということは、逆にそれだけそういうものに頼って生きている人が多いということです。そういうもので精神のバランスを取っている人がたくさんいる。
真知子が、どんどん裏アカにハマっていくことを否定するのではなく、逆にそれを全面的に手放しで応援するわけでもないけれど、その二面性があって「もがく」ことが生きていくということなんだ、を伝えていきたいですね。
―この映画が完成したらどんな人に観てもらいたいですか?
あんまり家族連れにはオススメできないですよね(笑)一番は、今までいろんな話を聞かせてくれた女友達ですね。あとは、同世代の方やこのテーマに共感してくれる方に観てもらえたら嬉しいですね。
―今後どのような作品を撮りたいですか?
やりたいジャンルは色々ありますが、共通しているのは、観て元気になれる映画を撮りたいです。
自分もそうですが、映画を見終わって映画館を出た時に、映画館に入る前よりも、ちょっとだけでも気持ちが上を向いてるような、そんな映画を撮りたいですね。
今回の『裏アカ』も少し暗い映像も出てきますが、後半からラストはさわやかな気持ちになれる映画にしたいと思っています。
―最後に読者の方へメッセージをお願いします!
この作品が映画としては僕の監督作1本目になります。精一杯やろうと思っているので、完成したら一度映画を観ていただいて、否定でもなんでも、何かリアクションをいただけたら嬉しいですね。Filmarksでも★スコア4点以上を取れるよう頑張ります(笑)
—ありがとうございました!『裏アカ』期待しています!
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】
(取材・文 / 辻千晶 撮影 / 鸙野茜)
<TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM2015>特設ページ
※2022年7月28日時点のVOD配信情報です。