はやくも今年のベスト登場か!?『千年医師物語 ペルシアの彼方へ』が凄い!!

ARC監督/脚本/映画祭ディレクター

篠原隼士

世界中で2100万部以上の売り上げを記録したノア・ゴードンのベストセラー「千年医師物語」の第1部「ペルシアの彼方へ」が原作の映画『千年医師物語 ペルシアの彼方へ』がついに1月16日土曜日、有楽町スバル座をはじめ、全国の劇場で公開となりました。

今回の記事では、この素晴らしい作品の魅力をご紹介します。

千年医師物語キー

(C)Beta Cinema The Physician © Stephan Rabold UFA Cinema

若き少年が”夢”を抱くことから幕を開ける

11世紀のイングランド。まともに食事を摂ることが出来ない時代、少年ロブは二人の妹弟と母親と暮らしていました。しかしある晩、母親が腹痛を訴え、この世を去ります。家族は離ればなれになり、ロブは一人の理髪師とともに生きることになります。

当時の医学は非常に曖昧で、理髪師が抜歯や吸玉療法を施し、意味があるのかも分らない薬を売っていました。成長したロブは、目を悪くした理髪師の代わりにその曖昧な治療を施すのですが、ある日、理髪師の目を治せるというユダヤ人医師と出会います。ロブは本物の手術を目の当たりにし、医学の素晴らしさに魅了されます。そして、ユダヤ人医師に誰に学べばいいのかと問います。

その日、ロブが知ったのは壮大な夢と希望、そして残酷な現実でした。

「私に医学を教えた彼の名は、イブン・シーナ」
「しかし、彼が住むところに君は行けない。なぜなら君はクリスチャンだ」

渦巻く“宗教” “哲学” そして “恋”

宗教

この映画の見所の一つは、徹底的に描かれた時代背景です。我々が生きたことのない世界が素晴らしい映像表現により目の前に広がると同時に、目を背けられない問題を描き続けます。

そして、彼らはそんな現実の中“夢”と“希望”を追い求めたことも事実です。

ロブはずっと思っていました。人の体を解剖したら不可能だと言われる病を治す鍵が見つかるかもしれないと。しかし、この時代、死体の解剖は神への冒涜。決して許されるものではありませんでした。

哲学

イブン・シーナは「哲学」「天文学」「数学」「錬金術」に精通した“医学の父”と言われています。
彼の授業シーンは、心を惹きつけられ、学ぶということを心から楽しいと思わせてくれます。

また、イブン・シーナが授業をする教室のつくり、そして膨大な書籍の数にも圧巻です。人生は一生勉強だと強く感じさせられました。

ロブが旅の途中出逢う、レベッカという美しい女性。彼女もまた残酷な現実の中生きるたくましい登場人物ですが、レベッカの魅力にとりつかれるロブの感情もまた美しいのです。

大きく三つの角度から書きましたが“魅力”や“惹き付ける”というワードが多いですね。
そのままの意味で、この映画、魅了されっ放しな作品です。

徹底的に人を描くということは自然と人を虜にするのかもしれません。

映画を彩った“撮影”と“音楽”

11世紀の世界、医学を学ぶ学び舎、彼らがかじるパン、まるで魔法の世界のような感覚。不思議と体中が映画の中に惹きこまれる音楽、時として全身に緊張を走らせる。

半端ではない演出力に圧巻です。そしてその胸の高鳴りは映画館の外でも続くことになります。

是非、医学の誕生を目撃してください。

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  • 玻庭
    4.5
    2度目の鑑賞。 ドラマ『プロディガル・サン』のトム・ペイン主演映画。 まだ医学が世の中に渡っていない頃の話。 理髪師が時に医者となって患者を治していた頃。脇腹の病気や黒死病などが治せないと思っていたが、青年ロブは一人でも多く患者を救いたいと思い、医療に詳しい先生に弟子入りする。 だが、それでも学び足らなかったロブは、当時禁断となっていた死体の解剖に手を出してしまう。 あれだけ熱心なロブとそれを見守り育てるイブン先生の絆の物語でした! もちろん、友人と出会い別れ、恋人との色んなこともモリモリあって、すごく良かったです! すごく痛そうなところがまばらにあったので、グロいのが苦手って方は少し目を瞑ってしまうシーンがあるかも! 話はとても良かったです!
  • 88じじいの呼吸コノヨイ88
    4.5
    間延びとステレオタイプな場面もあるが、ロードムービー部分やファンタジー部分など、他要素も加わり完成度は高い。 当時のユダヤ、キリスト、イスラムの思想宗教関係性なども作中描かれており、興味がある人は観て損しない内容、助け合いの尊さが描かれている。
  • sococo
    3.5
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  • りょうすけ
    4
    邦題:千年医師物語 ペルシアの彼方へ 原題:The Physician 制作年:2013年 監督:フィリップ・シュテルツェル キャスト:トム・ペイン、ステラン・スカルスガルド、ベン・キングズレー 上映時間:155分 鑑賞方法:スターチャンネルEX メモ: 高一の時に今は無き日比谷スバル座でチラシだけは見たことあったけど、レンタルすることも困難で数年観ることが出来なかったが配信でようやくみることができた。医学生として、解剖を経験した者としてこの時代の医療者には頭が上がらないと改めて感じさせる作品だった。周りの学生に是非とも勧めたい。「TWD」のジーザスことトム・ペイン君、髭がないと全くジーザスじゃないんだけど目が綺麗すぎて蝋人形じゃないかと毎回思う。
千年医師物語 ペルシアの彼方へ
のレビュー(401件)