子供のためにあきらめない!『ルーム』とあわせて観たい強い母親たちの映画5選

映画と本とコーヒーと。

藤ノゾミ

ブリー・ラーソンのアカデミー主演女優賞受賞で話題になった『ルーム』(レニー・アブラハムソン監督)がまもなく公開されます!

ルーム

(C)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015

『ルーム』はブリー演じる母親が7年にわたって監禁された納屋(=ルーム)から、5歳の息子とともに脱出する物語。納屋で生まれ、納屋で育った男の子が初めて“世界”に触れた時の生き生きとした反応に心揺さぶられますが、決してあきらめなかった母の強さにも胸を打たれます。

そこで今回は「母は強し!」をテーマに、『ルーム』とあわせておススメ映画を紹介します。戦う母、待ち続ける母、傷と共に生きる母……色んな“お母さん”をご覧下さい!

10代の青春を奪われた若き母の苦悩と愛『ルーム』

以前、FILMAGAの記事でも紹介されましたが、『ルーム』はオーストリアで実際に起こった監禁事件をもとにしています

参照:涙が止まらない衝撃作品『ルーム』の基になった信じられないような凶悪監禁事件とは?

その事件とは、娘が実の父親に24年間も地下室に監禁され、7人の子供を産んだというもの。事実は小説より奇なりとは言え、あまりの異常さに戦慄を覚えます。

この事件で娘は18歳の頃から監禁生活を強いられますが、『ルーム』でブリー扮するジョイも17歳の時に犯人に誘拐されます。

高校を卒業し、大学へ。恋をし、友達と遊び、お酒を飲んだり、旅行をしたり。そんなかけがえのない時間を、ジョイは狭い納屋に閉じ込められて過ごしました。

絶望から救ってくれたのは息子のジャックの存在。彼のためにも外へ出ようとジョイは決心しますが、納屋を世界のすべてだと思い込んでジョイを信じようとしないジャックにイライラしたり、そんな自分が嫌になったり……。

監禁事件を描いた映画と言うと、犯人を倒して外に出たらハッピーエンドな印象を受けるかもしれません。しかし、『ルーム』はスカッとする脱出劇ではありません

それは警察に保護されたジャックが最初にこぼす「お部屋に帰ろうよ」という言葉に象徴されています。外に出てみれば、両親は離婚しており、実家には母の恋人が同居中。奪われた時間はあまりに長く、愛するジャックは憎むべき犯人の子供でもある……。

時にくじけそうになりながら、それでも未来に進んでいこうとするジョイ。決して“揺るぎなく強い母”ではありませんが、だからこそ観客は共感し、彼女を応援してしまうのでしょう。オスカーも納得です。

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アンジーがロス市警に立ち向かう『チェンジリング』

ジョイは閉じた世界から息子を外へ飛び立たせようとしましたが、『チェンジリング』(2008年)は母が広い世界に消えた息子を我が手に取り戻そうとするストーリー。監督は名優、クリント・イーストウッドです。

チェンジリング

今作もまた1920年代にロサンゼルスで起きた連続少年誘拐事件をもとにしており、アンジェリーナ・ジョリーが一人息子を失ったシングルマザーのクリスティンを演じました。

失踪から5ヵ月後、息子が見つかったと連絡を受けたクリスティンは喜んで迎えに行きますが、そこにいたのは全くの別人。ロス市警の刑事にそのことを訴えても全く聞き入れてもらえず、逆に彼女は「育児放棄の異常者」として精神病院に入れられてしまいます。

実は失踪の背景には、20人もの少年を誘拐して殺害した不法移民の男の犯行があったのですが、警察は男をそのまま国外退去にしようとしたり、捜査ミスの隠蔽と保身に走ってばかり……。これがすべて実話というから驚かずにはいられません。

我が子の無事を信じ、巨大な権力に立ち向かっていくクリスティン。その姿にはアンジーも同じ母親として心を動かされたのではないでしょうか。『トゥームレイダー』『Mr.&Mrs.スミス』のアクション全開のアンジーとは違う、繊細ながらも芯の強い演技が光っています。

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高度10000mのサスペンス!『フライトプラン』

我が子を取り戻すためなら、母は卑劣な犯罪集団にも屈しません。『フライトプラン』(2005年)では、飛行中の航空機を舞台にジョディ・フォスターが高度1万メートルでの“空中戦”を繰り広げます。

フライトプラン

ジョディ扮する航空機設計士カイルは仕事先のドイツで夫を亡くし、失意の中、棺を載せた航空機で娘と共にアメリカへの帰路に就きます。ところが、少しまどろんだ間に娘が失踪。機内を探すも姿はなく、どころか、客室乗務員も乗客も誰ひとり娘を見ておらず、なんと搭乗記録に名前がないと言われてしまいます。

『チェンジリング』のクリスティン同様、カイルも夫を失った心の傷で娘がいると思い込んだ異常者だと見なされます。が、カイルは搭乗した最新鋭ジャンボ機の設計者。妨害されようが非難を浴びようが、勝手知ったる機内を端から端まで自在に探し回ります。

カイルをハイジャック犯に仕立てようとする真犯人の行動には「まどろっこしいな!」と突っ込みたくもなりますが、ジョディ・フォスターの“スーパーママ”ぶりは圧巻。ハラハラ楽しめる98分です。

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愛と狂気は紙一重?『母なる証明』

ここまでは幼い娘や息子と母の物語でしたが、韓国の鬼才ポン・ジュノ監督が『母なる証明』(2009年)で描くのは28歳になる息子を守ろうとする母親の姿。“韓国の母”と呼ばれる大女優キム・ヘジャが殺人の疑いをかけられた息子の無実を信じて奔走します。

母なる証明

ウォンビン演じる息子のトジュンは知的障害があり、ずっと母に身の回りの世話をされながら生きてきました。ある日、トジュンは少女をナンパしますが逃げられ、翌日、その少女が死体となって発見されます。

息子が人を殺すはずがないと、ろくな捜査をしない警察を頼らず、自力で真犯人を探す母。しかし、たどり着いた真実は最も残酷なものでした。映画のラスト、鍼灸師である母は嫌な記憶を消すツボを自ら鍼で刺し、すべてを忘れたように踊り狂います

子離れできない母と、母に依存して生きる息子……。ポスターに描かれた、息子を庇うようにこちらをキッと睨みつけた母の姿は、映画を見終わった時、また別の印象に変わるでしょう。無垢で純真に見えたトジュンの瞳にも“怪物”を見つけるかもしれません。

紛争の傷跡を抱えて生きる母と娘『サラエボの花』

最後は、過酷な過去を抱えて生きる母親の物語を紹介します。

20万人が犠牲になり、ヨーロッパ最悪の紛争と言われるボスニア紛争『サラエボの花』(2006年)はその傷跡が残るボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都を舞台に、ナイトクラブで働きながら12歳の娘を育てるシングルマザー、エスマの姿を描きます。

サラエボの花

今作の監督、ヤスミラ・ジュバニッチは10代の青春を紛争の中で過ごしました。それだけに映画の中で描かれる人々の心の傷は生々しく、エスマの娘サラが仲良くなった男の子から「僕のお父さんは喉を切られて死んだ」と聞き、遺品の拳銃を撃ち合って遊ぶ光景には胸が締め付けられます。

戦死していれば英雄扱いされるのに、父のことを隠す母エスマを不審に思うサラ。実はサラは紛争中、エスマが兵士に乱暴されて産まれた子供でした。真実を知った時、サラは「お父さんに似てる」と教えられた髪の毛をバリカンで剃り落としてしまいます。

深く傷ついた2人はもう一緒に生きていけないのか? ラストシーンで、サラは丸刈り頭に水色のバンダナを巻いて修学旅行のバスに乗り込みます。後部座席から母を振り返り、サラの顔に浮かんだもの……それは手を携えて生きてきた母と娘の未来への“希望”でした。

紛争の被害者の一人であるサッカー日本代表の元監督、イヴィチャ・オシム氏は劇場公開に寄せ、「この映画は人類が二度と決してこのような悲劇をいっときも、如何なる場所においても繰り返してはならないというメッセージを発している」と語っています。

なぜかすべて「父不在」の映画になりましたが……

時代は進み、今や映画の中でも母は家を守る存在、夫の帰りを待つ存在だけではなくなりました。時には肉体を駆使して戦うし、屈強な男にも権力にも、ツライ過去にも負けません。今回挙げた5本はすべて洋画、しかも偶然(!?)すべて父が不在の「母と子」でしたが、もちろん日本映画でも父親のいる物語でも、おススメ映画はたくさんあります。

参照:生んでくれてありがとう。母の日までに観たい「母親の愛と強さ」が魅力の映画まとめ

これからもきっと色んな“強い母”が描かれていくことでしょう。『ルーム』は4月8日公開です!

 

※2020年12月30日時点のVOD配信情報です。

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  • バーリー
    3.7
    子役のおかげで映画成り立ってる
  • 猫を愛すルンバ
    3
    デカイ犬散歩のお兄さんと、聞き取りしてくれた警察のおねえさんが有能で助かった🐕‍🦺ジャックの演技がすごい。サスペンスというよりは、社会派だった。
  • おたしん
    4.5
    衝撃的だった。 いつの間にか終わってると感じたほど時間が早く経ってた。 完全に引き込まれてしまいました。 冒頭の生活シーン。 一見どこにでもいる仲の良さそうな親子。 でも息子の髪の長さや風呂とトイレが剥き出しの暗い部屋に違和感を覚える。 この空間で生きているのかと。 勝手に母親が狂気的な愛で監禁しているのかと思ってました。 ジャックに真実を話した時は驚いた。 母親も監禁されているのか。 実際の事件を元にしているのも衝撃。 17歳で監禁され子供もそこで産ませられたなんて。 序盤で楽しそうな親子だと思ったことを忘れるぐらいどんどん窮屈に感じていく。 自由と時間を奪うのは大罪でしかない。 サイコパス男をどうにか出し抜いて脱出しないといけないんだからどんな手も使うよな。 ジャックが可哀想に見えるのと同時にやっと外に出られるんだよという希望。 彼にとって全てが初体験でどれほど不安と恐怖があったのかは想像できない。 それでも視界に入りきらない空を見た時の表情はすごく印象的だった。 キャッチコピーにもある「はじめまして、世界」を体現しているのかようだった。 ちゃんと助けを求められるか心配でずっと手を握り締めてました。 ジョイも脱出することができ無事2人とも自由な生活を取り戻すことができる。 でもここまでの息を飲むような監禁サスペンスがメインではないと思った。 前半部分でも映画1つ見たような気持ちだったけどそこからがまた考えさせられた。 2人の新しい生活。 家族との再会やジャックにとっての多すぎる"初めて"にも感動した。 それなのに何だかスッキリしきれない。 ジョイが「幸せなはずなのに」と言ってたように。 どんな幸せが訪れても喜びは一瞬なのか。 壮絶な経験をした親子をあれほど騒ぎ立てる近隣住民やマスコミも一瞬なのか。 人間の慣れも欲深さも怖い。 ジョイは落ち着いた暮らしに戻ったように見えたけど7年間監禁されていたらすぐに元通りになれなくても無理はない。 それでも大事に愛情を注いでたジャックに怒ったり側にいて欲しくないような言動は悲しかった。 監禁事件が無かったとして本当に大切に育てられていたのかとすら疑ってしまった。 心の傷は周りが思うより深いか。 全てが初めてで状況を飲み込むことに必死なジャックより時間が必要なのはジョイだったかもしれない。 一方でコミュニケーションを取ることが出来てきたり友達も作れたりと難なく成長していくジャック。 お婆ちゃんとの間に家族愛が生まれたときは泣けた。 まだまだ子供なのに大人みたいに頼もしく見えちゃったりする。 そんなジャックにとってあの部屋は何だったんだろう。 恋しがっていたし戻りたいとすら思っていた。 大好きな母親がずっと一緒にいてくれて愛情を感じれる居場所だったのかな。 見ている側からは監禁場所にすぎない部屋も彼にとっては思い出の詰まった空間だったのかな。 これはジャックにしか分からない思いがあるだろう。 それを踏まえたラスト。 一緒に過ごした家具たちに別れを告げるシーンは何故か寂しかった。 改めて狭すぎるところに閉じ込められてたんだなと感じた。 ジョイが"bye room"と呟いたときに彼女が前に進めた気がした。 トラウマを乗り越えたような。 初めて外に出て飛び出す勇気。 魔法の力がある髪を切る決断。 そしてラストシーンは3回目のジャックがジョイを助けた瞬間だと思いました。 監禁されているストーリーってのは知ってたけど思ってるのと違ってビックリ。 『ブリグズリーベア』と似てるけどあれほどポップな感じはしない。 実際の事件がベースだからかな。 愛のある監禁とそうでない監禁の差だろうか。 とにかく忘れられない映画になりました。 もうジェイコブ君の演技がエグい。 他の出演作品もいくつか見てるからすごいとは思ってたけどこの年齢のときから名演技ができちゃってたのね。 不安や恐怖の表情や目つきとか別世界に来たかのような感じ。 特に長い髪を触る仕草が自然すぎて。 こりゃ確かに天才子役って言われるわ。 お見事でした。 てかめちゃくちゃ幼い子供だったのに最近見た『グッドボーイズ』では下ネタ言いまくるほどに成長してたんですけど。 5年であんなに大きくなるもんですか。 これからも期待ですね。 あとジェイコブ君に目が行きがちだけどブリーラーソンの演技もすごかった。 監禁されてるときの怯え具合から解放された後のメンタルがやられてる若い女性。 愛情はあるものの母親としてまだ経験が浅い感じもあってよかった。
  • ギョメ
    4.6
    前半も後半も抜かりなくてすごいし、どんな劣悪なところでも故郷は故郷だから捨てるのに勇気いるのもわかるし、親戚同士がめっちゃ喧嘩してる時子供目線からしたら最悪なのもめっちゃわかる
  • なーる
    5
    これは名作。 家族っていいなって再認識させられる作品だと思う。 監禁生活ももちろん辛いけど、解放された後もつらい。周りからの視線とか、以前普通の生活をしてた時にはいなかった子供がいるっていうこと。 おばあちゃんと再婚相手の全部受け止めてくれる優しさはホントに温かい。男の子が[ばぁば大好き]って言った時が凄く泣けた。ちゃんと家族になっていってるんだなって。 でもホントのじぃじが孫と目を合わせられない気持ちもわかる。受け止められないのも無理ない。 最後はちゃんと男の子がお母さんをリードして普通の生活に戻っていこうとしてて良かった!
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