映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』議論を呼んだサーガ最終章を徹底考察【ネタバレ解説】

ヒットガールに蹴られたい

竹島ルイ

映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』はなぜ様々な議論を呼ぶ?ネタバレありで徹底解説

続三部作の第3章にして、9部作から成る「スター・ウォーズ」サーガの最終作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』。ビッグ・タイトルのエピローグを飾る本作は、女優の突然の逝去、監督の交替劇と、波乱に満ちたなかで製作が行われた。

そして本作は、あらゆる角度から議論を呼んでいる作品でもある。という訳で今回は、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』についてネタバレ解説していこう。

なおこの稿ではシリーズ作品を下記で呼称します。

■旧三部作

スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77)
スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(80)
スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(83)

■新三部作

スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(99)
スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02)
スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(05)

■続三部作

スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)
スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(17)
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(19)

映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(19)あらすじ

前作でルークと一騎討ちをしたカイロ・レンは、ファースト・オーダーの最高指導者となっていた。やがて彼は、銀河の果てにある惑星エクセゴルにたどり着き、意外な人物と出会う。一方、ルーク・スカイウォーカーの意志を引き継いでフォースを覚醒させたレイは、レイアの元でジェダイの修行に明け暮れていた…。

※以下、映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のネタバレを含みます

監督降板、キャリー・フィッシャーの逝去……紆余曲折を経て決定したJ・J・エイブラムスの再登板

もともと続三部作は、次代を担う実力派監督たちがそれぞれのエピソードを担当することがアナウンスされていた。

エピソード7『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』 監督J・J・エイブラムス
エピソード8『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』 監督ライアン・ジョンソン
エピソード9『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』 監督コリン・トレヴォロウ

偉大なシリーズ最終章という大任を務めることになったコリン・トレヴォロウは、『ジュラシック・ワールド』でタッグを組んだ脚本家デレク・コノリーと共にシナリオに着手する。

当初のプランでは、ハリソン・フォード演じるハン・ソロが「フォースの覚醒」、マーク・ハミル演じるルーク・スカイウォーカー が「最後のジェダイ」、そしてキャリー・フィッシャー演じるレイア姫が「スカイウォーカーの夜明け」の主要ポジションを担う予定だった。しかし、2016年12月27日にキャリー・フィッシャーが60歳の若さで突然の逝去。マスタープランに大きな狂いが生じてしまう(彼女の出演シーンは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の未使用テイクを加工して使われた)。

そして2017年9月には、コリン・トレヴォロウの降板が発表される。監督が更迭されるという異常事態が起こってしまった以上、クリエイティヴの決定的な相違があったことは間違いないだろう。そしてその降板発表から一週間後に、「フォースの覚醒」で監督を務めたJ・J・エイブラムスが再登板することがアナウンスされる。かくして続三部作は、1作目と3作目がJ・J・エイブラムス、2作目だけがライアン・ジョンソンという、異様な製作体制になってしまったのだ。

「スカイウォーカーの夜明け」には、「原案」という名目でトレヴォロウとデレク・コノリーの名前がクレジットされている。しかしながら、Esquireがニュースとして報道したリーク情報によると、トレヴォロウ版エピソード9は、現在のものとは大きく異なる内容だったらしい。そのタイトルは『Star Wars: Duel of the Fates』(運命の決闘)と冠され、暗黒面からカイロ・レンを救い出そうとするストーリーが主軸に置かれていた。さらに、

・パルパティーン(ダース・シディアス)が登場しない
・ルーク・スカイウォーカーが大きな役回りを担っている
・レイはパルパティーンの孫ではない
・レイとポー・ダメロンが恋仲になる

という設定も「スカイウォーカーの夜明け」とは大きく異なるものだ。J・J・エイブラムスは、キャスリーン・ケネディが「NO」を突きつけたトレヴォロウ版とは違うアプローチで、最終章を飾らなければならないという、ミッション・インポッシブルな状況に巻き込まれてしまったのである。

J・J・エイブラムスを苦しませた「最後のジェダイ」の呪い

J・J・エイブラムスには、もう一つ頭の痛い問題があった。前作「最後のジェダイ」があまりにも「スター・ウォーズ」的フォーマットから逸脱した異色作だったために、その整合性をとる必要があったからだ。

「【ネタバレ解説】映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』はなぜ“賛否両論”なのか?その理由を徹底考察」にも書かせていただいた通り、旧三部作から新三部作に至るまで、「スター・ウォーズ」とは血脈の物語だった。スカイウォーカー家の血を引いた者だけが、特別な力を駆使して銀河に安定と平和を与えられるという、壮大なスペースオペラなのである。

しかし「最後のジェダイ」の監督ライアン・ジョンソンは、「誰にでも特別な力を持つことはできるし、誰にでもその可能性がある」というメッセージを大々的に打ち出して、血脈の物語にも終止符を打とうとする。彼は意図的に過去の「スター・ウォーズ」との決別をはかったのだ。

J・J・エイブラムスは苦しい決断を迫られたことだろう。このまま「最後のジェダイ」の「非・血脈路線」に舵を切れば、「スター・ウォーズ」らしさは崩壊し、保守的なファンから怒号が飛ぶことは必至。かといって「血脈路線」に舵を戻せば、「最後のジェダイ」の作品価値が相対的に失われてしまう。まさに行くも地獄、戻るも地獄。J・J・エイブラムスの苦悩は想像に難くない。

「レイはパルパティーンの孫だった」という設定は、そんな苦悩の中で生み出された一手だったのではないか、と筆者は考えている。シスの血を引いているレイが、その血脈から解き放たれてスカイウォーカーを名乗る……。血脈の物語でありながら、それに終止符を打とうとする展開は、新・旧三部作にも、そして「最後のジェダイ」の精神にも繋がる。

本作にスカイウォーカーの血を受け継ぐ者がほとんど登場しないにも関わらず、「スカイウォーカーの夜明け」というタイトルが冠されたのは、そんな製作サイドの想いが込められているからだろう。まさに、保守的なファンも若いファンにも訴求し得る、WIN-WINなアイディアだったのだ。

だが、その試みが成功したかといえばクエスチョンマークがつく。「結局「スター・ウォーズ」のボスキャラはパルパティーンしかいないのかよ!」という、ボスキャラ問題として批判の声が上がったからだ。血脈問題にカタを付けたかと思えば、ボスキャラ問題として非難されてしまう。J・J・エイブラムスには「ご愁傷様です」としか言いようがない。

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レイ、カイロ・レン、そしてフィンの恋愛問題

筆者が考えるに、「スカイウォーカーの夜明け」にはもう一つ問題があった(さっきから、問題ばっかりですが……)。ルーク、レイア、レイ、カイロ・レン、フィン、ポー・ダメロン、チューバッカ、ローズ、R2-D2、C-3PO 、BB-8、ハックス将軍……。旧三部作&続三部作のキャラクターが入り乱れて、明かに渋滞を起こしている。

『マンダロリアン』のようなドラマシリーズならば、サイドストーリーで個々のキャラクターを掘り下げることも可能だろうが、2時間強の尺ではとても描き足りない。J・J・エイブラムスは、キャラの人員整理という課題に直面したのである。

「スカイウォーカーの夜明け」のストーリーを牽引するのは、間違いなくレイだ。前述した通り、この映画は彼女がシスの血脈から開放されて、スカイウォーカーの名前を受け継ぐ物語なのだから。その結果、多くのキャラが押し出される形で存在感を失ってしまった。おそらく最大の被害者はフィンだろう。

「フォースの覚醒」を観た時、筆者は「この映画の実質的な主人公はフィンなのではないか」と思ったものだ。明かにジェダイの継承者であるレイに対し、元ストームトルーパーという出自をもつ彼は、何の特殊能力も持たない等身大キャラ。レイとフィンを対比して見せることで(そして恋愛要素をほのめかすことで)、続三部作は新しい物語を提示するものだと思い込んでいた。

しかし次第にレイはカイロ・レンとの精神的絆を強めていき、どんどんフィンはメイン・ストーリーから撤退していく。『機動戦士ガンダム』に例えるなら、ニュータイプとして覚醒していくアムロがセイラに近づいていくほど、ガールフレンドだったはずのフラウ・ボゥの存在感が希薄になっていくのと一緒だ(わかりにくい例えですいません)。

フィンはポーと共にレジスタンスの軍事オペレーションに参加するものの、レイとはほとんど共闘しない。そのフィンに思いを寄せているローズに至っては、「最後のジェダイ」と比べて大きく出演時間を削られるハメとなった。

フィンがメイン・ストーリーから撤退することで、レイとの恋愛問題もウヤムヤな感じで終わってしまう(彼女に何かを言いかけた、という設定でお茶を濁している程度だ)。おそらくレイとカイロ・レンのキスシーンに対して批判的な声が噴出したのは、二人は同じ宿命を宿した同士としての関係だった(と思わされていた)にも関わらず、フィンを差し置いて予想もしない恋愛モードが発動したからだろう。

もともと「スター・ウォーズ」は、ジョージ・ルーカスという一人の男によって創造された偉大なるスペース・オペラだった。その権利をディズニーが買い取ることで、創造主不在のなか続三部作は始動する。結局、エピソード7、8、9までをブリッジさせるメイン・クリエイター不在によって、さまざまな辻褄が合わなくなってしまった。その一つの典型的な例が、レイ、カイロ・レン、そしてフィンの恋愛問題なのである。

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』トリビア

「スカイウォーカーの夜明け」のトリビアも紹介しておきましょう。もちろん、ここで紹介するのはほんの一部。「スター・ウォーズ」世界の一端を感じて欲しい。

アレック・ギネスの孫娘

旧三部作でオビ=ワン・ケノービを演じたアレック・ギネスの孫娘サリー・ギネスが、ファースト・オーダー士官役で、チラッと出演している。偉大なるジェダイ・マスターの孫が帝国側に寝返ったということか? あの世でオビ・ワンも歯ぎしりしているに違いない。

42年に一度の祭り

砂漠の惑星パサーナで行われているアキ・アキ祭。C-3POの説明によれば、「祭りが行われるのは42年に一度」らしい。この42年というスパンは、実は「新たなる希望」が公開された1977年と、「スカイウォーカーの夜明け」が公開された2019年までの年月と一緒。

ジョン・ウィリアムズがカメオ出演

惑星キジーミの酒場のシーンで、チラっと映る老バーテンダー。演じているのは、「スター・ウォーズ」シリーズの音楽を手がけている作曲家のジョン・ウィリアムズだ。役名は Oma Tres(オマ・トレス)で、作曲家を意味するMaestro(マエストロ)のアナグラムになっている。

懐かしの名パイロットが再登場

かつてルークと数々の戦功をたてた反乱軍の名パイロット、ウェッジがクライマックスの戦闘シーンで再登場。演じているのは、もちろん旧三部作と同じデニス・ローソンだ。

ジェダイたちの声

「スカイウォーカーの夜明け」のハイライトの一つが、かつてのジェダイたちがレイに呼びかける感動的なシーンだろう。呼びかけたジェダイたちは下記の通り。

ヨーダ(フランク・オズ)
メイス・ウィンドゥ(サミュエル・L・ジャクソン)
クワイ=ガン・ジン(リーアム・ニーソン)
青年期のオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)
老年期のオビ=ワン・ケノービ(アレック・ギネス)
アナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)
ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)
アイラ・セキュラ(ジェニファー・ヘイル)
ルミナーラ・アンドゥリィ(オリヴィア・ダボ)
アディ・ガリア(アンジェリーク・ペラン)
アソーカ・タノ(アシュリー・エクスタイン)
ケイナン・ジャラス(フレディ・プリンゼ・ジュニア)

メダルを手にするチューバッカ

「新たなる希望」のラストを飾るセレモニーのシーン。レイア姫からルークとハン・ソロにメダルが授与されるが、チューバッカは貰うことができなかった。コアなファンからは「ウーキー差別だ!」と非難の声が上がっていたのだが、今回の「スカイウォーカーの夜明け」で、遂にチューバッカはマズ・カナタからメダルを授与される。このシーンに感涙したファンは多いことだろう。

「嫌な予感がする」

「スター・ウォーズ」シリーズで必ず登場するセリフ、「I have a bad feeling about this」(嫌な予感がする)。今回そのセリフを発するのは、ランド・カルリジアンだ。

ブーリオの声の正体

フィンやポーたちに、ファースト・オーダーの情報を伝えるエイリアンのブーリオ。この声を演じているのは、実はルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミル。クレジットにはパトリック・ウィリアムズとあるが、これは声優としてのハミルの芸名なんだとか。

D-Oの声の正体

小さなドロイドD-Oの声を担当したのは、監督のJ.J.エイブラムス自身。他の声優に演じてもらうつもりで仮に声をアテただけだったのだが、なんやかんやで実際に採用されることになったのだそう。何だか公私混同のような気もするが……。

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の本当の評価とは

2010年に、『ピープルVSジョージ・ルーカス』というドキュメンタリー映画が公開されたことがある。

熱狂的に旧三部作を信奉するファン(=ピープル)が、新三部作の出来に激高して創造主たるジョージ・ルーカスにイチャモンをつけまくる、という内容だった。もはや「スター・ウォーズ」とは新約聖書と同レベルの福音の書であり、例えそれがジョージ・ルーカスの手によるものだったとしても、自らが信ずる主義・主張と異なれば、途端に批判の対象になってしまうのである。

「スター・ウォーズ」をつくることは、映画史上で最も困難な冒険の一つだ。「スター・ウォーズ」を愛するからこそ、いい面よりも悪い面が気になってしまう。映画レビューサイトの「Rotten Tomatoes」において、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は51%という低スコアだ(2021年2月時点)。だがそれ以上に筆者は、あまりにもアバンギャルドに振り切った「最後のジェダイ」から原点回帰して見せたJ・J・エイブラムスの調整力、バランス感覚に敬意を表する気持ちでいっぱいである。

この映画に対する本当の評価は、あなた自身の目で確かめて欲しい。

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※2021年2月26日時点の情報です。

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