疲れた心をそっと癒す。温かい光に包まれるような良質ミニシアター映画3選

ミニシアター好きな大学生

Moca

お正月休みが明けて1週間、皆さんどのようにお過ごしですか?

この冬は暖冬と言われていて、まだまだ寒い冬が続く中でも時折春らしいお天気の日もあって、春の訪れが見え隠れする季節に嬉しさを感じます。

でも一方で、休み明けからいつも通りの生活にいまいちスイッチが切り替わらなかったり、そんな気温の変化についていけなくなってしまったりと、少しお疲れ気味の方も多いかもしれません。

そこで今回は、今の季節に合わせて温かくてきらきらした光が印象的で、疲れた心もそっと癒してくれるような映画をご紹介したいと思います。

横道世之介(2013)

横道世之介

(C)2013「横道世之介」製作委員会

1987年、大学進学のために長崎から上京してきた横道世之介と、その周りの人々との物語が描かれた作品です。

この少し変わった名前の主人公、横道世之介はお人好しで明るい性格だけれど特にこれと言って特徴のある男性ではありません。映画は世之介と関わりのあった人たちが当時の彼との思い出を振り返る形で描かれているのですが、彼を思い出すときの人々の表情はみんな笑顔で楽しそう。

彼らにとって世之介との出会いが特別で幸せな思い出であるのと同じく、映画が終わる頃には自分自身も彼の虜になっていることに気づきます。

撮影方法に長回しが多用されているのも特徴的で、それによって独特な「間」や、俳優たちの演技なのか素なのかわからない表情、そしてゆるい空気感が生まれるのだと思います。邦画よりも洋画を見ることの方が多いのですが、そういう細かいところまで味わうことができるのはやはり日本人として日本映画を見る特権でもある気がします。

映画の時間は160分と少し長めですが、見終わる頃にはまだ終わってほしくないと思えるような、とっても温かくて優しい余韻に包まれる作品です。

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メイジ―の瞳(2012)

メイジ―の瞳

(C)2013 MAISIE KNEW, LLC. ALL Rights Reserved.

離婚した両親の家を10日ごとに行き来している、ニューヨークに住む6歳の女の子メイジ―。両親にはそれぞれ新しいパートナーがいますがやがてメイジ―の世話を彼らに押し付けるようになり、メイジ―も新しい恋人たちも、身勝手な2人に振り回されてしまいます。そんな中で彼女が見つけた自分の居場所とは?

『メイジ―の瞳』というタイトルが表すように、この物語では幼い少女の視点から見た大人たちの姿や世界が描かれています。自分が置かれた理不尽な状況や、素直に美しいと感じるもの、目に映るすべてのものをそのまままっすぐ受け止める彼女の瞳が何よりも多くのことを語っています。そんな彼女の見つめる先にある自分勝手で不器用な大人たちの姿を見るといろいろ考えさせられます。

内容はもちろん、主人公のメイジ―がとても可憐で見ているだけで癒されます。そして彼女の母親役にはジュリアン・ムーア、その新しい旦那さんであるリンカーンにはアレクサンダー・スカルスガルドと、配役も見どころの1つ。特に、のちにメイジ―を支えることになる心優しいリンカーンがとにかくかっこよくて、メイジ―との掛け合いも見ていてほっこりします。

そして他にも目を引くのはメイジ―の衣装。可愛らしさがありながらもどこか大人びた印象で、どれも一味違ったセンスのいいものばかり。

それもそのはず、衣装担当のステイシー・バタットはマーク・ジェイコブスのアシスタントを務めたのち数々の雑誌や『ブロークン・イングリッシュ』、ソフィア・コッポラ監督の『SOMEWHERE』や『ブリングリング』といった映画などで高い評価を受けています。

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ショート・ターム(2013)

ショート・ターム

(C)2013 Short Term Holdings, LLC. All rights reserved.

タイトルの「ショート・ターム」とは、恵まれない家庭環境によって心に深い傷を負った10代の少年少女たちを一時的に預かってその面倒を見る青少年向けの短期保護施設のこと。そこで働く主人公の女性グレイスと施設の子どもや同僚たちとの交流を描きます。

映画の前半では、ショート・タームで働く主人公グレイスの視点で物語が進んでいきますが、施設に新しく入ってきたある女の子との出会いにより彼女にも辛い過去があったことが明らかになり、そこから彼女の内面へと焦点が移っていきます。この映画中盤からの視点の移行という構成が新鮮で、物語にリズムが生まれて見ごたえがあります。

この作品はかつて同様の施設で働いていた監督の実体験がもとになったもので、監督自身はグレイスの同僚で恋人でもある男性に当たると思われます。そのことを知ると、子どもたちやグレイスが抱える問題や1つ1つの言動がとてもリアルで胸に突き刺さります。

細かい場面でも現場で働いていた監督の経験が活かされていて、例えば、グレイスが子どもたちに今の気分を色で示したら何色かを順番に聞いていく場面があるのですが、これは実際の心理療法でも用いられているもの。自分の気持ちを色で表現することによって今の状態を把握し、さらに効果的にコントロールすることもできます。

重いテーマを扱った作品ではありますが、辛い過去を乗り越えて前に進もうとする子どもたちや主人公の姿を見守る優しさで溢れていて、光がいっぱいに取り入れられた画面からは大きな希望を感じます。

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おわりに

疲れているときにテンションを上げようとしてあからさまに明るい映画を見たら何だか余計に疲れてしまったという経験はありませんか?実はこれ心理学でも証明されていて、元気のない時に無理やりテンションを上げようとするのは逆効果だそうです。そんな時は、今の自分の状態をきちんと受け入れてから次へと進んでいくことが回復への近道と言われています。

なので今回は、すごく明るいわけではないけれど見た後にほっこりして温かい気持ちになれる映画を選んでみました。皆さんの心に寄り添ってくれるような作品が見つかればいいなと思います。

 

※2022年9月22日時点のVOD配信情報です。

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  • ホシカズキは映画中毒
    4
    傷ついた未成年者を保護する施設を舞台に、心に深い傷を抱える若者たちと彼らに寄り添う施設職員のリアルな日常を描いたヒューマンドラマの傑作。 静かでありながら圧倒的な感情の揺らぎと、人間の温かさが胸を締め付けます。 10代半ばの傷ついた子供たちを集めたグループホーム「ショート・ターム」でケアマネージャーとして働くグレイスが主人公。 自らも凄惨な過去のトラウマを抱える彼女が、入所してきた不器用な少女ジェイとの出会いをきっかけに己の過去と向き合っていくストーリーです。 抱えきれない痛みに苦しむ子供たちの叫びと、完璧ではないけれど本気で向き合おうとする大人たちの泥臭い誠実さが心に刺さります。 登場人物たちの表情の変化や、言葉にできない感情のグラデーションが繊細に描かれています。 ブリー・ラーソンの圧倒的な存在感と迫真の演技、そしてラミ・マレックら豪華キャストの若き日の競演。 人に寄り添うことの意味を優しく教えてくれる、深く静かな名作。
  • 50_storm
    4.1
    問題児の心のケアという側面だけにフォーカスしてないところが大好き 好きなシーンがいっぱい この時代のメイクかわいい
  • 5
    『スパイダーマン/ブランド・ニュー・デイ』の原型のようにも思える、心からの理解・共感による救済・連帯の話。決して浅くない問題を扱いつつ、ちゃんと常に軽さがあるのが本当に良い。
  • グラビティボルト
    3.5
    「スパイダーマンブランド・ニュー・デイ」を撮った人の映画。 被写界深度の浅めなルックに傷付いた子供に寄り添う大人たち。 「ありがち」だが気合いが入っている。 ガス・ヴァン・サントと、ワイズマンが好きなのかな? 児童保護施設員のブリー・ラーソンは自転車で動く訳だが、速すぎても危ないし遅すぎても転ぶこの乗り物に実は子供と同じように傷付いた彼女が乗る危うさが良い。 ブリー・ラーソンとジョン・ギャラガーJrの職員カップルの転機と、 ラップが好きで繊細なラキース・スタンフィールドの回復と自壊を行き来する危うさ、ケイトリン・デヴァーのドラマなど、色々詰め込んで98分の短尺に収まっているのが実は凄い気がする 実は同じ傷を抱えていたブリー・ラーソンとケイトリン・デヴァーが距離を詰める場面で、隣り合った横顔の切り返しが2回ある。 同じ場所、同じ並び。しかし関係性は少し変わる。大人と子供の上下が取り払われる。 この感覚はスパイダーマン新作終盤でも活かされた個性だと思う。 同じ傷を抱えた者同士が寄り添うこと。 本作はその感情のドラマが、風船人形を殴る、車のガラスを叩き割るアクションに結実するのが良い。
  • HAL
    5
    (スパイダーマン新作の)デスティン・ダニエル・クレットン監督の初期作品『ショート・ターム』をみた。もうこの映画に出会えたことだけでもスパイダーマンに感謝したい。心の一本になりました。冒頭のシークエンスと円環構造になっているラストシーンがもう泣けてしまって泣けてしまって。主演にブリー・ラーソンがいて、ティーンエイジャーのグループホームに研修として入ってくる新人役にラミ・マレック。やっぱりブリー・ラーソンは傷を抱えながらも目の前の人に手を差し出そうともがく姿に、あの目をそらなさい眼差しの強さが倫理的なキャラクターを演じる時に本当に映える。『キャプテン・マーベル』見返したくなっちゃうな。 そしてさりげなくヒップホップ映画でもある。言葉を持たない弱者である若者たちが自分の中の苦しい何かを吐露するようにリリックを書く。禁止用語だらけのそのラップを部屋で聞いたケアマネージャーたちはみんな言葉に詰まってしまう。しかし、言葉にならなくても隣でそれを聞くことで受け取るものはたしかにあるはずだし、誰かの痛みにすぐ気の利いた答えを返すことなんてできないだろう。だから、この映画がある、あってくれるんだろうと思う。ポスターにも使われてる脱走する少年をみんなで走って追いかける場面、無口な女の子のイヤホンを片耳借りてドラムの真似をする場面、そして親からの虐待の傷を共有する主人公と少女が二人で車のガラスをバットで割る場面ーー壊そうとしているのは言葉にならないトラウマであり、強固で物質的でシステム的ななにかだ。 発作的に自傷行為に及ぼうとする子どもが立てこもる部屋の扉をみんなで開けようとする場面、キャプテン・マーベルならすぐそんなドアは壊してくれるだろうが、彼女たち二人に通じているのは扉の向こうの他者を尊重し、声をかけて、なんとか自分を傷つけることを止めようとする意思だ。やっぱり『マーベルズ』もいい映画だったと思うよ。今作を観ていて最近観た『アダムの原罪』や『四月の余白』を思い出していた。特に後者はラストシーンの軽やかさにおいて共通している。心の本棚にしまっておきたい映画。 ただ、ラーソンの同僚でありパートナーである男性がなんらかの強迫的なものを抱えていて、そこには後半あまりフォーカスされなかったのが気になる。また虐待サバイバーが子供を産む、という決断に至る物語であるならばやっぱりその先の世界のことを考えてしまう。デスティン・ダニエル・クレットン監督、死ぬほど忙しいと思うけど、オーシャンズシリーズみたいに続編でSHORT TERM13とか作ってくれないかな。子役がもうかなり成長しちゃってるから難しいか。
ショート・ターム
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